山の辺の道の春

山の辺の道へ、5年前の秋まだ桜井線に105系が走っていた時以来です。近鉄てくてくマップを改めてチェックしていると近鉄あみま倶楽部アプリでスタンプラリーを楽しめると分かり事前にインストールしておきました。踏破賞をもらうには13.8kmの石上神宮まで行かなければならず、そのつもりは無く、桜井駅から長岳寺までの8.4kmを目指します。

ひな祭りの日は上本町駅3番線と4番線に5200系が並んでいたのですが、今日の8:30伊勢中川行急行は5200系も9:14松阪行快速急行はロングシートの2800系、3月13日のダイヤ改正のせいかも知れません。それにこの間上本町駅3番線が廃止されたので、中川行急行は5番線です。

八木駅で窓の向こうに12400系、5200系より10年も古い特急車両です。車内を覗くとシートがリクライニングしない他はこちらと大差無いです。桜井に到着、スタンプラリーのチェックポイントなので最初のスタンプをゲット。

All you need is love♪

桜井駅南口に見つけた絵都蘭世(エトランゼ)という喫茶店でモーニング。トーストやサンドイッチの他に「大和の茶粥」を見つけテンションが上がりました。卵焼き、梅干し、塩昆布など10品ものおかずが付いてきてビックリ。祖父が奈良の出で、子供の時の朝ご飯の定番だった「おかいさん」、ウチのおかいさんはもっと黄色だった気がしますが味はほぼ同じです。こんなに豪華な茶粥セットにコーヒーがついて何と550円。

粉茶を入れた布袋を鍋にひっかけてグツグツ煮込んでいた祖母の姿が目に浮かびます。欲を言えば、子供の時のようにおかき(かきもち)とさつま芋のふかしたのをのせてみたい。祖父のコーヒーは粉末のネスカフェだったことも思い出しました。

壁には花がいっぱい咲いた長谷寺。流れるBGMはLucy In The Sky With Diamond、Strawberry Fields Forever、All You Need is Loveとずっとビートルズ、常連になりたいお店です。

ちなみにこのブログのドメイン名foolontheweb.netはThe Fool On The Hillのモジリ、「丘の上の愚か者」ならぬ「ウェブにひとり立ってるアホ(変わり者)」あるいは「上町(台地)のへんくつなオッサン」といった意味です。

店頭にクレマチスの鉢。道路を渡った駐輪場前の植栽にはスノーフレーク。

駐輪場の脇を入ると桜井線の小さな踏切、カーブした線路の向こうに三輪山。振り返るとカーブした線路が近鉄をくぐり桜井駅。10分も待てば227系が来るはずですが、105系がやってくるシーンをイメージするだけにして先へ進みます。

道端にツルニチニチソウがいっぱい。

大きな木造建築は桜井高校の講堂、明治37年の建物だそうです。頭上に鳥たちの陰が見え、しきりにさえずりも聞こえてくるのですが見つけられず。

粟原川を渡る小さな鉄橋脇の小さな踏切が鳴り出し、やってきたのは8連のアーバンライナー。背景は忍坂山(おさかやま)292m、別名外鎌山または朝倉富士。

ひのとりよりカッコいいと思うアーバンライナー、西ドイツ国鉄ルフトハンザエクスプレスの403形を意識したと思われるデザインですが、403形はとっくの昔に引退しています。

桜井高校からは剣道部のバチバチと竹刀を交わす音、キエーーーと大きな掛け声が響いてきます。校内にもうひとつ古い建物、昭和16年築の文化部室(旧藤桜会館)だそうです。

水路が伸びていてその先に忍阪山。

海石榴市から大神神社

電線でイソッチがいい声で鳴いてます。自分のイヤーワームは茶粥を食べて以降ずっとAll you need is love♪

大和川(初瀬川)に出てきました。遠景は三輪山467.1m。佐保川から分かれた大和川上流部が初瀬川(はせがわ)です。

初瀬川右岸の土手にはまだぼんぼりが残されていて、桜も十二分に美しい。

屋根の上でイソヒヨドリがクマバチとにらめっこ。

仏教伝来の地の碑、第29代欽明天皇の治世、百済から仏像や経典が献上されたのが日本での仏教の始まりだったと日本書紀に記されているそうです。欽明天皇の都、磯城島金刺宮(しきしまかなさしのみや)がこの付近だったらしく、期せずして日本の首都めぐりになってました。

シダレザクラと忍坂山。れんげ畑のレンゲです。

海石榴市(つばいち)の案内板、難波宮から大和川(初瀬川、もしくは泊瀬川)を遡って運ばれてきた物資が商われた日本最古の市です。貨幣経済が成立するずっと前のこと、Paypayも信用貨幣もなく物々交換のマーケットです。

案内板があるだけで何ら史跡も無い海石榴市ですが、海石榴市観音堂が唯一海石榴市の名を残しています。いつ頃建立創建されたものか調べても出て来ないものの、古代のものではないはずです。

古代の海石榴市、桜井市金屋の町並みです。平安時代以降は伊勢参りや長谷寺への宿場町として賑わい、紫式部や清少納言も訪ねた頃の面影が少し感じられます。

さほど古いものではなさそうですが井関農機のホーロー看板。

クマバチが多いです。耳元をブーンと飛ぶとビビりますがスズメバチと違って温厚なハチです。かなり長時間ホバリングしてくれるので飛行シーンを撮るのは難しくありません。

キランソウ、高血圧、解熱、下痢止めなどに効く薬草になるそうです。

ホーホケキョが間近、なんとか捉えたカットです。ピンボケですが、画面真ん中にくるようにトリミングしています。

金剛山と大和葛城山をバックに畝傍山と耳成山。目障りな電線はPhotoshopで削除しています。

大神神社拝殿、三輪山が神体山なので本殿がない日本最古の神社です。

参拝者休憩所と参集殿をつなぐ渡り廊下をくぐったところで茶色い蝶、ムラサキシジミです。

じっくり撮らせてくれました。飛翔すがたもその影もバッチリ撮れていてビックリ。

狭井神社から檜原神社

大神神社摂社の狭井神社。ふたたびムラサキシジミ登場も翅を開いてくれず。

人が多いのはここまで、この先はほぼハイカーばかりになります。大神神社がスタンプラリーのチェックポイントだったのですがチェックインし忘れたことに気づきました。

ウマノアシガタとクサイチゴ、どっちもいっぱい咲いてます。

狭井川の細い流れを渡ったところの月山日本刀鍛錬道場記念館が無料開館されていたので入ってみました。展示室の他、鍛冶場も見学できます。

鎌倉時代に山形県月山で起こった刀工の一派、月山流が幕末に大坂へ移り、人間国宝、月山貞一氏によりこの地に道場が構えられたそうです。

岩坪池からの三輪山。ナナホシテントウみっけ。

山菜そばには欠かせないワラビとナムルになるゼンマイ。

杉に囲まれた石畳を抜けると三叉路、前回ここで坂道を下る方向へ曲がってしまったのが大間違い。山の辺の道は坂道を上る方向、ストリートビューに見える道標の←玄賓庵が山の辺の道です。

オレンジ色の小さなきのこはヒメダイダイダケで間違いなさそうです。

柿本人麻呂の歌碑

古の人の植えけむ杉が枝に 霞たなびく春は来ぬらし

はるかな古代から既に杉が植林されていたとはビックリです。「古」のプレートはだいぶ前に開催されたイベントの時のものと思われます。

漸く檜原神社に到着。

お茶屋さんでランチ、にゅうめんのセットに三諸杉。動物性タンパク質はご飯にかかったふりかけのちりめんじゃこと、にゅうめんに入ったかまぼこの欠片だけでほぼ99%精進料理。

お茶屋さん前の畑にはスノーフレークがいっぱい。

山の辺の道から少し外れて井寺池へ。井寺下池から二上山。朝がおかいさん、昼がほぼ精進料理ではやはりパワーが出てきません。動物性タンパク質が欲しい。

川端康成揮毫の倭建命の歌

大和は 國のまほろば たたなづく 青かき 山ごもれる 大和し 美し

山の辺の道を象徴する歌碑です。以前ここでアオモンイトトンボやエナガなど小さな仲間たちに会ったことが思い出されるポイントですが、今日はお弁当食べてるお姉さんだけでした。井寺上池から三輪山。

相撲神社から長岳寺

先へ進みます。鮮やかなフリージア、葉桜も美しい。檜原神社でもスタンプラリーのチェックインを忘れたことに気づきました。

トキワマンサクはこの道にはちょっと派手すぎ。ボケの茂みにメジロが隠れています。

無人販売所が増えてきました。アヤメの一種ダッチアイリスです。

これもハデハデ、アネモネです。

相撲神社200m→、とあったのでちょっと寄り道してみると第12代景行天皇纒向日代宮跡の碑、ここも日本の首都だったようです。日本の首都の一覧表以前の都です。

谷に広がる纏向遺跡、邪馬台国の最有力候補地です。山の辺の道を何度も歩いているのに、邪馬台国がこんなに近くにあるとは知りませんでしたが、歴史公園として整備された吉野ケ里遺跡と比べるとかなり地味です。

当麻蹴速(たいまのけはや)と野見宿禰(のみのすくね)による第11代垂仁天皇天覧相撲が行われたことに由来する相撲神社、広い境内にぽつんと小さな祠が立っていて、徳勝龍の令和2年初場所優勝記念碑も。

奈良市出身も高取町の生まれ、宇良と同じ木瀬部屋、岸和田の相撲道場まで通っていた知り、さらに親近感を覚えます。去年の秋場所で引退も「私なんかが優勝していいんでしょうか」という優勝インタビューは記憶に新しいところ。

境内の片隅にウマノアシガタがいっぱい。

ザ・山の辺の道です。熊野街道まで行かなくても太古の昔の日本の道を体験できる山の辺の道ですが、すれ違う人や追い抜いていく人に殆どインバウンドさんはいません。

石積の隙間に体が白いニホントカゲ。

シダレザクラから三輪山を振り返ったところ、足元には額田王の歌碑

うま酒 三輪の山 あおによし 奈良の山の 山の間に いかくるまでに 道のくま いさかるまで つばらにも 見つつ行かむを
しばしばも 見さけむ山を 心なく 雲の かくさふべしや
反歌
三輪山を しかもかくすか 雲だにも 心あらなむ かくさふべし也

額田王も同じ場所から三輪山を振り返ったものの、その日は今日のように晴れ渡っていなかったようです。反歌とは補足の意です。

坂を上って下りると菜の花畑の向こうに景行天皇陵。

菜の花にキタテハ、カラスノエンドウにツバメシジミ。

道端にツクシ。久しぶりに見ました。既にに成長した鮮やかな緑のスギナに囲まれています。胞子茎として生えたツクシが胞子を放出すると胞子茎は枯れて同じ場所に栄養茎のスギナが生えてくるそうです。

人気のネモフィラです。

シバザクラに金色の小さなバッタが止まっています。ヒメギスの幼虫と思われます。

杭に止まったキタテハ。小さな枝をくわえたメジロ。

第10代崇神天皇陵です。隣接する櫛山古墳の池にクサガメ。ミシシッピーアカミミガメ以外の亀は久しぶり。

天理市トレイルセンターに到着、てくてくマップによると桜井駅から8250m地点、かなりクタクタです。ここもスタンプラリーのチェックポイントと思い出しチェックイン。漸く2つ目です。もう4時を回っておりこのまま柳本駅へ出て帰ろうと思ったのですが、やっぱり長岳寺を訪ねてみることにしました。

長岳寺に入るとルリタテハ登場。

長岳寺本堂、空海の創建と伝わる高野山真言宗のお寺です。もう拝観時間終了間近なのでさっと回ってみます。

ムーシューチュー(木綉球)という樹木の花、緑色の花はこれから白くなるはず。

池の反対側から本堂、カキツバタの頃に再訪してみたいです。エナガとヤマガラ登場も撮れず。

クリンソウが可憐な花を咲かせていました。お気に入りの花のひとつです。

長岳寺を後に柳本駅へ向います。パコッと開いた花は原種系チューリップ。マップをチェックすると国道169号沿いのバス停のバスが10分ほどなくやってくると分かりました。柳本駅までの半分くらいの距離です。

上長岡と書いて「かみなんか」と読むバス停です。

時刻表を見ると2時間ヘッドの土日ダイヤで今日の終バスです。

バス停の正面は龍王山586m、三輪山より100m以上高いです。

5分ほど遅れてやってきた奈良交通62系統桜井駅北口発天理駅行のバスは貸し切り状態。久々の天理駅ではパタパタの行き先案内が今も現役です。天理駅もスタンプラリーのチェックポイントだったのにすっかり忘れてました。

平端で乗り換え西大寺駅に到着、駅ナカの「豊祝」で喉を潤して、同じく駅ナカの焼肉店で動物性タンパク質を補給。大手チェーンなのでメニューに表示されたグラム数はあるはずですが、いかんせんペラペラのお肉、しゃぶしゃぶ肉で焼肉の感じです。それにタブレットで注文して、フロア係がいるのに、番号を呼び出されると窓口へ料理を取りに行くシステムはちょっとナットクしがたいです。

ヘルスケアをチェックするとなんと28,528歩、16..5kmです。奈良公園をグルっと回って頭塔まで足を伸ばし、日が暮れてからさらに大仏殿まで往復した瑠璃絵の日は28.246歩で20.6km。同じ歩数で距離が短いのはアップダウンを繰り返す坂道や、石畳や森の中の歩きにくい道を狭い歩幅で歩き続けたためと思われます。ふくらはぎが痛いものの、色んな花や蝶に会え、古代の息吹をたっぷり感じられ、満足度は高いです。