高槻市縦断

4年ぶりに摂津峡を訪ねてみます。前回はウォーキングコースマップのBコースの崖道を辿ったのですが、ほぼ芥川渓谷沿いのAコースを北から南へ下ってみるべく摂津峡北側の入口となる上の口バス停へ向かいます。

梅田でも絶滅危惧種のタバコの吸える喫茶店、Whity梅田のグリーンでホットサンドのモーニング。店内はいついっても満席状態、タバコ難民が急増しているのが分かります。

高槻止まりの普通電車で高槻に到着。高校生の時、好きな子が高槻に住んでいたので、今も高槻と聞くだけでちょっとドキドキします。上の口行は10〜15分ヘッド、左側に掲示された1時間に2〜3本の原大橋行も上の口を通るので、時刻表無しでも構わない高槻市営バス53/54系統です。ちなみに尼崎市バスが阪神バスになったので、高槻、京都、神戸の他に関西に残る市バスは伊丹だけのはず(コミュニティバスを除く)。

バスの車内放送は高槻出身の声優、福山潤さん。アニメの知識は全くもちあわせない自分ですが、Wikipediaを見ると、この人がいないとアニメ業界がなりたたないんじゃないかと思えるくらいすごい数の作品に出演している声優さんです。

摂津峡

20分ほどで上の口に到着、周囲は普通に高台の住宅地、ここで折り返すバスの回転場があります。摂津峡の方へ向かうと摂津響Saalという「シャレ」たコンサートホール(Saal)。

坂道を少し下ると視界が一気に広がりました。原という地区です。たんぼにヨメナ、赤い小さな花はイヌタデ。

芥川です。ニジマスが放流されている有料の釣り場になっています。Google Mapには原八景「河原夕照」とマーカーが立っています。山水画の画題、洞庭湖付近の風景「瀟湘八景」に因んで明治時代に選ばれた原地区の八景のひとつだそうです。

ゲンジボタルを紹介する看板が立っていて、ハゼノキがきれいに紅葉していました。

芥川山城跡入口とあります。案内板には戦国時代に三好長慶が在城した山城、「首都」として機能していたとありビックリ。期せずして、飛鳥京、藤原京、近江京、平城京、恭仁京、平安京と歩いてきた日本の首都めぐりの続編になったようです。三好長慶は阿波の人というイメージが強かったのですが、足利義輝を都から追放して、天下人として君臨したのがこの芥川山城、天皇の御座所ではないものの、鎌倉や江戸も御座所ではなかったので、「首都」だったとして構わないかと。

芥川山城跡の三好山182.69m、主郭(本丸)、出丸…、全部で28もの郭がびっしり山の上に立ち並んでいた光景はどんなだったでしょう。

道幅は一気に1/10ほどに狭まり、渓流が近づきます。

滝が美しいのですが、道はなかなかに険しく、下リの石段はビビる箇所も少なくないです。ファミリーの小さな子どもたちも平気で通っているのでちょっとビビりすぎかも。

川面を覗くも何かの稚魚の小群が見つかるばかり。

白滝への分岐点でやっと歩きやすい平坦な道に。白滝は前回見たのでまっすぐ進みます。

前回気づかなかった山口誓子の句碑がありました。

流蛍の 自力で水を 離れ飛ぶ

今も6月頃にはホタルが多数現れるようですが、真っ暗な夜にこの道を歩くのはちょっと。

橋の上からモミジ、青から赤に直接変化しています。

摂津峡公園に到着、見晴らしが広がります。

芝生の向こうに三好長慶の像。高槻といえば高山右近のイメージが強く、三好長慶がこれほど地元でメジャーとは思いもしませんでした。

芝生には何と奈良公園で見覚えのある黒豆がちらばっています。まだ乾燥していない新しいモノで今朝方何頭かここで草を食んでいたはず。

公園から石段を下りると塚脇橋、川上正面が芥川山城跡の三好山かと思いきや、その東側に広がる山で、山の向こうは案内板のあった芥川山城跡入口辺りです。川幅が広がった芥川の左岸を河口側へ歩いてみます。

魚道で楽して魚を獲ろうとしているアオサギ先輩。なかなかそうは問屋が卸してくれないようです。

丹念に河原をチェックしているとイソシギ発見。

コセンダングサに美形のウラナミシジミ。コウモリみたいなキタテハ。

塚脇橋から下流へ2つ目の西之川原橋で芥川を離れ検索して見つけたバス停へ向かいます。普段は色んな野菜を育てていそうな小さな畑にシュウメイギクがいっぱい。

その陰になんとフジバカマも満開でビックリ。

アサギマダラがいないのはともかくも、なぜか近くで舞ってるツマグロヒョウモンも花に止まってくれませんでした。

フジバカマの陰の鮮やかなピンクの花はGoogleレンズによるとハマナデシコだそうです。海辺に限らず砂地に咲くナデシコです。

通りのお宅のお庭から頭を出したモミジ、長く伸びた枝はたぶん徒長枝(勢いの強い枝)、他の枝が成長しにくいので普通ならカットしてしまうところをあえて長く伸ばしているようです。植木屋さんのセンスが光る剪定かと。以前旧竹林院でみたつりしのぶにも通じる作庭の妙を感じます。

三島江

近くからヒッヒッヒッとセッカの声が聞こえる西之川原というバス停、高槻市の「とかいなか」というキャッチフレーズにピッタリの場所でのんびり10分ほどバスを待ってJR高槻駅北口へ戻ります。駅周辺でランチにしようと思っていたのですが、さほどお腹が減っておらずそのまま南口からのバスに乗り換え、コスモスを見たくなったので久々に三島江へ行ってみます。

スムーズに走る北口側と違って国道171号とか主要道が交錯し右折を繰り返し阪急高槻市も経由するのでイライラさせてくれる高槻市バスです。漸くスムーズに動き出すと芝生西口や芝生住宅東口というバス停、「しばふ」じゃなくて「しぼう」と読み、三好長慶が生まれた芝生(現徳島県三好市)に因むのは間違いなさそうです。

西面口(さいめぐち)で下車、ケタケタケタとモズの高鳴きが聞こえ、見回すと電線に止まってました。

コスモスロードに到着、そこそこ賑わっているかと思いきや誰もいません。

女性がふたりコスモス畑に入って花を摘んでました。脇に農家の人がいて、どうやらどうぞ持って帰ってと招かれていたようです。トラクターには草刈り用のアタッチメントが取り付けられていてどうやら今年のコスモス畑はもうお開きの様子。

東の方のコスモス畑もピークは過ぎているもののまだ綺麗。

ローズピンクのコスモスの花びらに白いツブツブ、蝶か蛾の卵のようです。ふつうは葉っぱに産卵するはずで花びらは珍しいかと。コスモスがおしゃれしているようにも見えます。

ツートンカラーのコスモスも美しい。

小さな水路の柵に三島江を詠んだ歌がずらりと10mおきくらいで掲げられていました。

三島江の 玉江のまこも かりにだに とはでほどふる 五月雨の空 - (新勅撰集)藤原行能

どうやら万葉集にある、作者不詳の歌に掛けた歌と思われます。

三島江の 玉江の薦を 標めしより 己がとそ思ふ いまだ刈らねど - 万葉集巻七

新勅撰集の方の意味は、万葉集で誰かが自分のものと主張していたコモはまだ刈られていないけど、梅雨でこれだけ雨が降ればしょうがないよね、といったところかと。行能は鎌倉時代初期の公家、玉江は三島江の美称だそうです。

もうひとつは、

三島江の 鳰の浮巣も 乱れ葦の 末葉にかかる 梅雨の頃 - (壬二集)藤原家隆

鳰(にお)はカイツブリです。その浮巣に梅雨時の雨に濡れた葦原の葦先が覆いかぶさっている様子を歌ったものかと。カイツブリのシマシマのひなの様子が目に浮かぶ、ヒュルルルという鳴き声が聞こえてきそうです。家隆も鎌倉時代初期の公家で、晩年に四天王寺西側に夕日庵を結び日想観を修したことから、谷町九丁目の隣の「夕陽丘」の地名が生まれたそうです。

万葉集の時代から鎌倉時代にかけてだけでも実に多くの歌人が三島江を詠んでいます。京から大坂ができる前の難波津までの重要な中継地点でかつ風光明媚だったためと思われます。古代にはまだ河内湖の痕跡も残っていたはずの淀川左岸よりもこちら右岸の方がずっと賑やかだったかと。

淀川の土手に上ると正面に生駒山。

対岸にはひらパーの観覧車。川下、川上、どちらにするかちょっと迷って川上へ向かいます。

ケタケタケタ、高鳴きのモズは見つけやすい。

延々と両側にセイタカアワダチソウの道が続きます。同じ淀川右岸でも鳥飼や柴島辺り、あるいは古代と違って殆ど水辺に近づけない三島江、古の三島江の雰囲気を味わうには水辺に近づける対岸の枚方の方がいいと思います。

ノラニンジンがまだ咲いてました。

さらにモズ。色んなところからウグイスの声も聞こえてくるのですが見つけられません。

さらにケタケタケタ、♀も高鳴きするはずですが、なぜか今日は♂ばかり。セイタカアワダチソウばかりの道を2kmも歩いて芥川河口で土手に上がり、のぞみ号が頻繁に走り抜ける鷺打橋バス停に辿り着きました。

鳥見はほぼハズレも歴史と文学をたっぷり勉強できて満足。

阪急6300系京とれいん

高槻市バスと京阪バスの2本の標識が並んでいます。高槻市バスの時刻表を見ると1日4本しかないものの、京阪バスは15分ヘッドです。よく見るとこちらは枚方市駅行、淀川を渡って枚方市駅の方がずっと近いと分かり、京阪で帰ってもいいのですが、ちょっとチェックしたいことがあるので道路を渡って反対側のバス停へ移動。JR高槻や阪急高槻市行じゃなくてJR茨木行の京阪バスに乗り込みました。

次は阪急茨木市じゃなくてなぜか阪急茨木、ここもやり過ごしてJR茨木駅に到着。

JR高槻駅と違ってJR茨木駅のバスターミナルは北側だけ。高槻市バスだけのJR高槻駅と違って、京阪バス、阪急バス、近鉄バスが顔を揃えるJR茨木駅です。

JRで帰りたかったのは、来る時に阪急の正雀車庫で6300系の京とれいんがちらっと見えたから。快速電車の窓際でスマホを構え動画を撮っていたのですが、塀で半分以上が隠れていて、この静止画書き出しがせいぜいでした。パンタグラフが見えるので2号車の6804か4号車の6814です。運行終了から11ヶ月、ちらっとでももう一度会えて良かったです。

結局ランチ抜きで曽根崎のYamatoでプファー。11月なのに夏日のプファーです。

夏日なのに御堂筋イルミネーションが始まってました。

阪神スナックパークで寿司をつまみます。好物の芽ねぎ、置かれた2貫の間隔が広すぎるのが気になります。

長谷川義史画伯の壁画を前に、仕上げの博多とんこつラーメン。約25,000歩、15km歩いてました。