米朝ばなし

米朝ばなし (講談社文庫)

実に楽しい一冊です。昭和56年の発刊ですが、読むのが惜しいくらいです。大阪の街々ごとに、その街が登場する落語を紹介してくれます。

ご近所、高津は「高津の富」、鴻池家があったという今橋では「鴻池の犬」、天満はもちろん「初天神」。北新地は、先日、桂文三さんに聞かせてもらった「莨の火」でした。

おなじみ「鷺とり」の舞台は、なんと太融寺の近く円頓寺にあった池だそうです。扇町通と新御堂筋が交差する曽根崎東交差点あたり、阪急梅田から5分くらいのところです。帯に鷺を何羽も挟んだ男は、ここから四天王寺さんの五重塔まで、Google Mapの距離測定ツールで測ってみると、約5.5kmを飛んで行ったことになります。

堺筋の中之島を渡る難波橋にいる三越みたいなライオン、何故あそこにライオンがいるのか?中之島に架かる16の橋が見渡せ、シシジュウロク、に因むそうです(^ ^)ゞ

大名の蔵屋敷が並んでいた中之島では「胴切り」、大名屋敷の中間部屋での博打でスッテンテンになって自暴自棄になった男が、通りがかった田舎侍に悪態をついて無礼討に。見事、胴と足に切り離され、胴は風呂屋の番台で楽して稼ぐ、足は麸踏みをして稼ぐ、麸屋のオヤジは、「メシは食わんわ、よそ見はせんわ、あんなええ職人おまへんで」といういささかブラックなお話。

最近聞く機会のあった「らくだ」というこれもブラックなお話ですが、みんなに嫌われフグに当たって寂しく死んでしまった「らくだ」氏の貧乏長屋は賑町、今の谷町六丁目だったようです。自分が昼間ずっといるエリアです。

米朝師匠のブラックユーモアのセンスはなんとも言えない味があります。それとシモネタも最高なのですが、同じシモネタでも汚い方のシモネタで、おならの臭いがどれだけ長持ちするか、御堂筋を南へ向けてマラソンをするという小噺を思い出しました。殆どは淀屋橋や本町でリタイヤするのですが、難波まで来てもまだ臭い奴がいる、はて?