おじいちゃんがいた

金曜日の夕方、まだ日は高く、ちょっと早すぎるかな、と罪の意識を感じながら、いつもの立ち飲み屋さんのノレンをくぐりました。

新たまねぎのサラダとか春を感じながら飲んでいて、ふと目をあげると、向かいのカウンターに80は超えていると思われるおじいさんがひとりで飲んでいます。

面長の顔に懐かしい黒いソフト帽と細い横長フレームのメガネ、160cm足らずのひょろっとした体格、でも背をシャンと伸ばして、厚手のカシミヤと思われる濃い茶色のオーバーコートの襟にダンヒルぽいチェックのシャツを覗かせていて、メチャカッコいい。

生ビールをおいしそうに召し上がっています。そう、瓶ビールとか、熱燗とか、焼酎のお湯割りとかじゃなくって、やっぱりカッコいい飲み物は生ビールです。

よっぽどお声がけしようかと、思ったのですが、今日のところは、このおじいさんのカッコいい飲みっぷりを、独りで肴にさせていただきました。

もう亡くなって30年くらい経ちますが、イメージが自分のおじいちゃんそっくりです。祖父は80過ぎても技術者として嘱託でサラリーマンを続けていた人ですが、嘱託なので、5時頃には家に帰っいて、サントリーレッドのソーダ割りをちびりちびりとやってました。

二言目には、わしゃ外食は嫌いや、と言っていたのですが、今考えると、そんなことを言うということは案外、この立ち飲み屋のカッコいいおじいちゃんと同じように、帰り際に飲んでたんじゃないかと思われます。