生駒のスーパースター

植物への興味をどっぷり深めてくれたマルバマンネングサの季節です。去年と同じ河内長野の流谷を訪ねるつもりだったのですが、土曜日は梅雨の中休みのような予報だったのが一転、くもりマークばかりが並んでしまいました。検索しているとずっと近場の生駒山麓の額田谷でマルバマンネングサの情報を見つけたものの、こんどはお天気が回復してきて広くて明るい流谷か、狭くて陰気な額田谷か悩みます。

まだどっちに向かうか決めかねたままとりあえずウチを出て、近所でコーヒーが一番美味い珈琲亭のモーニング。

上本町駅で奈良方面の1番線か難波方面の2番線かまだ迷って、漸く830円かかる高野線の天見に対し360円で行ける額田に決めて1番線へ。大和西大寺行普通が出たばかりで、次は奈良行急行、その次は東花園止まりの普通、さらに名古屋行ひのとり、そしてやっと大和西大寺行区間準急、待つこと15分、ホームのベンチでボーッと座っていたらシオヤアブがやってきました。

やっと乗れた区間準急は待った甲斐があってLCカー、青い電車です。青空が広がり二上山までくっきり見えるものの大和葛城山の山頂付近は雲に覆われています。

額田に到着。志摩スペイン村のラッピング車両で車番は5601ですが形式は5800形だそうな。小豆色とベージュの近鉄標準色よりこのブルーの方がこの車体に似合ってると思います。

1年ぶりの額田、踏切で1026形1129編成のならしかトレインを見送り、踏切脇の35.7‰の勾配標を撮っておきます。

登り道

踏切を渡るといきなりの急勾配。スタスタと登って行く近所の人らしい高齢者に対し、自分は息をつきながら一歩ずつ確実に。

重願寺の手前を右の坂道に進むと枚岡公園ですが今日はまっすぐ進みます。額田駅前の標高は75m、この三叉路は112mで距離は280m、計算してみると平均斜度はパーミル換算で133.33‰、近鉄奈良線の4倍近い勾配です。

川の流れがゴーゴーとずいぶん激しくなってました。乗ってきた電車内で、けいはんな線でがけ崩れが発生、新石切より先が不通との案内していたのを思い出しました。けいはんな線生駒トンネルの出口付近にがけ崩れが起こるような場所があるのかと調べてみると、がけ崩れは生駒山地じゃなくて矢田丘陵のトンネルで、東生駒の車庫の裏側で発生と分かりました。

竹藪のアジサイ。

葉っぱがガサガサっと動いてました。よく見ると葉っぱの陰にいたのはメジロ。

堰堤の滝の水量がすごい。いつもの水量はこれくらいです。先へ進むには左手の石段を上ると行けそうですが、かなり急なので一旦引き返します。狭くて陰気な額田谷ですが、なぜか生命の息吹を強く感じさせます。

重願寺の三叉路からまっすぐ入ってきたところから左の坂道を上り右折すると住宅地、その先住宅が途切れると山道に変わります。

水量がすごくなっていた堰堤脇の石段を上がるとここに出てくるようです。

滝が轟轟と流れていた堰堤の上はウソみたいに穏やかな広い空間が広がり、水の流れがゆっくり蛇行しています。

イマイチ美しくないハンゲショウにムカデ。ベージュの斑点の黒い虫はクロハナムグリ。

ピンクの花はテンジクアオイの一種かと。

川の流れが穏やかだったのは堰堤の上だけ、また一気に激しくなり、鳥の声が聞こえなくなるくらい轟轟と流れています。この谷は額田谷、渓流は川の名前を調べる地図で長尾渓と分かったものの「ながおだに」か「ながおけい」かは不明。

目の前にオニヤンマが止まってくれました。でっかいです。生駒のスーパースター!

ちなみに自分的に生駒のアイドルはニホンリスですが、まだ1度きりしか会ったことがありません。

長い時間じっとしてくれているので、ちょっと角度を変えてみると、翅の縁は厚みがあって黄色い。

竹の柵に挿されたダリア、じゃなくてよーく見るとアートフラワー、ぱっと見分からないほどの出来栄えです。

アジサイに囲まれたダリアのアートフラワー、なんかすごくしっくり馴染んでます。

オレンジの花はヒメヒオウギズイセン。

花びらの大半が枯れてしまったユキノシタがいっぱい。ユキノシタの情報と並んでマルバマンネングサの情報があったので、付近をさんざん捜索したのですが見つかりませんでした。

道が川になっていて男性が整備作業中。訊ねてみると、どうやら先へ進めそうです。

坂道に沿ってところどころにお寺や石仏、お寺は民家そのものをお寺にしたもので人気が感じられず多くは廃寺になっているようです。

轟轟と音を立てて流れる渓流。連続した小さな滝のようになった階段を登ります。すれ違う人は全くいなくて不安が募ります。よほど引き返そうかと思いつつとりあえず長尾の滝まで行ってみます。

携帯の電波は棒1本立つだけも何とかGPSで現在地を確認するとまだ結構ありそうです。生駒山中でクマ出没の情報は聞いたことが無いもの、もし出てきたらどうしようと考えながら歩いてました。どこまで行ってもマルバマンネングサは見当たりません。

ジムニーが停められていました。ここまでクルマで登って来るには軽の四駆は唯一の選択肢かと。

その先に農業用のモノレールが敷かれ、終点に資材運搬用の車両。

長尾の滝に到着。滝の上に見えるのが天龍院。息をつきながら長い石段を上ると天龍院の境内、社務所のご住職らしきに断って縁台に腰掛けるともう立てなくなりました。

正面にはもうひとつの滝、こちらが雄滝で川下の大きい滝が雌滝です。天龍院は明治時代末期に建立された修験道の寺院ですが、雄滝の脇に立つ像は慈雲尊者飲光(おんこう)でこの地に14年間隠棲していた江戸時代後期の僧ですが修験道とは関わりがないそうです。この間ご住職(たぶん)以外に誰もやってきませんでした。

天龍院からさらにさらに階段が続いていてあじさい園や生駒山上へもつながっているそうですが、この先の道はさらに険しくなることが想像でき、ここまでにします。

社務所のご住職(たぶん)にマルバマンネングサという黄色い星型の花はご存じないですかと訊ねてみたもののご存じないようでした。長い石段を慎重に下ります。

下り道

スジグロシロチョウが夢中で吸っている蜜はハエドクソウ、ハエ取り紙の原料になる植物ですが、スジグロシロチョウは平気なようです。

登ってくる時はひとりも人に合わなかったものの、ここに来て山から下りてくるハイカーさんたちがチラホラ。皆結構しっかりした装備です。道を譲り先に行ってもらいます。やっと人がぜんぜんいなかった不安が消えました。

アジサイの葉っぱを移動中のカタツムリ。

美しいブルーのガクアジサイ。なぜか松の枝にネムノキの花が載っかってます。周囲を見渡してもネムノキは見当たりません。

小さな滝が並ぶような階段は来る時と同じ。いつもの安全靴のようなウォーキングシューズで今日は大正解です。

無事滝の道を下りきって振り返ると涼しい風が気持ちいい。

小さなお寺の入口に5mmくらいの小さなオレンジ色の花、じゃなくてキノコです。ヒナノヒガサと思われます。この脇に立てられた石碑には李さんとか朴さんとか韓国の人の名前がびっしりと刻まれています。

バイクが滝の道を登って行きました。続いて軽トラも。ジムニーでなくても登れるようです。フリル咲きのアジサイ。

飛び立ったところのキアゲハです。

漸く民家が見えてきました。さっきのキアゲハがずっと案内してくれました。

ヒメオウギズイセンまで戻ってきました。

ダイコンソウです。アブラナ科のダイコンに葉っぱが似ているためこの名が付くもののバラ科の植物です。

シダが美しい。

堰堤の上の広い空間まで戻ってきました。ネギ坊主のような薄紫の球体はニンニクの花のようです。

東大阪市山手町の眺めです。真正面の三角錐は高取山、その左手は須磨アルプス。

花園ラグビー場の向こうにあべのハルカス、右手の高層ビルは府庁の咲州庁舎。川になった道はキツかったものの天龍院までの往復で一番勾配のキツいのは額田駅周辺だと思います。

額田駅に到着。肉の森田屋でコロッケ弁当を買って帰ろうかと思ったけど、もりや水産のサービスセットにまだ間に合うと分かり小阪へ向かいます。

大好物の甘い卵焼きです。マルバマンネングサは見つけられなかったけどオニヤンマに会えたのでOK。