えちてつ物語

映画館に行ったのはたぶん10数年ぶりのはず。記憶に残る限り、香港でハウルの動く城(確か英語版で広東語字幕)を見たのが最後かと。

決まった時間に行かなきゃならないし、2時間前後禁煙、端っぽの席でないとトイレも行けない、周りでポップコーンむしゃむしゃとか、場合によってはいびきを聞かされるのも苦痛です。それにロードショーから半年も経つと概ねDVD化され、ストリーミングサイトで公開されるので、いつもはAmazonかiTuneばかりです。


売れない女性お笑い芸人の主人公が、友人の結婚式で故郷の福井県勝山市へ帰ってくるところから物語が始まり、漫才コンビの相方からも愛想を尽かされ、居心地の良くない実家に残らざるを得なくなり、ひょんなことから、えちてつアテンダントに職を得て、悲喜こもごもが繰り広げられます。

正直なところ、展開が読めてしまうストーリーなのですが、年をとって涙腺が緩くなった自分は、主人公が祭りの太鼓を叩くラストシーンで涙が止まらなくなってしまいました。「故郷を持つすべての人へ贈る」というのがこの映画のキャッチコピーで、その意味では十分に成功していると思います。

その故郷とは「鉄道のある故郷」、それも1日数本しかない鉄道じゃなくて、沿線住民や観光客の足として十分に機能している鉄道です。芦原温泉の芸者さんや、今やすっかり見かけなくなった自分より大きな荷物をしょってる行商のおばあさん、それに鉄ちゃんたちも登場、便利で信頼できる足として活躍するえちてつの毎日が描かれています。

2回の大事故を起こし一旦は廃止になった鉄道が第三セクターとして復活、笹野高史演じるえちてつ社長さんの「もっとお客様に寄り添った何かが必要なんじゃないか、それで始まったのがアテンダントなんだ」というひとことが、映画からも、それに実際に乗車した時のことを思い出しても、よく理解できました。


去年の春今年の春と訪ねたえちぜん鉄道、過去2回のブログでボツにした写真を引っ張り出して振り返ってみました。以下雪が残っているのは今年の写真です。

福井駅西口の首が動くブロントサウルス(訂正:フクイティタン、だそうです)、映画の冒頭シーンで登場します。でも、すぐ目の前にいるはずの福井鉄道のフクラムや元名鉄たちは、ちらりとも登場しなかったかと。

三国芦原線が田原町方面からJR北陸線を跨ぎ大きくカーブして膨らんだスペースに作られた車両基地です。映画でも度々登場し、庫内の様子も見て取れます。車両基地の福井口駅側に、小ぶりな3階建のえちぜん鉄道本社があって、これも何度も登場します。映画に登場する社長室や研修室もセットじゃなくて現地ロケと思われます。

車両基地に止まっている7000形2連がいる場所は、右手から本線に合流するのではなく、ここが車両基地一番奥のどんつきで、本線との合流は福井口駅側にあります。

訪問時にはまだ北陸新幹線の高架を間借りしていたえちぜん鉄道福井駅、敦賀方面に向かって途切れた線路と息が切れる階段です。

昨年春の時点では隣接した高架線にホームだけができていたところに、今年の春には赤いえちぜん鉄道福井駅がほぼ完成していました。新しい駅が開業したのはこの6月です。

えちてつのターミナルなのに福井駅は映画にちっとも登場しませんでした。つまり映画の制作中は工事現場で絵にならなかったようです。完成した駅も登場する続編を期待したいところですが、自分が鑑賞したのは日曜午後だったのに観客は多くなく、ちょっと難しいかも。ちなみにアテンダントさんの乗務は勝山-福井口-三国港で、福井駅へはやってきません。

走行シーンが度々登場する勝山永平寺線、保田-発坂間、真っ白な山並みは白山連峰です。

終点勝山駅の駅舎内にいい雰囲気のカフェがありロケ地になってました。勝山駅にもえちてつの無料レンタサイクルがあると分かりました。次回発坂辺りの撮影ポイントへはぜひレンタサイクルにしたいと思います。

勝山駅に保存展示されているテキ6、主人公と憧れの整備士さんとのデートはここから始まり、整備士さんの娘が登場、動態保存であることを教えてくれます。

勝山の市街地は駅から九頭竜川を渡った対岸で、自分が訪問した時は三国芦原線へも行きたかったので市街地へは行かず、駅前で福井名物のソースカツ丼を食べただけでとんぼ返りでした。映画では主人公の実家の蕎麦屋がある勝山市街の美しい街並みが何度も登場します。次回はレンタサイクルでじっくり巡ってみたいものです。

人気の恐竜博物館も勝山駅からバスですが映画には登場しませんでした。永平寺とか東尋坊とか、沿線に紹介すべき場所が多すぎるんでしょうね。やはり続編が必要なようです。

坂井平野が広がる三国芦原線本庄駅付近、当然この辺りもロケ地です。こちらはあわら湯のまち駅で無料レンタサイクルを借りて行きました。

九頭竜川橋梁を渡る6101形、えちてつを紹介するにはこの鉄橋は外せません。

えちぜん鉄道キーボは車庫で休んでいるところがチラリと登場しただけ。えちてつ最新型で、もっと自慢していい日本一可愛い電車ですが、低床ホームの整備された田原町-鷲塚針原間のみの運行、アテンダントさんも乗務しないのでしかたがないところです。

後部からの6101形と正面からの5001形、車内のアテンダントさんが見えます。ちなみにえちてつの本物のアテンダントさん、多くは、映画に登場したアテンダントさんたちより美人です。

鉄道ジャーナル最新号にもえちてつアテンダントを紹介する記事がありました。アテンダントは乗客を呼び込むための取組ではなく、萌えキャラ化の話があったものの、目先の売上にとらわれて、軸をぶらすことはしないと断った由、さすがです。