城崎・鎧(前編)

サイコロを振って行き先が決まるJR西日本のサイコロきっぷ、サイコロを振ったのは8月の初めでのことでした。

サイコロきっぷ

行き先と出目の確率は福井・芦原温泉、西舞鶴・東舞鶴、城崎・餘部、白浜、岡山・倉敷の5箇所がそれぞれ1/6、尾道が5/36、博多が1/36。尾道がいいな、倉敷だと四国へ渡るか、とか色々イメージを膨らませていたのに出たのは城崎・餘部。当たってから調べてみると城崎から餘部へはほぼ2時間に1本、日帰りだと城崎往復の特急も選択肢はかなり限定的で、他の行き先と較べてかなり不便と分かりました。

ネットを検索してみるとサイコロきっぷで餘部はかなりの混雑だそうな、人が多いのは避けたいので前から行ってみたいと思っていた餘部の一つ手前、鎧駅もいいなと少しひねったサイコロの旅を考えてみたものの、8月9月と北近畿は週末ごとに冴えない天気予報、さらに城崎までの特急も週末は満席ばかりだったのでずっと引きずってしまいました。有効期限は10月中、もう5,000円は諦めるかとサイコロきっぷを買ったこと自体後悔しはじめた矢先、この週末の天気予報は概ね晴れ、ダメ元で予約サイトを開いてみるとなぜか往復の指定席、それも窓側をゲットできたのが3日前のことです。

こうのとり1 0814 1058      
169D   1110 1140    
こうのとり3 0910 1152      
171D   1156 1231 1238 1242
はまかぜ1 0938 1228 1252
175D   1412 1444 1452 1456
列車名 大阪 城崎 香住 餘部
はまかぜ4 1705 1411 1348
176D   1528 1443 1430 1427
こうのとり22 1824 1530      
178D   1615 1545    
180D   1701 1632 1624 1621
はまかぜ6 2005 1716 1652    
こうのとり26 2044 1742      

関連する列車の時刻表です。城崎で一泊すれば余裕の旅程が組めるのですが、ナンチャラ割とか使ってもせいぜい2万円見当がローエンド、お風呂が苦手な自分にはあまりにもったいない。豊岡駅周辺にはビジネスホテルもあるもののサイコロきっぷでは豊岡で途中下車できません。

171D → 175D → 180D、あるいは171D → 176D → 180Dで餘部と鎧の両方を日帰りで回ることができますが、架け替えられる前のトレッスル橋ならどうしても行ってみたかったものの、コンクリート橋になった餘部にあまり惹かれなくなる一方、調べるほどに鎧にはどうしても行ってみたくなってきました。

綺麗な海以外に何もない鎧で2時間つぶせなくても、鎧から餘部までハイキングコースが整備されていて1時間ほどで歩けるらしく、とりあえず鎧へ向かうことにして、あとは出たとこ勝負でいいでしょう。前置きがずいぶん長くなってしまいましたが、事前のプランニングも旅の楽しみのひとつと言いたかった次第。

こうのとり1号からコウノトリ

こうのとり1号で出発。1時間先のこうのとり3号でも城崎から先の接続は同じなのですが、城崎で食料を確保する時間が取れます。7両編成が完全に満席。隣の席の180cm、100kgくらいのニイちゃんがおもむろに弁当を取り出すと、匂いがするかも知れませんが大丈夫ですか、と声をかけられ、美味しそうやね、と返すと、お互いイヤな人と相席でなくて良かったという雰囲気が漂いました。

西宮名塩のトンネルを抜け、しばらくごぶさたしている武田尾を通過。

篠山口を過ぎて単線になり山の中へ。並行する渓流は篠山川、こちらへじゃなくて向こうへ流れています。調べてみると加古川の支流で、感覚的に川の流れが反対方向でもこの流域はやはり瀬戸内側ということになります。

加古川線と接続する谷川に停車。接続する列車の案内はなく、調べてみると加古川線は20分前に出たばかりで次は3時間後の加古川行です。一度も乗ったことは無いものの加古川線は西脇市以南は電化されていて運行系統も分断されているのですが、加古川-谷川を直通するキハが1往復だけ残っていると分かりました。

谷川の2つ先の石生(いそう)駅は日本一低い中央分水界だそうで、近くにある水分れ公園という公園で高い山がなくても、加古川を経て瀬戸内海へ流れる水と、由良川を経て日本海へが流れる水が別れるそうです。さして遠くないのに、ほとんど縁のなかった丹波国ですが面白い場所が色々見つかりそうです。車窓からところどころに大豆畑が見えます。丹波黒豆や黒枝豆になる名産品です。

右へ左へ蛇行を繰り返す黒井駅付近の車窓、低く雲がたなびいています。この付近は霧の名所でもあるようです。

福知山城が見えてきました。小さいながら見目よい天守です。丹波というとすぐ篠山を連想するものの福知山も丹波国で、丹波国は京都府と兵庫県をまたぐ広大な地域と分かりました。平成の大合併でできた町が兵庫県の丹波と区別すべく京丹波町と名付けられたのも頷けます。

豊岡を発車、タンゴ鉄道改め丹鉄としてCIしている京都丹後鉄道のたんごリレー号が停車中です。豊岡を出て円山川が見えると向こう岸の電柱に白い影が見えたもののカメラでは捉えられず。コウノトリだったかと。

城崎到着直前、城崎大橋の向こうハチゴロウの戸島湿地の人工巣塔に白い影、コウノトリです。

城崎温泉駅に到着。満席だった列車からどっと乗客が吐き出され、跨線橋を渡るのも大変なくらいでした。みんなどこへ行くのか、若い女性が多いので何かライブイベントでもあるのか調べてみたもののそれらしきイベントは見つかりません。まさかみんなサイコロきっぷということはないはず。自動改札じゃなくて昔ながらのラッチの中の女性駅員さんに、サイコロきっぷを見せ、鎧で下りて、鎧から帰ってくるのは問題ないことを確認。

祭ばやしが聞こえ、城崎の町はちょうど城崎秋祭りの本宮の日と分かりました。いかにも城崎な情緒ある大谿川沿いの通りをだんじりが行きます。岸和田と違って綱で牽くのではなく、車輪が付いているもののお神輿のように担ぎ棒で移動させています。担ぎ手は皆、担ぐ時のクッションになる座布団を背中に背負い、警備役と思われる人たちは袴を履いた黒づくめの衣装に竹刀のような棒を持っていて、岸和田とも祇園祭とも全く異なる風情です。本宮は10月15日と決まっていて週末とは限らないのは岸和田より偉いと思うものの、お祭りが満席の特急の乗客の目的でもなさそうです。

駅近くの小さなスーパーでいなり寿司とアジフライをゲットして駅に戻ります。ドドメグリーンの113系の向こうにチラッとみえるたらこ色のキハ40系に乗車。ボックス席はひとりずつ程度埋まっていてドア脇の背に窓のあるロングシートに腰を下ろしました。やはり皆がサイコロきっぷということではなかったみたい、と思った矢先、こうのとり3号が到着すると、ドカドカっと乗り換えてきて、2連のキハは満員。今朝の谷町線よりずっと混んでます。

今日は特別に餘部までは全てのドアが開きますとの車内放送。混むのが分かってるんだったら増結すればいいのに、と思ったものの、単線で交換する普通列車は一両編成ばかりなので、これでも増結もしていたのかも知れません。通路に立っている女性が、あっ海、という歓声に、腰と首を思いっきりひねって背中の窓を見るとリアス式の入江に紺碧の海。

これだけの人が皆が餘部へ行くのか、自分と同じように鎧で下りるひとも結構いるはず、何十人も下りるようだと憂鬱だな、城崎へ戻る時も混雑は変わらず鎧からだとまず座れないはず、鎧も餘部も諦めて浜坂あたりまで行って引き返すか、やっぱサイコロきっぷに乗せられたのは失敗だったか、とか未だに悩んでいるうちに鎧に到着。ドアをブロックしている輪行のニイチャンに一旦外に出てもらって下りることができました。

鎧駅

ところが鎧で下りたのは何と自分ひとりだけ、拍子抜けと同時にグンとテンションが上がりました。たらこキハの向こうに真っ青な海、満員のままのたらこキハを見送ります。バックミラーに自分ひとり。

鎧駅の時刻表、次の城崎方面は14:30、浜坂方面は14:52、どっちへ向かうにもたっぷり2時間あります。

鎧駅の駅舎には清潔なトイレもあります。駅前のバス停をチェックすると1日3本のバスがあるものの土日は運休。自分の他にもうひとり撮り鉄さん、駅前に関東ナンバーの車が停められていました。

ホームに鎧港絶景へのちかみちと掲示された地下道があり、線路の向こう側には地下道の出口。

向こう側の元1番ホームはレールも剥がされているものの2008年まで列車交換されていたそうです。地下道出口の浜坂側にも短いホームがあり、地下道出口の海側にもホーム跡が残されていて貨物の荷捌き用ホームだったと思われるものの、元1番ホームを真ん中でちょん切る形で、上り線から分岐したせいぜい貨車2両程度の短い側線が貨物ホームに接していたものと推測。

ジャジャーン、元1番ホームからの眺めです。カンテレ「よーいどん」の「いきなり!日帰りツアー」のコーナーでたむけんさんがおばさまたちの足下に旗を差し出して、旗だけを見て歩いてきてください、頭を上げないでください、さあどうぞご覧ください、と絶景を見せるあの瞬間そのものです。

3日前の北近畿の予報では晴れマークが並んでいたのに、今朝出掛けには日中は曇りマークが並んで心配していたものの、実際に来たみたらドピーカン。曇り空だとこれだけの感動は味わえなかったかと。

元1番ホームには赤とんぼがいっぱい、ナツアカネでず。もうすぐ下りはまかぜ1号が通過するはずなので、港へ下りる前に撮り鉄を済ませておきます。

直前に通過列車案内放送が聞こえ、線路のカタンカタンとジョイント音も響いてきて、はまかぜ1号が通過。

「瑞風終点」という標識が立っています。トワイライトエクスプレス瑞風が風光明媚な区間で徐行、この標識は徐行区間の終了を示すものだそうです。

元1番ホームから鎧港への急坂を下りるとストリートビューのまま但馬漁業協同組合鎧出張所の前にアサヒ飲料とコカ・コーラの自販機、この集落で何かが買えるのはたぶんこの自販機2台だけです。

海を覗いてみます。何か大きめの魚が泳いでいたのですが見失いました。

港の中央に伸びる岸壁で先客の釣り人おふたりに挨拶してランチにします。

城崎で買ってきた「いなちらし」、香住鶴は瓶入りしかなかったのでハクツルです。美味い。

出かける前の経緯からチンタラ書いたので長くなってしまいました。以下後編に続く。