東洋陶磁美術館
ギャラリーガイドが始まるとの館内アナウンス、10分前くらいなので参加させてもらうことにします。3階への階段のあるロビーで腰を下ろし、青花虎鵲文壺に当館キャラクターのmocoちゃんとカササギが飛び移るアニメを眺めながらひと休み。アニメはYouTubeに動画公開されてました。毎度このメロディを繰り返し聞きながらボーっとするのが楽しみです。
時間になって集合場所に向うと、ガイドさん3人に対し参加者は5人ほど。3組に分かれ、自分は何とマンツーマンでガイドしていただくことに。
広州官窯の金沙里窯の作とされる「秋草手」屈指の名品・青花草花文面取瓶。ひと目見て大阪民藝館でバーナード・リーチが描いた李朝秋草文瓶図を連想しました。こちらはハ角、バーナード・リーチの絵は六角です。いずれもため息がでるほど美しい。
「満月壺(タルハンアリ)」と呼ばれる高さ45cmの朝鮮白磁大壺、文豪・志賀直哉から東大寺館長・上司海雲に贈られ、塔頭の観音院に飾られていたものが、1995年侵入した泥棒が地面に叩きつけ粉々に。その破片が当館に寄贈され高い技術で修復されたもの。
パネルに粉々になった白磁破片の写真、本当にこれを修復したのか、壺をじっくりながめても全く分からないのですが、東洋古美術品を専門とする国内最高峰の復元工房・繭山晴観堂(品川区)の繭山浩司氏、繭山悠氏親子により、超難関の接合(パズル作業)、隙間・段差の精密な充填、肉眼では見えない補色と加飾、という工程で修復されたそうです。
志賀直哉と床の間に置かれた粉々になる前の満月壺の写真、白磁大壺にひと枝のモミジ。紅葉なのか青モミジなのか、想像を膨らませてみました。
李秉昌コレクション
李秉昌コレクションの展示室へ。個人による韓国陶磁コレクションとしては、質・量ともに世界最高峰と称され、日韓の友好親善と在日韓国人の地位向上を願い、1995年に当館に寄贈されています。美にこだわった安宅コレクションに対し、李秉昌コレクションでは韓国陶磁の歴史と、名もなき職人から宮廷に至るまでの技術の変遷を体系的に残すことにフォーカスされています。
象嵌技法の頂点を示す鶴と霊芝雲文が描かれた高麗時代の青磁象嵌雲鶴文碗。そして同じく高麗時代の青磁鉄地象嵌詩銘瓶。詩文は「酒は温めれば毒が消え、茶は冷めれば香りを失う。この酒を飲まずにいられようか、佳人と才子のつかの間の逢瀬に」というのんべの詩。
松惠コレクション
マンツーマンの約1時間のガイドツアーが終了しガイドさんとお別れ、自分は松惠コレクションへ。中国や韓国の陶磁史(美術史)の文脈で集められた安宅・李秉昌コレクションに対し、松惠コレクションは「茶の湯の道具」という明確なテーマで構成されています。韓国・中国陶磁が、日本では「茶人が見立てた茶道具」としてどう愛されてきたか、また日本の陶磁がどのように独自の発展を遂げてきたかと見ることができます。前回のブログでは利休の美としてまとめています。
ノンコウ作、黒樂茶碗銘花筏がやはり美しい。ボランティアガイドさんが自分を探していたらしく、駆け寄ってこられました。今日の説明に一部間違いがあったのを訂正にきてくれましたのですが、せっかくの訂正内容を覚えていないのが大変申し訳ない。
明代景徳鎮窯南京赤絵の山水図火入と唐子遊図火入。内側下半分に釉薬が施されていないので食器ではなく炭や灰を入れるための火入。これも「明るく華やかな茶風」の流れのようです。
極めつけのわびさびの茶の湯の世界だった北村美術館にはさすがに永楽保全作品のコレクションは無いはずと思いきや、日の出鶴文茶碗とか永楽保全作品が所蔵されており、ストイックなわびさびの中に、永楽保全の洗練された金彩や鮮やかな呉州赤絵の写しをあえてひとつ入ることで、緊張が和らぎ一服の清涼剤となることを狙うものとして使われるらしい。利休のより完成した「わびさび」は江戸時代を通じてアップデートされ、小堀遠州は「きれいさび」を提唱、幕末にはより洗練された美が好まれるようになり、永楽保全はその最高峰とされるそうです。
主役の渋い魅力を120%引き出すためには、脇役として都会的でスマートな、洗練された美が必要ということですが、ちょっとでもやりすぎると全てが台無しになりかねず、「きれいさび」には絶妙な匙加減が求められそうです。