雲龍院と法然院

よ〜いドン!のロザンのうんちくんで泉湧寺(せんにゅうじ)とその塔頭を紹介していたのを見て行ってみたくなりました。

関西以外の人にちょっと説明しておくと、よ〜いドン!は「となりの人間国宝さん」で知られる関西テレビ朝の情報番組、うんちくんはロザンのふたりがさまざまなテーマで現地を訪ね、京大卒の宇治原さんが「蘊蓄」を披露する水曜日のコーナーです。

天満橋でマックモーニングのつもりがすぐに特急が発車と分かり改札に入ってしまいました。紅葉のピークでいつもよりかなり混み合ってる天満橋駅、おまけにやってきたのは席の少ない5000系、京阪特急で立ちっぱなしは初めての経験かも。

丹波橋で準急に乗り換えて東福寺駅に到着。初めて下りた駅ですが、えらく狭い場所に設置されたJRとの乗換駅、息が詰まりそうな狭苦しい駅前に観光客がいっぱい。

たばこ屋さんの前に仲恭天皇九條陵・崇徳天皇中宮皇嘉門院月輪南陵への道標、古いものが建っていても木屋町辺りとずいぶん雰囲気が違ってます。殆どの観光客は京都一の紅葉の名所、東福寺へ向かうらしく右手へ、自分は左手へ。

泉湧寺

駅から10分ほど歩いた東大路通にマーカーを付けておいたおばんざい屋さん、開店まで20分もあるのにもう並んでいる人がいます。自分も並ぶかちょっと悩んだけど、先へ進むことにしました。道の奥に泉涌寺の総門が見えてきました。

泉涌寺一山案内図をみるとかなり広い境内、ロザンのうんちくんで紹介されるまで名前も知らなかったけど巨刹、平安時代に空海が創建と伝わるものの実質的には鎌倉時代に俊芿(しゅんじょう)が開山した真言宗泉涌寺派総本山です。

塔頭寺院が並ぶ林の道を500mほど歩くと大門、御寺泉涌寺と掲げられています。皇族が住職を務める門跡寺院ではなく皇室の菩提寺で御寺(みてら)と呼ばれるそうです。お腹ペコペコでとりあえず自販機でカフェオレを買って誤魔化しておきます。

大門で拝観料500円を払って入るとすぐ左手に楊貴妃観音堂。楊貴妃をモデルにしたと伝わる、南宋(12−13世紀の中国王朝)から渡来の観音菩薩坐像(楊貴妃観音像)が安置されています。写真撮影禁止も検索すると見つかりますが、口の周りにおヒゲが。これはヒゲじゃなくて微笑みを表すものだそうです。

大門から坂道を下った先に仏殿、本殿にあたる堂宇で、堂内には運慶作の3体の如来像。

仏殿の背後に舎利殿、狩野山雪作の雲龍図天井画があり、手を叩くと音が鳴るため鳴龍と呼ばれ、ロザンのふたりが音が鳴るところをデモンストレーションしていたのを真似をしたかったのですが、手を叩くために特別拝観料千円はちょっと高すぎるので諦めました。

舎利殿の奥にある本坊に入るとそば席、やっと朝食にありつけます。外国人カップルと相席で太めの麺にゆば、キツネ、ほうれん草だけの動物性タンパク質ゼロで、お腹には貯まらないものの温まりました。

御座所庭園拝観はさらに500円。靴を脱いで本坊に上がるとと御座所に繋がっていて、侍従の間や女官の間、そして御座所と皇室ゆかりの障壁画に囲まれた部屋が見学できます。

御座所庭園です。パスポート式じゃなくてアトラクション毎に拝観料を払うシステム、もし舎利殿も入っていたら2,000円にもなるところだった、と心の狭いことを考えながらだとあまり楽しめなかったお庭です。

雲龍院

塔頭の雲龍院はもう止しておこうかと思ったものの、せっかくなので拝観料を確認してから入るかどうか決めることにしました。

雲龍院の山門を入った参道にコロナ菌のモデルのような赤い実はサネカズラ。

拝観料は400円とリーズナブル、それに写真は屋内でも一部を除きOKと分かり上がらせてもらいます。チケットブースの女性に、よ〜いドン!ですか?と訊かれました。アタリです。玄関に龍の衝立。

玄関のすぐ脇の部屋が蓮華の間、ロザンのうんちくんでも紹介していた4つの障子窓です。座敷の真ん中に腰を下ろして撮ってみたもののなかなか外の景色にピントが合いません。

座敷の端に座布団、ロザンの菅ちゃんがここに座っていたのを思い出し、座ってみました。

あら不思議、椿、灯籠、楓、松、とそれぞれの障子窓にくっきりと浮かび上がってきました。右から2番目の窓の楓がもう少し赤ければよかったのですが、ほんのり赤で満足。

チケットブースで渡されたパウチ、表は龍総集編で裏は龍総選挙になってました。

皇族位牌堂の霊明殿前の石庭、菊の御紋に囲まれた石灯籠は徳川慶喜寄進。雲龍院は南北朝時代、北朝の第4代後光厳天皇が開基、皇室との縁が深く、塔頭寺院でありながら真言宗泉涌寺派別格本山だそうです。

廊下にぶら下がった鉄板(銅板かも)は雲版、食事や勤行の開始を知らせる銅鑼です。

書院前に広がる庭園、紅葉はわずかも、ひときわ目立つ杉の枯木は落雷によるものらしく、よく見るとてっぺんには避雷針が取り付けられています。

こちらも菊の御紋の水琴窟、竹筒に耳をあてて音を聞いてください、とあったもの、竹筒からは何も聞こえず、菊の御紋に落ちる水滴の音が直接聞こえてくるばかりでした。

書院の縁側に椅子が並べられ足下に2つずつ石が並んでいます。瞑想石と案内されていて、お庭に向かってゆっくり椅子に腰掛けて…足下にある2つの瞑想席に左右の土踏まずをのせましょう、とあったのでとりあえず試してみました。

お庭に向かった小さな座敷に座卓と座布団が置かれていたので腰を下ろします。座敷の隅に立てられた瑞龍昇雲と題する小さな障壁画です。

座卓に反射したお庭、掛け軸はユーモラスな大黒天。

二間続きの座敷は悟りの間、四角い窓は迷いの窓、丸い窓は悟りの窓です。鷹峯の源光庵の迷いの窓、悟りの窓より少し小ぶりです。

悟りの窓に向かって低い椅子が置かれていて、じっくりと悟れるようになってます。欄間には鳳凰の透かし彫り。

漢詩の掛け軸に素敵な生け花。訪ねてきた人をたっぷり楽しませ、寛がせようとする細かな心遣いがいっぱいの雲龍院でした。

とても楽しいお寺ですね、とチケットブースの人にお声がけして出てくると、ナンテンに並べて、意に沿わないおみくじを結んでください。難を転じます。(南天)とありました。ナルホド。

拝跪聖陵の碑、泉湧寺御座所庭園の奥に月輪陵が広がっていて、鎌倉時代から江戸時代の14人の天皇や皇族の陵墓になっていると分かりました。

月輪で思い出すのは吉川英治の親鸞でキーパソンだった九条兼実、親鸞の妻・玉日姫の父で月輪殿と呼ばれていました。この辺りに居を構えていたようです。

林の中の参道両側に泉湧寺塔頭寺院、坂の下は今熊野観音、看板の写真と比べると、今年の紅葉はイマイチと分かります。

もうひとつの塔頭、戒光寺に入ってみました(拝観料無料)。台座から光背まで約10mもある運慶・湛慶親子作の木造丈六釈迦如来像が安置されています。パソコンが置かれていて説明を聞けるようになっているものの、モニターの再生ボタンを押しても反応しません。案内係の女性が駆けつけてきてくれて、手元のマウスで再生してくれました。

総門を出ると好物のホーロー町名看板、元は広告付きだったのが上書きされているようです。来る前に並びかけたおばんざい屋さんに再チャレンジしてみると、もう今日のランチ営業はおしまいでした。

法然院

雲龍院に満足したので、もう帰ろうかとも思ったのですが、やはりもう一箇所、拝観料無料の法然院へ向かうことにしました。バスに乗る前にトイレを探すと250m歩いた東福寺鐘楼横にありました。この辺りで東大路通は九条通に名前を変えて西へ方向転換しています。

東福寺バス停から空腹を抱えたまま202系統のバスで北へ向かいます。五条坂や清水道でいっぱい下りて漸く席をゲット、周辺は大変な賑わい。

202系統は丸太町通を西へ向かってしまうので熊野神社前で下車。東山丸太町交差点角の定食屋さんに入ってみました。伊東に行くならとは違ってひらがな「はとや」。

酒かすラーメン定食にチャレンジ、要は麺の入った粕汁です。ご飯とガラスケースからおかず一品が選べるのでオムレツを選択、温まりました。

目的地まで歩くにはちょっと距離があるので、93系統のバスで終点錦林車庫。哲学の道を抜け法然院に到着。

西日の陰の法然院山門、門の中に見える薄目の紅葉もこれはこれで大変美しい。白砂壇も紅葉。

今日の水盤の花はサザンカ。

庫裏に「秋季 伽藍内特別公開、11月18日~24日、文化財保存協力料800円」と案内されていました。拝観料無料なのでやってきたのですが、この800円は節約すると後悔しそうなので、靴を脱いで上ると法話を開催中。隙間から少し覗くと正面に梶田住職。係の女性に見つかりどうぞ、途中退出されても構いませんよ、と案内されたものの、4時までの特別公開、もう3時20分を回っているので、ご遠慮しておきました。 

法話の部屋の隣は図書室、その手前の壁に「Primates Family Tree Mandara - 類人猿系統樹曼荼羅」と「一家に1枚周期表」、科学を大切にするお寺のようです。

自分が高校生の時よりずっと元素が増えています。伝記を愛読していたキュリー夫人のポロニウムあたりはうっすら記憶にあるものの、アインシュタインのアインスタイニウムは全く記憶になく、ニホニウムという日本初の新元素も初耳です。

上の方にはノーベル物理学賞、化学賞、生理学医学賞受賞者の一覧、何と22人もいるんですね。ちょっと古いリストで、2018年の本庶佑先生、2019年の吉野彰先生を加えると24人になります。

普段非公開なのがもったいないと感じさせる法然院方丈庭園。鳥の声がいっぱい聞こえてくるのですが、姿は確認できず。

菊を散らした花手水と竜吐水。

壁の絵は見覚えのある景色、東大寺二月堂裏参道です。側溝のサワガニたちは冬眠中のはず。

ガラス障子の向こうに吉田山。めちゃくちゃ綺麗に磨かれたガラス障子、子供の頃の実家の縁側にもガラス障子があったけどこんなに透明じゃなかったかと。

暗い茶室とお庭です。障壁画で囲まれた座敷も多数公開されており案内係の人もいるのですが、照明がなくよく見えませんでした。

休憩所が設けられていてお茶が提供されていました。ストーブにあたろうとしてふと窓の外をみると鳥たち。メジロと木の陰にヤマガラ、手前に飛んで来たのはエナガ。

公開時間がもうすぐ終了なので、休憩所の片付けにやってきた人にガラス障子を開けてもらいました。エナガの水浴びです。

さらにエナガたちが集まって来てメジロもやってきました。おやっ画面上部に顔が切れてしまっているものの羽の付け根が赤い鳥、ソウシチョウです。

ヤマガラが戻ってきました。尾羽を高く上げたエナガたちが可愛い。

エナガたちの入浴シーンです。

たっぷり楽しませてくれたエナガたち、せせらぎに落ちた葉が紅葉だと良かったのですが、これ以上贅沢言っちゃいけません。

3時半までの予定のご住職の法話がまだ続いていて、もう公開時間終了のはずがまだ入ってくる人もいる中を退去。池に横たわるいつもの大木です。

山門はもう閉じられていましたが、脇の道から出入りできます。

スギゴケに落ちたモミジ。赤と緑のグラデーションは今日見たモミジで一番キレイ。

手ブレが恥ずかしいけど水滴の音が撮りたかったので、水盤のサザンカ動画。

哲学の道に戻ると、疎水にノコンギク(たぶん)とツワブキ。

豪華なモミジも。仁丹広告付き右書き「區京上」ホーロー町名看板みっけ。現住所も浄土寺南田町ですが左京区です。

雨が降ってきました。銀閣寺前バス停は長蛇の列で本数も少ないので、銀閣寺道バス停へ。近所のお店の軒下で暫し雨宿りして203系統に乗車、満員だったのですが、百万遍で最前部の席が空いたのでバス停ひとつ分だけ着席したところです。

出町柳のホームに下りると2200系復刻塗装が停まっていました。南海7100系復刻塗装と較べてイマイチ萌えないのは、南海は30年前の復刻塗装に対して京阪は10年ほど前の復刻塗装、それに南海に対して京阪は現行塗装も悪くないと思われること、さらにや自分が南海沿線民だったからかと。