ヴィトンと大丸

選挙のあと、行ってみたい場所が2箇所。ひとつは母校を訪ねた時にヴォーリズ建築と知った大丸心斎橋店、もうひとつはルイ・ヴィトン・メゾン大阪御堂筋。

草間彌生

時系列では大丸が先なのですが、まずは御堂筋のルイ・ヴィトン・メゾン内のエスパス ルイ・ヴィトン大阪で始まった草間彌生の展覧会「INFINITY - SELECTED WORKS FROM THE COLLECTION」。数日前バス停の広告で見つけ、無料と知りやってきた次第です。ルイ・ヴィトン店頭の黒服の女性に訊ねるとショップの入口とは別の入口へ案内してくれました。エレベータで5階に上がると、黒服の美人女性やイケメン男性のスタッフさんたちがスタンバイしていて、バッグを買いに来たお客同様に丁寧な対応を受け恐縮。

ブローニュの森の一画にあるルイ・ヴィトン財団の運営する現代アートの美術館、FONDATION LOUIS VUITTONの草間彌生作品展示会です。動画以外は撮影OKとのこと。「無限の網」と第された題された2m四方くらいの作品は、これだとただに板にしか見えず、もっと引いて撮るべきだったと気づいたのは帰ってから。

「DOTS」と「無題(足)」、「無限の網」より分かるような気がします。

「毎日愛について祈っている」シリーズ。下手な字で「ルイビトン」とあるのは親近感を感じます。

今年の万博でも太陽の塔のようなシンボルができるものとずっと思っていて、それを作れるのは草間彌生さんの他にいないと思い込んでいたのですが、実現しませんでした。

展示会場奥に白い壁で囲まれた部屋が今回の目玉作品「Infinity Mirror Room - Phalli’s Field」。靴を脱いで靴下の上に履いてくださいとシューカバーを渡され履き替えました。前の人たちが部屋から出て自分の番、次の人も一緒かと思ったら自分が部屋に入ったところでドアが閉じられ、中には360°自分がいっぱいでビックリ! 

タイトルを訳すと「無限の鏡の間 - 男根の原野」1965年の草間さんの代表作のひとつです。QRコードの説明によると、セックスに対する恐怖症を払拭する手段として、恐怖の対象となるフォルムを何千何万と作り続けることで恐怖を克服するための作品らしい。自分にとっては減量が全然足りていないことを思い知らされた作品です。

ブティックの店内に「大いなる巨大な南瓜」が展示されているのが見え、頼めば近くで見せてもらえたかもしれませんが、遠慮しておきました。

さくらんぼは20年前からの村上隆コラボレーションで、モノグラム地にチェリーや、さくらの花のチェリーブロッサムなどバリエーションもあるらしい。村上隆といえば、京セラ美術館に屋外展示されていた「お花の親子」を永観堂の多宝塔から見たのを思い出しました。

ちなみにちょっとルイ・ヴィトン製品の価格をググってみると自分のイメージの倍以上でビックリ、長期の円安と日本の経済停滞を痛感させられたものの、ルイ・ヴィトンの文化活動は大したものと知ることができました。中之島美術館でルイ・ヴィトン・ビジョナリー・ジャーニーが開催中、京セラ美術館でも草間彌生 版画の世界開催中です。

ウィリアム・メレル・ヴォーリズ

ルイ・ヴィトン・メゾンの前に大丸を訪ねたものの、肝心の孔雀のレリーフを見逃していたので、翌日に再訪。

心斎橋筋側エントランス上部に孔雀のレリーフ。1922年ヴォーリズ設計による新店舗完成、1925年にニューヨークで製作されたこの孔雀のレリーフが掲げられ大丸のシンボルになってます。当初フェニックス(鳳凰)で発注されたものが孔雀になって納品されたとのエピソードがあるそうです。淡い光で細部が浮かび上がるライトアップも素晴らしい。

1階のエレベーターホール。仏像の光背のような形に網目の幾何学模様、間に挟まった六芒星形のステンドグラス時計、左手には寄木細工、エレベーターのドアやドア周りの装飾も飽きることのない美しさ。

自分の子供の頃の大丸の記憶では、ドアは蛇腹式、階数表示は時計の針のようなものだったような気がしたのですが、昭和8年の写真をチェックするとそうじゃなかったようです。エレベーターガールさんが白い手袋をはめた左手をピンと上げて、上にまいります。右手でハンドルを回してドアを閉じて、ご来店ありがとうございます…6階おもちゃ売場でございます。エレベーターホール前の大理石柱に映り込んだ幾何学模様も美しい。

エントランスホールの鴨居のステンドグラスはイソップ物語が描かれているらしい。白い天井にも細密なレリーフ。

エントランスホールに「80年間愛されてきたヴォーリズ建築が再び」という説明板。大丸本館が1918年に竣工したも1920年に焼失、1922・1925年の工事で心斎橋筋側が完成、1932・1932年の工事で御堂筋側を増築しネオ・ゴシック様式の旧本館が完成したとのこと。

コスメ売場の天井の美しさ、細密さは息をのむばかり。白い天井もレリーフがビッシリ。

御堂筋側のファサード。文様がびっしりも全然くどくなく、いつまでも見ていたい。増築された上層階との違和感も全然感じさせず、ヴォーリズの大正時代の設計と現代の設計が見事に融和しています。よく見るとエントランス上部の両側に孔雀のレリーフが。

丸に大の看板は本館じゃなくて隣接する南館の上に立っていると気づきました。南館に鉄道模型売場があって何度か通ったことを思い出しました。

御堂筋側エントランス脇に鳳凰、名和晃平氏の作品で木彫に漆塗りを下地にプラチナ箔。後で気がついたのですが反対側には金箔の鳳凰、どちらが鳳(♂)で凰(♀)かは調べた限り不明。上述の当初フェニックスで発注されたものが孔雀になって納品されたとのエピソードを触発され制作されたとのこと。

映り込みがキツいですがまさに全身火の鳥。こんど夜に見に来よう。

SALON de thé VORIES

本館5Fにサロン・ド・テ・ヴォーリズというカフェがあると分かりエスカレーターを上がるとパルコとつながる通路の脇にありました。

壁にヴォーリズ建築の写真額がずらり、関学時計台の下のテーブルをゲット。

上層階ができる前の大丸心斎橋店本館と神戸女学院理学館。

余裕あるテーブル配置の広い空間の天井に1階エレベーターホールに似た証明。

関学時計台の写真がもう1枚。この店のオーナーはKGボーイかもしれないと調べてみると、お店は英國屋の運営、創業者の松本孝氏が経済学部卒と判明、予想が当たりました。

ビーフカレーにしました。カレーソースがこのポットででてくるとテンションが上がるのですが、このポットはグレイビーボートと呼ばれ、英国からもたらされたものと分かりました。お肉ゴロゴロでとても美味しい。

パルコ

フロアガイドに喫煙所を見つけました。本館には加熱式たばこ専用しかなく、パルコの13階です。何度もエスカレーターを乗り換え漸く食後のいっぷく、外にでると何やら屏風が。「鉄地漆螺鈿装飾扉」とあり旧そごう大阪店1階エレベーターの昭和10年製の扉だったそうです。

隣接する営業不振のそごう心斎橋本店建物を大丸が買収したのは2009年心斎橋店北館となり、2015年に本館が建て替えのため閉館、2019年に本館リニューアルオープン時に北館はパルコになったという経緯。セゾングループだったパルコが大丸松坂屋百貨店のJフロント傘下になったのは2012年。なんとも目まぐるしい流通再編劇の中で、ライバル店だった開業当時のそごう大阪店エレベーター扉が保存され、ひっそりと公開展示されているのは、大丸創業の下村彦右衛門の理念が受け継がれているものと感じられます。

パルコに掲げられていた味園大宇宙展の懸垂幕、よく見ると知っている人のプロデュースとわかったものの残念ながらイベントは既に終了。

パルコのB2Fは心斎橋ネオン食堂街になっていて、谷六の「そのだ」も。テーブルの空いていたお店で生ビールを頼むとジュースサイズの紙コップでがっかり。この店はもう来ないと思うけど、「そのだ」や他にも色々お店があるのでいずれ再チャレンジ。