新神戸の山、西宮の浜

新神戸駅には、のぞみ全列車が停車するものの大阪府民にとっては馴染みのない無い駅です。町田や八王子、大田区辺りの東京都民もカバーする新横浜駅とはポジショニングがかなり違ってます。

三宮から地下鉄で新神戸に到着、新幹線のみならず地下鉄も初めて下りる駅です。新幹線の直下にあると思っていたら、地下鉄の改札から新幹線の改札まで遠くてびっくり、エスカレーターを何度も乗り換えるだけじゃなく、水平距離もかなり離れています。新大阪が地下鉄の北口と新幹線の中央口がつながって、急げば5分で乗り換えられるようになったのと対照的です。

ちょっと早めのランチをしてから布引の滝へ向かうつもりだったのですが、新神戸駅の飲食店は少なく食指をそそるお店は見つかりません。地下鉄の方に戻ってみると弁当屋さんがあったものの、運悪く直前に団体さん。やむなく隣のローソンでサンドイッチをゲット。

布引ロープウェイには長い行列ができているものの、これに乗ったら滝には行けないはず。ロープウェイの人に滝への道を訊いてみると新幹線の向こう側とのこと、滝へ向かう前からくたびれてきました。ANAクラウンプラザホテルの下にオリエンタルアベニューというモール、新神戸駅構内よりずっといろんなお店があり、自分のビタミン補充基地のしゃぶ扇もあって、よほど食べて行こうかと思ったのですがサンドイッチを買ったばかりなので、見送ります。

新幹線の改札口まで戻って来たものの滝への道が見つかりません。インフォメーションカウンターで訊いて、下の階へ下りてUターンして駅の下をくぐった辺りと教えてもらい、漸く滝への出発点にたどり着きました。地下鉄で着いてから40分経ってました。

布引の滝

新神戸駅裏からいくつかのハイキングコースが分かれています。とても新幹線駅裏の雰囲気じゃなくまるで神鉄鵯越駅のような趣きに、新神戸駅周辺を歩きまわらされた不愉快感はすーっと消えていきました。小さな公園にハクセキレイ。

駅からわずか5分で布引雌滝、落差19m。サンドイッチを食べていたらニホントカゲ、お腹がオレンジ色、婚姻色の♂です。

雌滝から急坂を7分ほど登り、布引雄滝、落差43m、なかなかの水量です。

滝の岩壁にキセキレイ、まるで、以前ダーウィンが来たで紹介していたイグアスの滝のオオムジアマツバメみたいです。

ものすごいスピードで垂直急降下して滝壺の岩に止まりました。いつの間にやってきたのか、つがいになってます。

滝壺を飛んでるところがけっこうくっきり撮れてました。

滝から先、貯水池まで行ってみることにします。滝の上に茶屋があって営業中、自動販売機もあります。

先を歩く母子の男の子が、虫がいると地面を指さした先に黒い虫、写真を撮らせてもらいました。マットブラックの背中に滑り止めみたいな筋が入っていてメカニカルです。お母さんから何の虫か分かりますかときかれて、さぁ、カメムシかなんかなぁ、とお茶を濁したのですが、帰ってから調べてみるとクロナガオサムシと分かりました。手塚治虫が愛したオサムシの一種です。母子に伝えたいところですが、このブログ読んでくれないかな。

視界が広がった場所に休憩所、その名も見晴らし展望台ですが、まだ高度が足りなくて神戸港はちゃんと見えません。

ところで自分は司馬遼太郎の街道を行くの熱心な愛読者なのですが、その21巻、神戸・横浜散歩、芸備の道で司馬先生と須田画伯が布引の滝を訪ねています。

「山道をのぼるうちに、山の中腹に展望台がある。(中略)布引の滝へここから、岩場の間に造られたせまい石段を下り、岩場の根の小径をくだっていかねばならない。(中略)枝道をくだってゆくと、樹間のむこうに滝の音がとどろきはじめた。ゆきどまりが茶屋である。」とあります。

自分が今辿ってきたルートと逆、つまり司馬先生たちは見晴らし展望台まで車で来て、茶屋までの僅かな距離を歩いただけと分かります。茶屋から雄滝、雌滝と道が続いており、藤原定家や在原業平の歌碑もあるように古代からの道で、ゆきどまりのはずがないです。それに新神戸から雌滝、雄滝と順に大汗かきながら出会う方が、茶屋で上から雄滝を眺めるだけよりずっと感動できたはずです。

司馬先生たちがやってきたのは1982年7月29日、司馬先生はまだ58歳、今の自分より若いです。街道を行くでは、どこへ出かけても、ほとんどは車移動で歩るくのはお寺の境内の中くらいで、これだけ多くの素晴らしい紀行を著しながら、どうやら歩くのはお好きではなかったと思われます。司馬先生もっと歩いていればもう少し長生きして、さらに作品を残してくれたんじゃないか、と思います。

空にはゴンドラが行き交います。見晴らし展望台から30分ほど歩いて布引貯水池に到着。司馬先生、神戸ウォーターのことをかなり詳しく書いているものの、雄滝をちょっと見ただけで山を下りてしまったようですが、この貯水池の水こそが神戸ウォーターです。今も神戸の水道水の2%が布引貯水池の水だそうです(参考)。

セグロセキレイがいました。これでセキレイ3種コンプリート。公園の広場のハクセキレイ、滝の岸壁のキセキレイ、清流のセグロセキレイ、それぞれの個性に合わせた場面でのコンプリートに満足です。

貯水池から5分ほど急な坂道を登り切ると広い道路と合流、布引ハーブ園にたどり着きました。ポートターミナルに接岸しているのはDiamond Princess、115,875総トン、三菱重工長崎造船所製のクルーズ船です。

水、水、水と探すものの自動販売機は見当たらず、ハーブ園の売店で生ビールゲット。よほどヘロヘロに疲れた様子だったのか、ベンチのカップルが席を譲ってくれました。

ハーブ園では何かバンドがライブをやっていて煩いです。ハーブ園を歩く気は失せて中間駅からロープウェイで下りることにしました。

ポートアイランドやポートターミナルが眼前に。

1991年の開通なので、司馬先生が布引へやってきた時にはまだなかったロープウェイです。

布引貯水池が見えます。堰堤は布引五本松ダムと呼ばれ、明治20年製、国の重要文化財です。やはり司馬先生や須田画伯に見て語ってもらいたかったと思います。

上空から布引雄滝、右手の視界が広がりポートタワー、中ふ頭にはぱしふぃっくびいなす、26,594総トンが接岸しています。

上空から新神戸駅、すっぽり覆われていて電車は全然見えません。

ロープウェイ山麓駅から山ひだに囲まれたJR新神戸駅、どの角度からも電車が見えない、つまらない駅です。

地下鉄に乗らずに異人館の並ぶ北野の坂をぶらぶら歩いて下ります。こういうソフトクリーム屋さんの並ぶ通りはどうも苦手です。すれ違ったゴスロリカップルが一番風景に馴染んでました。

三宮の高架下に見つけた餃子屋さん、南京町に本店を構える広東料理店の餃子専門店のようです。華僑の三代目の娘さん(?)といった雰囲気の若い女性が一人で切り盛りしています。焼餃子+水餃子+生ビールのセット、パリパリの羽がついた焼餃子がかなり美味い。他にも食べたいメニューが色々、それもどれも一人分のポーションのようです、三宮へ来る度に足を運ぶことになりそうです。

香櫨園浜

神戸港のクルーズ船見物じゃなくて、阪神電車に乗って香櫨園へ向かいます。カブリツキの男の子たちは兄弟でも友だちでもなくて他人です。

香櫨園で下りると飲み友達とバッタリ会ってビックリ。

浜夙川橋の下にカルガモファミリー、雛が9羽のビッグファミリーも既に雛たちはかなり大きくなっています。その先にはガングロユリカモメが1羽だけ。

香櫨園浜夙川河口左岸に到着、小潮ですが、そこそこ干上がってます。右岸先端にコアジサシたち。

空を舞うコアジサシの向うは阪神高速5号湾岸線、うっすら見える飛行機はたぶん神戸空港を離陸したスカイマーク機。広々とした空間で鳥も少なくないものの、やはり海と呼ぶには閉塞感があります。

コアジサシの手前にシロチドリがどかっと腰を下ろしてます。どうやら居眠りしているようです。

コアジサシは低空を舞い、シロチドリは砂浜をちょこまか走り回ります。

振り返るとすぐ近くでコアジサシが小魚を飲み込み、小魚が喉を通るところです。

男里川河口とはぜんぜん違うゆるやかな波とシロチドリ。

コアジサシのバスタイム。

頭を上下反転したり、尾羽を広げたり。

そこへキアシシギたちもやってきてバスタイム。

以前見たアオサギの入浴シーンを思い起こさせるキアシシギの入浴シーンです。何がどうなってるのか分からないポーズは、どうやら仰向け状態で嘴が上を向いているようです。

ヒュイー、ヒュイーというキアシシギよりちょっと低い鳴き声、対岸の岸壁にチュウシャクシギが2羽。それに答えるようにコアジサシも鳴いてました。

右岸にいる少年から、フラッグを付けたキアシ見ませんでしたか、との質問。カメラをチェックしてみたけどフラッグを付けたキアシは写っていませんでした。

入浴していたキアシシギたちは夙川の河口の川上側へ移動、かなり近いですがやはりフラッグは付いていません。

4年前に男里川河口で一日で2羽のフラッグを付けたキアシシギに会って以来、キアシシギに限らずフラッグを付けた渡り鳥とはとんとご無沙汰ですが、渡り鳥の生態に興味を持つ少年が頼もしいです。