城崎・鎧(後編)

承前、兵庫県美方郡香美町香住区鎧にいます。

鎧港のサンバソウ

船を引き上げるスロープの海に浸かっているところに10cmくらいの魚たち。全体に斑点が散らばっていて赤い目、胸鰭あたりに黒い班、クサフグです。

水族館にいるようなシマシマの魚、イシダイの稚魚、サンバソウです。

クサフグがいっぱい。横になって泳いでるのも。

岸壁の下にもクサフグ、この角度だとフグらしい体型がはっきり確認できます。

何と港の一画に滝、その上にレンガ造りの水路、小さな水力発電所があったそうです。

赤灯台が海面に映り込んだ港の西側からの眺めです。両側が断崖の岬に囲まれた天然の良港ですが、南側の陸地も崖、明治45年に山陰本線が開通するまでは海路しかない陸の孤島だった鎧集落です。

イソヒヨドリが登場。どじょうみたいな何か、たぶんゴンズイです。

港の南側から駅へ向かって続くのはインクラインの跡、旧1番ホームから切れ込んだ貨物ホームに繋がっています。水揚げした魚をインクラインで引き上げ、貨物列車で出荷していた訳です。

インクラインの下にある小屋にはウインチが収納されていて、レンガ積みの水力発電所から電気を引いて動かしていたのではないかと推測。

中腹に見えるのは十二社神社、その真下には「Dash島」に出てくるような舟屋。

港東側の崖に穴が開いていて、穴を抜けると岩場が広がっていました。

舟屋の前からの景色もすばらしい。海の中を覗くとカニ、ガザミのようです。

ヘルメットの3人が乗ったボートが入ってきました。たぶん海上保安庁の人たちです。ウミネコが下りてきました。

あっという間に時間が経ってしまい。もう駅へ戻らなければならなりません。餘部へのハイキングコースはおろか、十二社神社を訪ねる時間もなくなりました。

来た道と同じ坂道を登ります。山側には墓地が広がっていて、亡くなってもずっと海を眺めていられるようになっているようです。坂道に見覚えのある黒い丸いもの、奈良公園の黒豆と同じモノで間違いなさそうです。シカがこの崖を下りてくるところを見てみたいものです。

何度振り返っても美しい鎧の入江です。

期待を遥かに上回る魅力的な鎧駅でした。JR四国土讃線の安和駅と甲乙付け難いです。

176Dのキハ40系が到着。手ブレがひどいので動画切り出しの静止画と音声に分けてアップしておきます。

車内はやはり満員、通路の真ん中に立ち名残惜しい鎧の入江をもう1枚。周りは見覚えのある顔ばかりです。

香住で何人か下車してボックス席の窓際に座れました。向かいには往きで海を教えてくれた女性です。うつらうつらして佐津駅で列車交換に目を覚ますとダークグリーンの列車、ん?「かげろひ」かと思いきや乗っているのは近鉄じゃなかったことを思い出しました。「瑞風」です。

ふとひとつの疑問が。城崎温泉-浜坂間はJR西日本の廃止検討対象の線区で、2020年度の平均通過人員は506で1987年度比90%減、年間運輸収入1.3億円に対し営業費用が13億、と公表されています。この数値に「瑞風」の売上は反映されているのか、という疑問です。通過人員は大したことがなくても一人あたりの売上を按分すると100人以上にも相当するのではないかと考えられます。徐行する食堂車の車窓から鎧駅の景色を眺めながらの高級フレンチを提供しべらぼうな収益を上げるのであれば、その分複雑な計算をしてでも線区の利用実績に反映させないと先祖代々美しい村を守ってきた沿線の人たちに不公平極まりないことになります。さらに、大阪からサイコロきっぷでやってきて餘部まで満員のキハで往復乗車した人たちの人数や売上の線区利用実績への配分がどうなるのかも気になります。

城崎のコウノトリ

城崎に戻ってきました。2005年までは城崎温泉駅じゃなくて城崎駅、知名度の高い温泉なのにわざわざ温泉を付ける必要はなかったかと。

城崎秋祭りは盛り上がって来てました。だんじりだけじゃなくてお神輿もあります。

城崎の飛び出し坊やは風呂桶を頭に載せたコウノトリ。

大谿川が円山川に合流する水門から土手に上ると雄大な景色が広がりました。駅西側と違って駅東側には誰もいません。温泉街からわずか100mくらいしか離れていないのに犬の散歩の人くらい。

あっ、コウノトリ。コハクチョウ同様に首をまっすぐ伸ばした飛翔はカッコいい。

河口の方へ向かっています。

レンズで追いかけると飛んでいったものの間近の巣塔にもう1羽。水門のすぐ北側です。

そーっと近づいてみます。足輪は右足が黒+緑、左足が緑+赤、コウノトリ個体検索で調べるとJ0122、♂6歳。お父さんはJ0426、お母さんはJ0017で赤石巣塔で孵化とまで分かります。J0426とJ0017のカップルには6年前に赤石巣塔で会ってます。あの時巣塔にいた卵が孵化してここまで大きくなったと感動。ちなみにお父さんは14歳、お母さんは13歳。コウノトリの平均寿命は35歳くらいだそうです。

軽トラがやってきたもののビクともしません。もう少し近づこうとしたら高い場所から白い液をブチューっと、近づきすぎはやはり危険です。

J0122は中洲の田んぼへ移動。

お腹が減ったようです。ハシボソたちとは仲良しのようです。

さっき河口の方へ飛んでいた子が戻って来たようです。

J0122はずっと採餌中。ベジタリアンのコハクチョウと違って、コウノトリは肉食、カエルやイナゴを探しているはずです。

2018年は飼育個体100羽、野生生息個体114羽だったのが2022年は飼育個体182羽、野生生息個体309羽に増えたコウノトリ、冬期湛水農法や無農薬でコウノトリを見守る地元農家の人たちのサポートが大きいです。

帰り道

お祭りはまだ続いいて、お神輿やだんじりは駅前にもやってきます。駅の隅っこに置かれた石、何も書かれていないものの私は知ってます、豊岡市のゆるキャラ、玄武岩の玄さんです。

駅前でお客さんを迎える温泉旅館の人たちは昔ながらの光景ですが、昔の幟を掲げた半纏姿じゃなくてぐっとソフトです。特急こうのとり7連満員のお客さんの一部は餘部が目的だったとしても大半はやはり城崎自体が目的地であることは間違いなさそうです。廃墟ホテルが並ぶ温泉町が増える中、城崎の魅力は何なのか、白浜だとアドベンチャーワールドのパンダがいますが、コウノトリにパンダほどの集客力がないのは円山川沿いには誰もいなかったことからも明らか。コウノトリを育む土地柄が大きく影響しているとはいえそうですが、それだけでも7両編成を満員にはできないかと。う〜ん、城崎まで来てお風呂にも入ってないので分かる訳ないか。

早めにホームに入るとホーム上からもコウノトリの飛翔。iPhoneでも撮れますよ。

はまかぜ6号が豊岡に到着、これで帰ります。往きと同様車内は満席。お風呂に入ってないので、せめてカニを、とカニ寿司を買って車内で広げたのですが、酢が強すぎてイマイチ。それにカニ寿司だけなので飽きます。やはり駅弁は色んなものが入ってるのがいいです。材料名にはカニとあるものの、どこで捕れたどんな種類のカニなのかは不明。鎧港の堤防で食べた350円の方がはるかに美味でした。

コンセントのない特急、携帯充電器で充電してもスマホの電池残量は30%くらい、真っ暗になった車窓に退屈します。城崎から大阪まで3時間弱、東京の方が近いです。姫路で半数くらいが下車。進行方向が代わり、座席の方向転換。この風習はコロナの影響を受けていないうようです。自分の席も進行方向右側から左側になりました。

せっかく海側になったので真っ暗でも車窓動画、ディーゼルサウンドを聞きながら舞子付近を通過。

サイコロきっぷを撮っておきます。券面には500円とありますが、サイコロを振る時に4,500円払ってます。それでも5,000円とは思えない充実した1日を楽しませてもらいました。旅の楽しさは使った費用とは比例しないと思います。

大阪駅に到着。淡路島を除き兵庫県をほぼぐるっと一周したきたことになります。