大原古知谷

貴重な梅雨の中休み、大原へ向かいます。目的地は三千院でも寂光院でもなく、もうひとつのお寺です。

快速特急洛楽は京橋が過ぎても隣は空いたまま、七条まで一気で快速特急「楽々」。目的地周辺にはコンビニはおろか一軒の商店もなさそうなので叡電出町柳駅構内のパン屋さんでサンドイッチを調達。大原行のバスを待つ間土手に出てみると草むらにハグロトンボ、翅にチョークで書いたような白い線は初めて見ました。

大原行の京都バスは満員も、宝ヶ池で最後部席をゲット。ところが山道に入ると、バスがボロいせいか、道が悪いせいか、運転が荒いせいか、上下左右にえらく揺れてジェットコースター感覚。でもこれくらいが京都バスっぽくて楽しいです。

大原バス停に到着。寂光院へ向かう石段を下りて高野川の川面を覗くとミヤマカワトンボ。ベルベットのような豪華な山野草はゼニアオイ。

今日はさらに北へ向かいます。この先自動販売機があるかも心もとないので水を買って大原始発の小出石行き19系統に乗車、1日7本、日中2時間ヘッドの路線です。国道367号ではなく狭い旧道を行きます。大原までのバスより小型で新しく、さほど揺れません。高野川の川面が近くなってきました。

4分乗車で目的地の古知谷に到着、飛び出し坊やが迎えてくれました。大原バス停から歩いても2kmくらいです。こんなところにも、まえはらさんのポスター。嫌いな人じゃないので、photoshopで消さずにそのままにしておきます。

杉の森の道

古知谷阿弥陀寺への参道の入口、敷地内は飲食禁止とあるので、道路に出てサンドイッチを食べておきます。この先は朽木を経て若狭へとつながる鯖街道です。

杉の森の参道を進みます。杉の森じゃなくて北山杉の森と呼びたいところですが、北山杉とは高雄の奥、北区中川辺りの杉を定義するようなので、一応単に杉の森としておきます。

参道に並行して付きつ離れず渓流、高野川の源流は京都滋賀府県境の途中峠麓ですが、この渓流も高野川の源流のひとつと言えそうです。

密な網目の翅、粉を吹いたような胴体のイトトンボ、アオイトトンボかな。

石段の道になるのかと思っていたら平均斜度15%ほどのさほどきつくない舗装された道が続きます。車も登って行くものの、700mほどの道のりで行き交ったのは、人も含め宅急便1台と関東ナンバーのワゴン車が1台だけでした。

人の手が入っていない自然のままのスギゴケが美しい。

オオシロエダシャクです。1本だけ生えてるきのこはカラカサタケかな。

渓流の岩に生えた風情のある草はチャルメルソウ、名前からすると外来種かと思いきや固有種です。道沿いに青モミジが増えてきました。

お寺のお堂が見えると渓流は2段の滝に、随分昔に人工的に作られた滝のようです。

ここで舗装路は石段になり手前に「禁葷辛酒肉」と彫られた石碑。葷辛(くんしん)とはニラやニンニクなどのニオイの強い野菜や生姜などの辛い野菜、それにお酒や肉は禁止という意味。関ケ原からまだ間もない慶長14年木食上人弾誓(たんぜい)が開山した念仏道場、つまり修行の場です。木食(もくじき)上人とは、人の作った米や野菜を食べず、木の実や山菜だけを食べる修行僧の意で、弾誓上人は木食の開祖とされるようです。円空仏の円空は元禄時代頃の木食僧、木喰仏の木喰上人は江戸時代後期の木食僧です。

タカオカエデ=イロハモミジとの立て札。カエデとモミジは別と思っていたのですが、植物分類学上は同じものだそうです。苔の陰からニホントカゲが顔を出したもののピンボケ。

本堂前に咲いた花はたぶんマツモトセンノウ。男性が入れ違いに出てきて下駄箱には自分の靴だけ。

生と死を感じさせるお寺

本堂の広間、松の襖絵の上の額は秋篠宮殿下訪問時の写真。写真右手の縁側に腰を下ろすと心地よい風が吹いて大汗が一気に引いていきます。

5月にはピンクのクリンソウが咲き乱れていたそうですが、今はごく僅かに黄色い花が咲いているだけ。その分誰もいない空間を独り占め。

ひょろりと伸びた黄色い花はキバナクリンソウと分かりました。

苔の岩を上るニホントカゲ、離れた場所から顔を出すとミミズをのみ込んでいました。

日が射してきてお庭の表情が変化。重い腰を上げます。中庭にもマツモトセンノウ。松本とは地名ではなく歌舞伎の松本幸四郎の家紋に似ていることに因むそうですが、その家紋は四つ唐花菱で、この説は微妙な感じです。

渡り廊下の向こうのお堂には弾誓上人の即身仏が納められた石棺が安置されています。お堂の中が洞窟になっていて水滴の落ちる音が響いています。サンダルに履き替えてお堂の奥へ入ることもできるのですが、お堂の入口までにしておきました。

足元に仰向けで足をバタバタしている虫、ひょっとして、とひっくり返してみると、やはりオオセンチコガネです。ノーマルポジションに戻してあげたとたん、動かなくなってしまったのですが、ぴくっと動きました。いまわの際だったようです。青いオオセンチコガネ(ルリセンチコガネ)は奈良公園で会ったことがあるのですが、赤いオオセンチコガネは初めてです。

下駄箱のところに戻ってくるともう1匹、ひっくりかえったオオセンチコガネ。ノーマルポジションに返してみるとこんどは歩きはじめました。何度も生と死を感じさせてくれるお寺です。

苔の岩にミセバヤ。山を下ります。チケットブースのご住職に、縁側に腰を下ろすともう立ち上がれなくなりました、とお声がけすると、素敵な笑顔が返ってきました。他に人は見当たらず、朝のお勤めから、お堂の掃除、庭の手入れまでこの若いご住職がひとりで、禁葷辛酒肉でやっているのかも知れません。

石段を下りて振り返ると石垣が立派で山寺というより山城の趣きです。

杉の森の15%下り勾配を歩きます。

この前の生駒と同じ様に頭の上を赤い翅の虫が飛んできて目の前の枯れ葉の草むらに下りてきました。生きている元気なオオセンチコガネです。肉眼ではもっと赤いのですが、構造色がカメラでは見たままに撮れていません。

生きている証拠の動画です。

苔の岩にミヤマカワトンボ。

連射で飛んでるところです。

鯖街道旧道に出ると小出石行バスがやってきました。小出石まではスグなので、10分ほどで折り返してきます。大原まで歩いて戻るつもりだったのですが、バスにします。

10分ほどバスを待つ間に見つけたネジバナです。来る時はひとりだけだったバス、帰りはバス停じゃないところから女性がひとり乗り込んできました。自由乗降区間になっているようです。

三千院

古知谷から大原まで歩かなかっ分もう少しHPが残っているます。あじさいまつりを開催中の三千院へ。

女ひとりの歌碑の前に永六輔さんの写真、その手前に小さなガクアジサイ。

視点の位置に止まったヤマトシジミ、こんなに茶色い翅だったかな。参道を歩くとやはり、きょうと〜おおはらさんぜんいん♪のイヤーワームが止まらなくなりました。

客殿の庭、聚碧園です。観光客がびっしりの縁側の空いているスペースをなんとか見つけ腰を下ろしてみたものの全然落ち着かないので早々に退散。奥の方にハンゲショウがいっぱいなのが見えます。今年は7月2日から6日までが半夏生だそうです。

弁天池には小魚がいっぱい。近くにいた人がコイと違うみたいやなぁ、と。どう見てもコイじゃないです。

フナのようです。三千院が飼っているのではなく、どこからか流れ込んできたのものと思われます。

あじさい園は境内の奥の方に広がっていました。ガクアジサイは少なく殆どホンアジサイです。これまでに3回くらい訪ねた三千院で、以前と比べて特段人が多い訳でもないのですが、誰もいない古知谷で感動を独り占めしてきたばかりなので人の多さが気になります。

ミヤマヨメナとシチダンカ。お気に入りだった、わらべ地蔵たちもざっと見ただけで出てきてしまいました。

「見渡す限り大原の里展望所」にやってきました。柴漬けの元、しそ畑にアマガエル。残念、せっかくの紫と黄緑のコントラストなのにピンボケ、だいぶ集中力が無くなってきたようなので帰ります。

道端の青紫のミヤマヨメナ。バス停にたどり着くとちょうど14系統が出るところ、結構並んでいたものの最前列左側をゲット。

出町柳まで戻ってきました。高野川はベンチがなくて、賀茂川左岸は日差しが強く、賀茂川右岸まで渡り一休みしているとカルガモファミリー。7月のベビーカステラは珍しい。