日本庭園三題
三条京阪から20分ほど歩いて平安神宮に到着、平安京の応天門を5/8サイズで模した応天門。
正面は平安京の大極殿を模した大極殿、左に白虎楼、右に蒼龍楼。明治28年に京都で開催された内国産業博覧会のメインパビリオン的な側面があったようです。
平安神宮神苑
広い境内を囲む社殿のさらに外側を囲む日本庭園が神苑、その南神苑の池、去年来た時よりずっと人が多いです。赤紫の釣り鐘はホタルブクロ。
ハンゲショウのせせらぎは透明で魚がよく見えます。右はタナゴ、左はカワムツあるいはヌマムツかと。
西神苑白虎池のハナショウブはちょっとピークを過ぎた感じ、たくさんの人出の目的はこれです。
白と紫。品種名は分かりません。
ピンクと濃い紫。もっといっぱい咲いている菖蒲園を見た記憶があり過去ログをチェックすると8年も前の枚方の山田池。株数や品種では山田池が勝るものの池の風情はこちらの勝ち。
水鏡のスイレン。
オオシオカラトンボがいました。オニヤンマに似た大きめのトンボは初見のコオニヤンマ、オニヤンマのようにぶら下がって止まりません。
セスジイトトンボ(たぶん)です。水面のアメンボと水底の影。澄んだ水底にはタニシとか二枚貝もたくさん見えかなり豊かな生態系のようです。
本殿裏の林を抜け、中神苑の蒼龍池。コシアキトンボがせわしなく飛び回っています。
15cmくらいの魚がたくさん。背びれの根もとにベージュ色の班があるのはカワムツかヌマムツと同定できるそうです。背びれの縁が赤くないのでヌマムツで間違いなさそうです。
水鏡のノムラモミジと色っぽい枝ぶりの松、お茶屋さんの赤い番傘が画竜点睛。
浮葉で休むクロイトトンボ。お尻の先端、産卵管の配色がセスジイトトンボとは異なります。小さな葉っぱにはごく小さな貝のようなものが見えます。この葉っぱ自体が小さな宇宙なのかも知れません。
東神苑の栖鳳池と泰平閣、借景は東山三十六峰のひとつ華頂山210m、バスで頂上近くまで行けるようです。
今日はまだ鳥に会えていないので、泰平閣の火の鳥を撮っておきます。
すると、木の間の日差しの中にヤマガラ。枝に移動して羽繕い。ヤマガラに会えるといつもハッピーなキブンになります。
蹴上から水路閣
岡崎公園を抜け、来る前に調べておいたおばんざい屋さんへ向かうと長蛇の列で諦め、三条通りに見つけたお好み焼き屋さんでランチ。かつて京津線80系がツリカケ音を響かせ急勾配を上っていた場所です。
圧巻のレンガ造りの建物は蹴上発電所の第2期発電所、明治45年竣工。左側の第3期発電所は現役。明治24年運転開始、日本初の一般供給用水力発電所の第1期発電所は第3期発電所の場所にあったそうです。
ねじりまんぼです。この上をインクラインが通っていて、インクラインを行く台車や舟の重量に耐えるためにねじりを加えて強度を高めているそうです。
中をくぐると見事にレンガが螺旋形の渦を巻いていて吸い込まれそうです。明治の土木技術の高さを実感。
存在は知っていたものの初めて見たインクライン、川の高低差のある箇所で舟を上下させるためのしくみのひとつです。川を区切って水位を変化させることで舟を上下させる閘門に対して、インクラインでは勾配に線路を引いて動力で台車にのせた舟を引き上げます。川だけじゃなくて山奥の森林鉄道などにも敷設事例があるようです。
レールを見てナローゲージなのかと思いきや、上ったところに台車と舟が置かれていて、広軌の複線になっていると漸く気づきました。台車の向こうの流れが琵琶湖に続いています。左手に見える大きな滑車を発電した電気で動かしていたそうです。
インクラインの上で琵琶湖疏水の流れはクランクしてダムになっています。ダムから溢れた水は画面左にある発電所の取水口に流れています。
取水口の上辺りにえらくイケメンの銅像、琵琶湖疏水を設計し完成させた田辺朔郎です。手に設計図を持っていて、琵琶湖疏水を設計した20代の頃の像と思われます。「明日をつくった男」という虫プロ製作のアニメと実写を融合させた映画で紹介されているそうですが、ネット配信は見つかりませんでした。
銅像の裏から歩道が伸びていてダムの裏側に回り込めました。ダムにはカワウ。
発電所の取水口とは別にダムから北側へ激しく流れています。
北側への流れに沿って遊歩道、流れは琵琶湖疏水分線と呼ばれています。分線が流れ落ちる脇に南禅寺の鐘楼。
人気映えスポットの水路閣に出てきました。南禅寺側からじゃなくて、蹴上からやってきたのでこの水路閣の存在理由がよく分かります。今も現役の水路閣から先、疎水分線の流れは哲学の小道になって京都の町の東と北をぐるっと囲むように流れ高野川を越え、下鴨本通北大路辺りまで伸びています。
南禅院
水路閣の南側に南禅院という塔頭があります。入るつもりはなかったものの、モリアオガエルの卵塊がご覧いただけます、という貼り紙が見過ごせませんでした。
鎌倉時代末期、亀山法皇自身の作庭といわれる京都最古の庭園で、天龍寺、西芳寺と並ぶ京都名勝史跡庭園に指定されています。
平安神宮神苑や天龍寺よりもかなり小ぶりの回遊式庭園ですが、池の裏側からの眺めは確かに絶景。
池にせり出した青もみじ、その幹にモリアオガエルの卵塊がくっついてました。卵塊は何度か見たことがあるもののモリアオガエルにはまだ会ったことがありません。
池の裏で出会ったキビタキ。池の底ではイモリがノッシノッシ。
空中交尾中のクロイトトンボ、苔の美しい庭園です。
さて帰ろうと庭園の狭い木戸をくぐろうとしたら、向こうから団体さん。10人、20人、30人…、途切れません。インバウンドさんじゃなくて30代、40代くらいの男女。こっちはひとり、僅か2、3秒なのに誰一人譲ってはくれません。譲ってくれないことへの苛立ちもあるものの、いい年してあまりに気の利かない人たちばかりなことにビックリ。
学生時代パリの旅で学んだことに、地下鉄やお店で入口のドアを開けた時、後から人がやってくる場合は、誰もがドアを開けて待ってくれることがすごく印象的で、日本へ帰ってからも実践することを心がけるようになりました。こういうのって社会のルールじゃなくて、社会の構成員個々の価値観が集積したものだと思います。割り込みが平気なお隣の国からのインバウンドさんたちが学んで真似してくれるような日本の社会には、まだなりきれていないと実感した一瞬でした。
かくいう自分もエレベーターで締まりそうなドアを開けてあげたりとか確実にできているかと振り返ると甚だ自信はありません。
天授庵
三門からの南禅寺です。ずっと昔、湯豆腐を食べに来た記憶があるものの、南禅寺自体の記憶はありません。
南禅寺の庭園としては小堀遠州作の方丈庭園が有名ですが、枯山水の庭園は自分的に興味の対象外です。もう1箇所の日本庭園、三門脇の塔頭、天授庵を見学します。
小さめの枯山水の庭を抜けると池泉回遊式庭園。
スイレンの下に錦鯉がたくさん泳いでいるのですが、15cmくらいの魚もいっぱい。ヌマムツです。
岩の上で休んでいる亀はミシシッピーアカミミガメじゃなくて在来種のクサガメなのはさすがです。ここでもクロイトトンボが交尾中。
中門から外に出る手前、人通りの多い場所でキビタキ。6月になると大阪城でキビタキに会えることはまずないのですが、東山三十六峰が繁殖地なんでしょうね。
まだ午後3時過ぎ、ランチには遅く呑むには早く、適当な開いているお店が見つからず、重くなった足を引きずりながら30分歩いて結局三条京阪まで戻ってきました。自分にとっては入りやすい、がんこ京都三条本店、メニューは大阪のお店とはかなり違っていて、お品書きまで添えて多少なりとも高級感を演出しているものの、お店の人の気取らないノリの良さは大阪と同じです。