咲くやこの花

早朝でもなく、標高の高い場所でもなく、クーラーの効いた中で草花を観察できる場所が大阪市内にあることに気づきました。鶴見緑地の咲くやこの花館です。

浪速区や此花区の区名が由来する古今和歌集の王仁(わに)の歌、

難波津に咲くやこの花冬ごもり 今は春べと咲くやこの花

に因む植物園、花博EXPO'90の大阪市パビリオンだったそうです。国営の万博公園と違って今も大阪市営、自分は条件を満たしているので、天王寺動物園や長居植物園同様に無料です。

鶴見緑地

自分のブログを検索してみたところ、鶴見緑地のブログは2件しか見つからなかったけど、もっと来たことがあるはず。いずれにせよ4年半ぶりのようです。

蓮池や水田があったはず、咲くやこの花館とは逆、中央口から右手の門を入り里山の道を抜けると自然体験観察園、大きな葉っぱの陰にコウホネがたくさん咲いてました。

古代米の稲にイナゴがしがみついてました。ひらひら舞っていたコミスジは地面に着地。

10cm以上もある大きな実がたわわにみのった木はカリン、さくらんぼサイズの実はナツメ。どちらもお菓子や生薬になります。

自然体験観察園を抜けると風車の丘にでてきました。コキアがいっぱい並んでます。今日明日と夜9時までコキアのライトアップをするらしく、係の人が準備中です。

風車の手前に色んな色の花がびっしり、ジニア(百日草)です。色が多すぎて遠くからだとあまり綺麗に見えません。

ジニアにキアゲハ。

バラ園からの眺めです。と、上空をコバルトブルーの光が横切っていきました。もちろん写ってませんが、陸の上を飛ぶカワセミは久しぶり。

バラ園から坂道を下りると滝があって川が日本庭園へ続いているのですが、この川の水がいつ来ても汚いです。4年半前と変わっておらず、それに公園管理の人たちも多く見かけるので手入れが行き届いていないのではなく、水源や公園の構造自体に原因がありそうです。

日本庭園の池のスイレンは綺麗です。日本庭園とは謳っているものの池の脇に茶室がある程度で、万博公園のそれとは比べようも有りません。池の端でカメラを構えている人の後ろから眺めていると、向こうからチョウトンボ、と教えてくれました。ちょっと滑舌の良くないおじいさんで、話の半分くらいしか聞き取れなかったけどオニヤンマもいたらしい。おじいさんがカメラのモニタをみせてくれたらオニヤンマじゃなくて、ギンヤンマ。分かっていながらの勘違いのようです。

タイワンウチワヤンマです。水は綺麗じゃないけど、スイレンがほんと綺麗、水清ければ魚棲まずとも言うので、カワセミを探してみたものの見つからず。

自分もなんとかギンヤンマが撮れたものの、さっきの滑舌のよくないおじいさんの方がよほど写真が上手いです。

しつこく咲いているアジサイにベニシジミ。

同じ方向じゃなくてあっち向いたりこっち向いたりバラバラのヒマワリ。

大池の真ん中を泳いでいるのはどう見てもオナガガモ♀、怪我をしたのか、シベリアに渡った仲間たちと離れ、ひとり酷暑の大阪で過ごすオナガガモです。

ようやく咲くやこの花館に到着。エントランス前の池にもスイレン。

柱頭の赤いコウホネ、オゼコウホネと分かりました。オモダカは大阪城の人工川でも見られます。

熱帯雨林植物室、熱帯花木室、乾燥地植物室

花びら周囲の毛が長いアメリカアサザ。

オオオニバスが浮かんでます。葉っぱ毎に真下に根が生えているんじゃなくて、水中の茎で大きな葉がたくさん繋がっている様子がよく分かります。つまりかなり巨大な植物です。スイレンも同じ構造と分かりました。

オンシジュームの一種です。バニラのような甘い匂いを振りまいているのはオンシジウム・シャリーベイビー。

色んな品種のハイビスカス。

温室から出たところ、ここでも牧野富太郎博士登場。スイタグワイ、なにわの伝統野菜ですが、学名はSagittaria trifolia L. forma suitensis MakinoとしっかりMakinoが入ってます。

真ん中の背の高い大きな葉っぱがスイタグワイで、周りにも面白い葉っぱ、名前が掲示されていないのですが、コエビソウと分かりました。

温室に戻ります。温室ではあるものの外より涼しいです。

食虫植物の代名詞、ウツボカズラ。パパイヤがたわわに実っているもののまだ青い。

パロボラッチョ、日本名トックリキワタ、直径1.5mくらいあります。palo borrachoを訳すと酔っぱらいの木となります。

2枚だけの葉っぱを千年以上伸ばし続けるキソウテンガイ。

高山植物室

室温がぐんと下がって心地いいです。

高山植物の女王、コマクサです。白いコマクサは初めて見ました。ピンクのコマクサは確か高校生の時、白馬岳で見た記憶があります。

白緑色の小さく枝分かれしたコマクサの葉。

ガガブタにちょっと似た花はシラヒゲソウ。ガガブタとは生育環境も分類上も全く異なります。

ミチノクコザクラとヒメエゾムラサキツツジ。

カワラナデシコとリュウキンカ。

クロユリとエゾルリソウ。

ハクサンオミナエシとチシマルリオダマキ。

チシマウスユキソウ、礼文島のレブンウスユキソウの仲間です。白い密集花はシモバシラソウ。

本家エーデルワイス、セイヨウウスユキソウです。これだけの高山植物が一度に見られる期間は限られているはず、暑くても来て良かったです。

アルプスの咲くやこの花難波津に 猛暑もものかと咲くやこの花(オソマツ)

牧野プランツ

高山植物室を抜けると極地植物室、ぐんと室温が下がり寒いくらいですが、さすがに展示された植物はわずか。そこを抜けるとさらにパネル等の展示。

牧野富太郎博士が命名した植物3点からオオボウシバナ、パッと見て分かるようにツユクサの仲間です。マルバマンネングサはこちらでどうぞ。

牧野博士のムジナモ植物画、ムジナモ実物の陰にはヌマエビ。

咲くやこの花館に展示されている牧野プランツの一覧です。なんとコマクサも牧野博士の命名です。「らんまん」でも北アルプスロケとかあるのかもしれませんね。

さらにヒメコウホネも牧野プランツです。コウホネとヒメコウホネの違いが気になりました。調べ直してみるとコウホネの葉が長楕円形で気中葉に対し、 ヒメコウホネは円心形で浮葉形、という説明が分かりやすいです(参考)。深泥池のはヒメコウホネ、今朝の自然体験観察園のはコウホネで間違いなさそうです。

帰りがけINFORMATIONカウンターの人に極地コーナーは何度くらいですか、と尋ねてみたら、極地コーナーまで走って温度計をチェックしてきてくれました。18〜20℃のようです。

咲くやこの花館から鶴見緑地駅まで炎天下の850mが辛かった。近道して花博通に出たのが失敗。

今後乗る機会が増えそうな長堀鶴見緑地線です。京橋で途中下車してプファー。