夕暮れの白鳥たち

承前、次の目的地は瓢湖、日本で一番有名な白鳥たちの渡来地でラムサール条約にも登録されており、かつて大阪-青森を結んでいた特急白鳥もその愛称が由来する湖です。特急白鳥は新潟駅へは寄らず、新津から羽越線を直進し停車こそしないものの瓢湖最寄りの水原(すいばら)経由で運行されていました。

Google Mapでみつけた、しょこら亭というチョコレート屋さんをなにげなくカーナビの目的地に設定したら正解、隣接する瓢湖の駐車場に止めると、湖畔からなにやら歓声が聞こえてきました。雨はしとしと降ったり止んだり。

瓢湖

湖畔にカメラやスマホを構えた観光客がずらり、湖面には白鳥やカモがびーーーっしり。ちょうどえさやりタイムでした。

オオハクチョウはやはりコハクチョウよりかなり大きい。

3代目白鳥おじさんの齊藤さん、ハンチングがカッコいいです(参考)。

カモたちはオナガガモ、マガモ、ヒドリガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ、オオバン、カルガモ。

おおっ、オオハクチョウの背中にオナガガモが乗ってます。絵本か何かで見たような光景が目の前。

何とも見たことのない景色です。

12月9日現在の飛来数は5,363羽、当然カモたちは含まれておらず白鳥だけの数です。

天然記念物水原の白鳥渡来地瓢湖の由来の案内、「水面に蓋をする程の水禽」とはまさに言い得ています。

与えているエサは小さく切った食パンのようです。10分ほどでえさやりタイムが終了、白鳥やカモたちも落ち着いたので湖面に面した管理事務所直営らしきコーヒーショップでひと休み。コーヒーショップでは観光客が与えることができる水鳥の餌の小袋が売られていました。

野鳥へのえさやりは賛否両論があります。大阪城公園も野鳥へのえさやりは禁止です。一方、以前訪ねた宮城県の伊豆沼のサンクチュアリセンターでカモや白鳥に与えるポン菓子が売られているのにはビックリしました。千葉県印旛沼の白鳥の里では平成4年白鳥の餌付けに成功して以降毎年渡来するようになったようです。4年前に行きそびれた釧路湿原でもタンチョウは餌付けされています。

改めていくつかのウェブサイトを読み直してみたものの、パンなど人工的な食物を与えることによる鳥たちの健康への懸念、自力で採餌しなくなる懸念、鳥インフルエンザ拡散の懸念等のマイナス面が指摘される一方、人間と野鳥がふれあう機会を増やし人間の自然保護への思いを深め観光資源となるだけでなく、タンチョウの場合は餌付けによって絶滅の危機を逃れたと評価されており、まさに功罪相半ばでモヤモヤが残ります。地域や都道府県によっても考え方が相反するようですが、日本野鳥の会は基本的にはネガティブなスタンスのようです。スパッと自分なりの意見を持つには至らないものの、ここ瓢湖では餌付けが開始されてから70年近く経っており、それにより5千羽もの白鳥たちが毎年渡来することになり、ラムサール条約にも登録されている事実からも白鳥おじさんのえさやりを否定することはとてもできないです。

まだ3時半ですが白鳥たちが田んぼから戻ってきました。オオハクチョウかコハクチョウかは不明です。

間近でオオハクチョウ。藻か何かを掬っているコハクチョウ、おや、画面左下隅にミコアイサが写ってました。

すっかり晴れ間が広がり西の空が茜色に染まってきました。日没まであと30分ほどです。

東の空にも白鳥編隊、コハクチョウっぽいです。背景は五頭連峰。

夕日を受けた亜麻色の白鳥編隊。

四方から次々と白鳥たちが帰ってきて湖面に降り立ちます。

瓢湖大橋の上から瓢湖の東側(東新池)をチェックするとミコアイサ発見。

ミコアイサも亜麻色。

五頭連峰もくっきり見えてきました。亜麻色コハクチョウペアです。

東の空のコハクチョウソロ。

西の空のコハクチョウファミリー。

夕日に白鳥、広重の月に雁っぽいです。

茜色の湖のコハクチョウ。真上からだと真っ白です。

ほとんどフラミンゴなコハクチョウ。湖面にはカンムリカイツブリ。

美しい水紋に囲まれたミコアイサ。

まだまだ集まってきます。旋回して頭上を通過。

さらに旋回して着水。北の空から着水準備の編隊も見えます。管制塔からの着陸許可を待っているようです。

バッシャーン、ド迫力のコハクチョウ着水です。湖面にはオオハクチョウファミリー、子どもたちの羽が少しずつ生え変わってきているようです。

オオハクチョウのどアップです。コハクチョウとオオハクチョウの違いは体の大きさは並ばないとわかりにくいのですが、くちばしの鼻柱が黒いコハクチョウに対し、くちばしの8割くらい黄色いのがオオハクチョウ、というのがわかりやすい見分けけ方です。コハクチョウの方がキリッと締まった顔でオオハクチョウはのほほ~んとした感じです。

えさやりの時にはほとんどがオオハクチョウだったのですが、この時間になって田んぼから戻ってくる白鳥の多くはコハクチョウのようです。コハクチョウたちは毎日3回のえさやりも我関せずで田んぼへ出かけ稲の二番穂とかを採餌している訳ですが、田んぼ自体人間によるもので、結果的に間接的なえさやりと言えるかもしれず、あり方は大きく違えど微妙なバランスの上に成り立っている白鳥と人間の共生という意味では同じことのような気がしてきました。

コハクチョウは北極海に近いコリマ川河口付近が繁殖地で、北海道へ渡ってきてもそこで越冬することは少なくさらに南へ移動、琵琶湖湖北や米子・安来へやってくる白鳥のほとんどはコハクチョウです。一方オオハクチョウの繁殖地はシベリアでももう少し南の方で、北海道に渡って来てそのまま越冬するのも多く、冬の北海道で会える白鳥のほとんどはオオハクチョウです。つまり移動距離はコハクチョウの方がずっと長いのですが、オオハクチョウが怠け者ということではなく、大きな体の移動に適した移動なんだと思います。

日没まであと10分。

まだまだ集まってきます。

空気がずいぶんクリアになって五頭連峰が美しい。手前の池はあやめ園だそうです。あやめ園に写り込んだ逆さ白鳥。

iPhoneの超広角動画です。ウーウーという白鳥たちの会話、さらに下りてくる白鳥たち、瓢湖の雰囲気がよく伝わっていると思います。

新潟の夜

どっぷり日が暮れてしまったので新潟駅南口のホテルへ向かいます。ハンドルを握りながら薄明かりの空を飛んでる白鳥のシルエットがまだ見えます。真っ暗になりあとはカーナビの指示するままに走らせるだけですが、工事箇所でちょっと道を迷いました。

チェックインを済ませ新潟の夜、新潟駅在来線の時刻表を見ると、3方向いずれへも終日ほぼ20分ヘッドで運行されているものの、平日ダイヤ/休日ダイヤの区別は無く、朝夕の通勤時間帯も運転本数は増えていません。つまり人口80万人弱の政令指定都市でも通勤手段のメインはクルマと分かります。

新潟駅ビルや万代広場は工事中。

Google Mapで高評価のお店に入りました。名物のへぎそばではなく十割蕎麦のお店でそば湯のぶたしゃぶ、大阪から白鳥を見に来たと話したところ、やはり新潟の人たちにとっては見慣れた光景のようです。

そこそこ賑わいのある万代口側と異なり、新潟駅南口は年末にイルミネーションで飾られてはいるものの土曜日の夜なのにひっそり。通勤がクルマの場合、外飲みは特別なイベントであり、その日はいつもと異なりクルマは置いて電車やバスで朝出勤することになります。自分のようにほぼ毎日外飲みなんてのは首都圏や京阪神等に限られる特殊な風習で、今や忘年会シーズンでも夜の街はひっそりがデフォルトなんでしょうね。

新潟の旅その3に続く