泉屋博古館青銅器館
承前、4月26日にリニューアルオープンしたばかりの泉屋博古館(せんおくはくこかん)青銅器館にいます。
鴟鴞尊(しきょうそん、紀元前13-12世紀)と戈卣(かゆう、紀元前12世紀)、架空の動物の饕餮と並んで、実在のフクロウも大人気。殷周青銅器器種一覧で尊は酒を盛る器、卣は酒/香草の煮汁を盛る器と確認できます。
小さな窓があるだけでぐんと明るい4つ目のフロア、まずはオリンピックの表彰台のように並ぶ3枚の銅鏡。
銀メダルの位置は仁寿狻猊鏡(じんじゅさんげいきょう、唐代7世紀)。白銀色は錫の含有量が多いことでもたらされると来村先生の動画で学びました。紐(中央の突起)のまわりに配置された8匹の狻猊(さんげい)は獅子のことらしい。
銅メダルの位置は画文帯環状乳神獣鏡(後漢後期〜三国時代)、おなじみの画文帯神獣鏡のひとつ。8体の神獣それぞれに孔があり環状に並べられているのが確認できます。
その鏡面にはスマホを構える自分の手。来村先生の動画で自分の姿を映すため以前に火を起こすための陽燧(ようすい)として用いられていたのが銅鏡の始まりと学びました。ギリシャで行われるオリンピックの採火式と同じです。
方格規矩四神神獣鏡(前漢末BC1-AD1世紀)、中央の方格(四角形)のまわりに規矩(TLV字状の幾何学模様)が配され、上に玄武、右に青龍、下に朱雀、左に白虎の線画、その外に隷書体の漢字が円を描いてます。紐の部分が僅かに欠けているものの艶々していて美しい。
椿井大塚山古墳からも出土している内行花文鏡(後漢前期-AD1世紀)。神獣など具象的な図柄は描かれず抽象的な文様だけでまとめられたており、古代のデザイナーのセンスを感じさせます。
縁の厚いナポリ式ピザ風の三角縁四神神獣鏡(三国時代、3世紀, Φ22.2cm、1240g)と薄く繊細なミラノ式ピザ風の画文帯同向式神獣鏡(後漢末、3世紀、Φ16.1cm、650g)。
久津川車塚古墳出土の7面のうちこの2面が中国鏡でそれ以外は仿製鏡と説明されていてビックリ。三角縁神獣鏡は中国での出土例は殆どなく基本的に仿製(国産)鏡と理解していたので自分の頭の中を大いに混乱させてくれます。
黒塚古墳でテキトーな感じで積まれていた33面の三角縁神獣鏡に対し、1面の画文帯神獣鏡が被葬者の頭付近に大切に置かれていたのは、仿製鏡より渡来鏡の方が当時の世間でも重宝されていたにせよ、値打ちにかかわらず被葬者の画文帯神獣鏡への特別な思い入れがあったためと理解した方が適切かも。
ちなみに鏡じゃなくてピザでは圧倒的にミラノ式が自分の好みです。
青銅器館を出ると「饕餮の間」という休憩室。大きなガラス窓に饕餮が描かれています。饕餮(とうてつ)は空想上の怪獣ですが、翻訳をチェックすると饕も餮も「貪欲な」となってしまいます。もう少し突っ込んでみると、「饕」は財貨をむさぼること、「餮」は飲食をむさぼることだそうです。字を拡大して字の違いを確認してみてください。
給茶機が置かれていて、ゆったりしたソファに腰掛けジャスミンティーをいただきながら外の緑で目の疲れを癒します。見てきた展示品に「複製」や「復元」の表示はなく全てホンモノ、それにツギハギの跡とかも見当たらず、極めて状態のいい青銅器の数々、古代のエネルギーがストレートに感じられるホンモノを堪能させてもらいました。
中庭の全景です。画面左上の山に木の生えていないところは大文字山の火床。中庭の向こうは企画展示「リニューアル記念名品展Ⅰ帰ってきた泉屋博古館 いにしえの至宝たち」開催中、写真NGなのでさっと見ただけで何を見たかあまり覚えていません。メジロやヤマガラがいっぱい止まっているカイドウの木が描かれた伊藤若冲「海棠目白図」が展示されていたと帰ってから気づいて悔しい思いをしたくらい、青銅器に集中してしまったようです。
フロアマップで円形の⑤青銅器館と、銅鏡メインのフロアの④眺めの良い部屋の位置関係を確認できました。若冲は見逃したものの学ぶことが多くそれにとても居心地が良く大満足の美術館、今までに訪ねた博物館美術館でも頭抜けてハイレベル、こんどはあまりガツガツせずにゆったりした心持ちで再訪していみたいと思います。
3匹以上いそうですが、さんざん探したものの姿は全く見つかりません。カエルの鳴き声を比較した動画と聴き比べてみると、どうやらニホンアマガエルで間違いなさそうです。上掲の四蛙銅鼓のカエルを眺めながら聴くといいかも。
柵の向こうの方丈庭園からもカエルの鳴き声、同様に聴き比べてみたもののよくわかりません。去年の秋の特別公開で方丈庭園を見学させれもらったのですが、春の特別公開は4月1日から7日で終わってました。
長い行列の銀閣寺前バス停は無視して白川通の銀閣寺道バス停へ。こちらも10人くらいの列も頻繁にバスがやって来て、運良くガラガラのバスに乗り込み座れました。それでもバス停毎にどんどん乗り込んできて満員。東山三条では京都駅まで無料で地下鉄に乗れますと誘導していました。観光公害で評判の良くない京都市バスですが色んな工夫で少しでも問題を解決しようとしていると伝わってきます。
四条河原町周辺は渋滞しているはずなのでひとつ手前の河原町三条で下車。三条と四条で東西と南北の順番が逆なのはなぜなのか。いつもの高田酒店にたどりつきました。今日の冷酒は高知の美丈夫特別純米、あては肉じゃが。とうがらし要りますかと渡されたけど、肉じゃがには要らんでしょ、十二分に美味しいよ。