雨の土曜日

東洋陶磁美術館で油滴天目茶碗に見惚れてしまい、同じく国宝で油滴天目より有名な曜変天目が藤田美術館で見ることができると分かりました。雨予報の土曜日に訪ねるにはちょうどいい。

天満橋から寝屋川を渡り、京阪の線路をくぐりシロツメクサに囲まれた大川端を歩きます。大川端とは一般に吾妻橋付近の隅田川右岸を指すようですが、ここも桜之宮公園というよりも大川端と呼んでいいと思います。

自転車に乗らなくなったのでずいぶん久々のひょうたん池、ひょう太に会えるかもとの期待はハズレ。

藤田美術館

ひょうたん池裏の藤田邸跡庭園を抜けるとJR大阪城北詰駅入口隣に藤田美術館。傘を100円デポジット式の傘立てに入れるのに手間取ったことで美術館の外観を撮るのをすっかり失念してしまいました。5年前にまだ建設中の藤田美術館の写真を撮ってます。東洋美術に興味を持つなどとは想像もしなかったので訪ねるのは初めてです。

チケットボックスとかなく案内係の女性の持つ端末で入館料1,000円をPayPay決済し暗い部屋に入るとプロジェクターで美術館の紹介。

平家琵琶 銘吉野(江戸時代)と唐物大海茶入 銘敷津(中国、宋〜元時代)。敷津の銘は小堀遠州によるものとのこと。相当風光明媚だったらしい敷津の名は今も住之江区敷津浜小学校の校名に残っています。

小貫入茶碗 銘雄蔵山(朝鮮時代)、雄蔵山とは京都の小倉山(おぐらやま)をもじったもので、松花堂昭乗による銘らしい。小貫入とは細かいひびのこと。

和歌浦蒔絵硯箱・文台(江戸時代)、「若の浦に塩満ち来れば潟をなみ芦辺をさして鶴(たづ)鳴き渡る」が描かれています。江戸時代の和歌浦に鶴が渡来していたとすればタンチョウじゃなくてナベヅルやマナヅルだとあり得ると思います。

吉野、敷津、小倉山、和歌浦と関西の景勝地を括りにした展示です。

お次は「鳥」がテーマ、ずらり並べられた書の鳥、右下の濃淡が好きかも。

祥瑞砂金袋共蓋水指(中国・明時代、景徳鎮窯)、描かれている鳥は八哥鳥とのことですが、ハッカチョウならではの横柄さがありません。

松鷹図(江戸時代、絵:伝曽我直庵、賛:伝沢庵宗彭)、曽我直庵は長谷川等伯らと並ぶ桃山時代を代表する絵師も史料が少なく謎の絵師とされるらしい。沢庵宗彭はまだ読みかけの吉川英治「宮本武蔵」でキーパーソンのひとり。

実物大の自在孔雀置物(江戸~明治時代)、自在ということは羽が開くようになっているようですが、ググってみると錆びついて動かないようです。平和な世の中になって甲冑師が武具の代わりに制作したものらしい。

紅毛白雁香合(オランダ、17世紀)、オランダ・デルフト窯製の香を入れる合子(ごうし、蓋付の小さな器)。

黒楽茶碗 銘千鳥(江戸時代)、樂道入(通称ノンコウ)作、楽茶碗は京都楽家で作られた茶の湯で用いるための茶碗、ノンコウは楽家の三代目。金色(黄色)の三角を千鳥の足跡に見たことから千鳥と銘が付けられているらしい(参考)。

利休斗々屋手茶碗と本手利休斗々屋手茶碗(いずれも朝鮮時代、16世紀)本手ありは「利休が好んだとされる斗々屋茶碗の典型的な作行き(釉薬のかかり方、轆轤目、形、焼成など)を備えている」、本手なしは「形式的にはその流れのものに見えるが、本来の手(つくり)とは異なる」とChat GPTで調べました

本手利休斗々屋手茶碗は千利休から、古田織部、小堀遠州と受け継がれた名物。特徴がないのがこの茶碗の特徴だそうです(参考動画)。千利休を描いた本はいっぱい読んでいますが、その名物を実際に見たのは初めてのはず。

極めつけの名物を目にしつつ、日本一の目利きといわれる金兵衛さんが手にして「はてな?」とつぶやいた何の変哲もない茶碗に千両の値がついてしまうという落語のはてなの茶碗を連想してしまい、「審美眼」とは何だろうと考え込んでしまいました。

交趾大亀香合2点(いずれも中国・明時代)、交趾はベトナム北部を指すものの実際には福建省漳州で民窯で焼かれた緑・黄・紫色の三彩の焼き物。右側の香合は重要文化財。

展示点数は思っていたよりずっと少なく、もう出口と気付き、天目茶碗はどこですかと係の人に訊ねると8月から展示だそうでガッカリ。展示室を出ると当館コレクションを収集した藤田伝三郎の紹介パネルと、コレクションを保管していた古い蔵から移設したと思われる窓。

外へ出ると藤田邸跡庭園につながってました。

モンシロチョウが止まってくれたのはヘラオオバコ、どこにでもある帰化植物の雑草だそうですが、穂先から長い雄しべが放射状に伸びている姿がとてもいい。率直なところ本手利休斗々屋手茶碗より惹かれました。

展示点数は少なくコスパのよくない美術館とは感じたものの、美術館をコスパで評価するのはどう考えても間違っています。一点一点をもっとじっくり鑑賞すべきだったかと。今日も審美眼とは何だろうと考え込む機会を得たことは大きい。8月にまた来ます。

城北公園菖蒲園

城北公園へ花菖蒲を見に行くことにします。花菖蒲には雨模様のほうが似合うはず。ローソンで水を買って片町バス停で守口車庫行のバスを待ちます。バス停前のとんかつやさんのメニューに見入っているとバスがやってきて、慌ててのりこみ最後部席に腰を下ろしたら、ローソンに傘を忘れたことに気づきました。

次の東野田バス停で下りて600m歩いてローソンに戻り、もう今日はいいかと思ってものの、天目茶碗を見れなかったこともあって、やはり次のバスに乗ることにしました。

こちらもずいぶん久しぶりの城北公園、ここでもカワセミに会ったことがあるもののもう10年も前です。

京阪電車のウェブページで「咲き始め」との情報を見てやってきたのですが、十分にいっぱい咲いてます。

アップで撮ったのは「蛇の目傘」という名、花びらにのった雨滴がいい感じです。

傘を差しながらカメラを濡らさないように構えるのはなかなか大変。

カエルがいないか楽しみしていたのですが、声も聞こえません。

菖蒲園のチケットブースに「花の数がそろっておりません、あらかじめご了承の上ご入園ください。」と立て看、十分に綺麗でした。ちなみにここも大阪市民65歳以上は無料。

カシワバアジサイが咲いてます。千林商店街まで歩きはじめたものの、雨が激しくなってきたので諦め、バスで天神橋筋商店街へ、遅いランチにします。