飛鳥の八角墳(後編)

承前、次の目的地は中尾山古墳。野口王墓古墳(天武・持統天皇陵古墳)から山沿いの来た道じゃなくて、谷を流れる平田川という高取川の支流沿いを飛鳥駅方向に戻ります。

ふたたびホオジロ登場。平田川にアジサイ。

川を渡って国営飛鳥歴史公園高松塚周辺地区に入ります。アセビみたいな花にヒメウラナミジャノメ、今の時期にアセビが咲いているはずがなく、シャシャンボという常緑広葉樹と分かりました。椿のようなツヤツヤの葉っぱが特徴で、長崎県佐世保の名はこの木に由来するそうな。

飛鳥歴史公園館

飛鳥歴史公園館なる未チェックの施設前に国蝶オオムラサキ飼育中と掲げられています。ネットを透かしてみるといました。

少なくとも10頭はいそうです。

飛鳥歴史公園館に入ると大きなジオラマ。現在地左手の縦方向に伸びる丘が野口王墓から梅山古墳のある丘。その下(西)に何もない谷が真っすぐ伸びています。この谷に与楽乾城(ようらくかんじょ)古墳など東漢氏(やまとのあやうじ)の与楽古墳群があります。その先(さらに西)は御所、葛城。大王家(天皇家)だけでなく各地の豪族の古墳や遺跡巡りも興味が尽きません。

飛鳥人総選挙結果発表が張り出されていました。「あなたの推しの飛鳥人に投票してください」という昨年のイベントで、1位は持統天皇で2位の聖徳太子とは僅差も10位の天武天皇の3倍以上。蘇我入鹿が6位で物部守屋が12位と歴史上の悪役も上位にランクイン。斉明天皇は21位なのがちょっと残念。

館内の中庭に何やら石造物。係の人に訊ねたところ出土品とかじゃないようですが、上部の溝に見覚えがあります。おそらく酒船石のレプリカ。

猿石のレプリカも。微妙に違っていますが、吉備姫王墓に4体ならぶ猿石右端の「男性」です。

歴史公園館を出て県道をくぐるトンネルを歩いていると向こうからやってきたイタチと目が合いました。何か大きなものを咥えています。腹部の模様や指の本数から、餌食になったのは四六のガマことニホンヒキガエルで間違いなさそうです。シッポが短め、ニホンイタチです。

中尾山古墳

トンネルを抜けてまっすぐ行くと高松塚古墳ですが、左手の小山に上り、尾根道を歩きます。

なにやら白いキノコ、間違うとまずいのでキノコの同定は止めておきます。

稜線上にぽっこりと小山が見えてきました。中尾山古墳です。

足元のホームベース型の石は八角墳の角を示すもの。明日香古代史チャンネルさんの来村多加史先生のガイドで予習してきました。

このホームベースは墳丘の周りのテラス状のスペースの角を示していて、尖った角度は正八角形の内角135°です、

柵の内側にもあるホームベースは墳丘の正八角形の角を示しています。

あっ、オサムシ。

オオオサムシで間違いなさそうです。クロナガオサムシしか見たことがないので初見です。

墳丘をゆっくり一周してみました。墳丘を囲む柵も八角形です。ここから南へ400mほどのところに文武天皇陵に治定された栗原塚古墳があるものの、この中尾山古墳が第42代文武天皇(持統天皇の孫)の真陵と思われます。

説明板には野口王墓古墳同様に貼り紙で上書きされています。

河瀨直美さんのナレーションはQRコードを読み取ってください。

中尾山古墳から南の方へ尾根道を歩きます。南側からのアプローチが中尾山古墳への正規ルートのようです。イモムシがいっぱい孔を開けた葉っぱにツバメシジミ。

開翅しているのはヒメウラナミジャノメ、閉じている法はウラナミジャノメです(たぶん)。

高松塚古墳

もうすぐそこなので10年ぶりに高松塚古墳を訪ねます。中尾山古墳の尾根を下りた谷の喫煙所でいっぷく。ここでもしきりにホトトギスの声が響いてきます。トッキョキョカキョク。

高松塚古墳が見えてきました。プリンというより銀閣寺の向月台を彷彿とさせますが、ちょっと西洋庭園風で整備されすぎな感じもします。墳丘を囲む生け垣はクチナシ。

藤原京時代に築造された下段直径23m高さ5mの二段築成円墳、壁画が発見されたのは1972年。被葬者は忍壁皇子、高市皇子(いずれも天武天皇皇子)説が有力。

10年前にも訪ねがっかりした高松塚古墳壁画館が写真撮影OKになってると分かり再度入ってみました。入館料300円。

石室西壁の女子群像の復元です。

現状模写、一部復元模写、再現模造模写と工程の異なる模写が重複して展示されています。そのうち、見やすくするため一部泥の跡を取り除いたという一部復元模写の全体です。

カビの大量発生等すったもんだがあったものの2020年3月に壁画の修復作業は完了しています。実物は年数回、事前申し込み制で公開されているようです。場所はさっき訪ねた歴史公園館の裏に設けられた仮説修理施設で、撮影禁止のようなので自分が申し込むことはないと思います。

壁画の模写の他、奥の小部屋でパウチしたA4を並べて四神の説明。後で気がついたのですが、展示スペース中央に海獣葡萄鏡の複製が展示されていたようです。博物館として捉えるとかなり寂しく、無料の歴史公園館の方が充実しています。

同じく壁画で知られるキトラ古墳まで歩いて30分ほどですが、このあと暑くなるのは確実なので機会を改めます。

牽牛子塚古墳

高松塚古墳から飛鳥駅への途中に展望台、1kmほど先の山裾に牽牛子塚古墳。

「飛鳥人総選挙」に投票するならやはり斉明天皇イチオシです。

飛鳥駅に戻ってきました。30℃を少し上回るくらいですがかなり暑い、朝早く出てきたのは大正解。まだ12時半ですが帰ります。

さくらライナーが到着、下りてきたのはひとりだけ。

パタパタが現役です。壺阪山行は平日深夜に1本あり、その晩のウチに橿原神宮前へ折り返してくるようです。

橿原神宮前に到着。

そっくりさんの特急が並んでいますが、3番線は12400系平屋建てのサニーカーでたぶん近鉄最古参の現役特急車輌、2番線は二階建ての30000系ビスタカー、0番線は五位堂で検査の南大阪線狭軌車輌です。

八木西口駅で途中下車。この前見つけたラ・ポッシェでプファー、生き返ります。

グランドメニューのミックスグリルか迷ったのですが、ランチメニューからトンカツ&オムレツ和定食にしました。コーヒーが付いて880円。

コーヒーと食後のいっぷくも美味い。スタッフさんたちの接客も心地いい。格別ではないものの、ちょっと前までの当たり前が満喫できるお店、ますます気に入りました。

八木西口駅から大和八木駅まで400mほど、突き当りが大和八木駅。