強風注意報の鳥鉄
一昨日歯医者に行ったばかりなのに、昨日の晩からちょっと歯が痛いのが気になるものの、先週二日酔いで断念した遠出を決行することにします。
行先は三重県の雲出川河口、未明の雨は上がり、まずまずの天気のようです。気象庁の潮位表サイトによると四日市の満潮は7:51で211cm、干潮は14:41で11cm、大潮といって良さそうですが、干潮時に行った前回は干潟が広がりすぎていたので、まだ潮位の高い午前中に着けばまずまずのタイミングかと。
気になるのが、松阪市には強風注意報が出ていて、日中の風速が5〜6m/s。風速6mとは砂埃がたち、紙片が舞い上がる、小枝が動く程度だそうで、まぁ心配するほどでは無さそうです。
ほぼ確実に5200系が運用されている大阪上本町7:10の五十鈴川行急行で出発。駅ファミで買ってきた好物のハムカツサンドを食べてみたところ、やはり左上の奥歯に響いてきます。ひと切れしか食べられませんでした。
名張辺りで少し降っていたものの青山トンネルを越えると晴れてきて松阪に到着すると青空が広がっていました。木造上屋に特急南紀、昭和のまんまの松阪駅です。
駅前の観光協会でレンタサイクルを借ります。今日は風が強いけど、電動アシスト付なので、だいじょうぶでしょう、とのこと。
旧伊勢街道
2年前に来た時はどこにでもあるようなバイパス道を走ってしまったのでマップで見つけた旧伊勢街道を通ってみます。松阪駅から2kmほどのところからとても趣のある道になりました。
踏切が鳴り出し、2時間に1本しかない名松線のキハ11が通り過ぎていきました。
細い用水路に小さな可動堰、現役のようです。
120°カーブに看板は鉄工所とありますが、明らかに元は鍛冶屋さんです。しばしもやすまずつちうつひびき〜♪は聞こえてきませんが、縁側がショウケースになっていて鍬や鋤が陳列されています。
道を間違ってしまいバイパスに出てしまいました。かぎろひが通過する松ヶ崎駅の踏切を渡り旧伊勢街道に戻ります。
狭い通りに面して古くて立派な木造家屋が立ち並んでいます。格別観光施設にもなっておらず、それに観光客なんて誰も歩いていません。こういう街にありがちなこじゃれたカフェとかもありません。人通り自体少ないものの植木は綺麗に刈られていて、生活空間であることがわかります。
「楽」が通り過ぎていきました。なんとなく南国っぽい建物は公民館。
格子戸格子窓が美しい。立派な蔵の立つ家も多いです。いずれも少なくとも築百年だと思います。どのお宅も京都のようなうなぎの寝床じゃなくて間口が広いです。街道に面していないところは横道から入って両側3軒くらいの家屋があるようです。お寺も街道に面しておらず横道の先です。その先は田園が大きく広がっています。
それぞれのお宅に屋号が掲げられています。はたと気づきました。自分のルーツ岸和田市下野町あたりは自分と同じ奥姓の家が今も密集しています。区別がつかないので、それぞれのお宅に屋号があり、ウチはよしのやでした。たぶんこの辺りのお宅も同じ姓ばかりではないかと推測、伊勢街道と紀州街道のクネクネ曲がる様子もとてもよく似ています。円筒形の郵便ポストと赤いデミオがこの街にとても似合っています。
雲出川河口
三渡川の橋を渡って旧伊勢街道から堤防の道を河口へ。
ミューっというシギの声が聞こえて5羽くらいが堤防の下に降り立ちました。キアシシギです。3羽が嘴が並べています。
堤防の両側に何もない道、レンタカーも考えたのですが、この付近はこういう道が多くて、対向車が来たらどうしよう、となるのでやはりレンタサイクルがベターと判断しました。
三渡川の河口、沖に浮かぶ浮島状態の島影は知多半島と日間賀島、篠島、白い灯台の向うは鳥羽の答志島かと。風がかなり強くなってきました。とても風速6m/sどころじゃないです。松阪市内でも駅周辺と地形が異なるせいか、天候や気圧の時間的な変化のせいか、たぶん両方です。
沖は波が高そうです。漕いだままだと風に飛ばされそうで、自転車を押して歩きます。
海にいっぱい並ぶ木の杭は青さ海苔の養殖です。大きな青空と風の強さを現しているような雲、ドーンと構える山は堀坂山757m。
内側に下りる道はなく、強風吹きすさぶ三渡川河口左岸の道をやっと回りきって碧川という小さな川の水門までやってきました。風は更に強く、立ってるのも大変なくらいになってきました。
風になびく青苗の田んぼにケリ、さらにキジを発見。堤防からちょっと下りて風に倒されないですみそうな場所に自転車を置いてちゃんとキジを撮ろうとしたらケーンという声が聞こえ、いなくなっていました。
上空にミサゴ、自転車のハンドルを抑えながら片手で撮ってます。一眼レフに大砲レンズではできないかと。ミサゴは30cmくらいの魚を掴んでいるものの、風が強くてどこで食べようか悩んでいるようです。
強風に抗いながらなんとか雲出川右岸河口に到着。河口の干潟にかなりの数のシギチたち。いっぱいいるのはハマシギ、嘴を砂の中につっこんでるちょっと大きめの何かもいます。その向うを歩いている長い下向きに反った嘴と腰高の長い脚、お腹は白くダイシャクシギで間違いないかと。その後ろにはメダイチドリ。
とても自転車を堤防上に置いておけるとは思えず、はやる気持ちを抑えて、一旦堤防の内側に下りて、自転車を安全な場所に置いてから、堤防の外の砂浜に降りてみました。
鳥たちが一斉に飛び立ちました。ハマシギとミヤコドリです。
たぶん自分がこれまでに撮った中で一番多い数の鳥たちが写った写真ですが、結構くっきり写っています。殆どハマシギでちょっと大きめのシギも混じっています。こういうシーンを見たくて強風の中自転車を漕いできたワケで大満足。
ハマシギたちは沖の方へ移動。
ハマシギたちは3つのグループに分かれて地面をつついています。ちょっと大きめのシギは、嘴がまっすぐ、飛んでるところを拡大すると風切羽の端が黒く、オグロシギで間違いないかと。
強風が砂を舞い上げ顔を直撃してきて痛いです。レンズを傷つけないか心配になります。
ひとりだけいた先客のバーダーさんが声をかけてきてくれました。近くに何かの死体があるんですがとのこと。一緒に見に行くと、何やら50cmくらいの大きさで、口には歯がならんでいて手のようなものがあります。アザラシではないかと思われるのですが、腐敗が激しくグロいので写真のアップはやめておきます。
ミヤコドリたちは河口中央部の干潟に集まっています。
ハマシギたちの向うに風が強いぶん対岸の知多半島がよく見えます。野間灯台辺りと思われます。すぐ近くまでトウネンが寄ってきてくれました。
大股開いて立っているポーズが可愛いです。
ミヤコドリたちが舞い上がった砂に霞んでいます。強い引き潮で、鳥たちはどんどん遠くの干潟に移動していきます。やはりここでは満潮前に来るのがベストのようです。これ以上ここで粘っても今日はしょうがないので引き上げることにします。悔しいけど大阪湾にこんなにたくさんシギチがやってくる干潟はありません。
堤防の内側の麦の穂が大きく揺れています。田植えが終わったばかりの水田からは水滴が舞い上がってきます。カラスもスズメも飛ぶ方向をうまく制御できないでいるのが見てとれます。雲出川の左岸の津市側へも行ってみるつもりだったのですが、もうちょっとそういう雰囲気ではなくなり松阪へ戻ることにします。
うな丼
風速の目安からすると、樹木全体がゆれる、風に向かっては歩きにくい、のキツイくらいなので、風速17m/sくらいかと思われます。強風注意報の基準値は13m/s、暴風警報は25m/sらしいので、この程度でビビることはないのかも知れません。
風に驚いたヒバリも草陰でじっとしています。六軒駅の南側の踏切が鳴り出したのでカメラを構えます。この辺りまで戻っきて、漸く風は緩やかになってきました。やはり風の強さには地形が大きく影響しているようです。
三渡川の鉄橋のところまで戻ってきました。時刻表アプリをチェックすると間もなく快速みえがやってくるはずです。踏切が鳴り出しました。ところが踏切の警報が鳴ったまま、いつまで経っても列車がやってきません。橋の向こう側で快速みえが止まっていました。強風で抑止がかかったようです。数分経って快速みえはゆっくり慎重に鉄橋を渡って行きました。
相変わらず人通りがない旧伊勢街道にようやくロードバイクのツーリンググループ。もうここまでくるとすっかり風は弱くなりました。
近鉄の築堤をくぐった先に格子戸の町並み案内の看板、1軒ごとのカタチを彫りこんだ凝った仕上がりです。
名古屋行急行が築堤を上って下りていきます。川を渡るためではなくこの旧伊勢街道を跨ぐためだけに築堤が盛られ立体交差になっています。なぜ踏切ではないのか不思議です。
観光協会に自転車を返してしまったものの、風も納まり空はドピーカン、帰ってしまうのはもったいなさすぎます。
松阪駅は改装工事中。名松線に乗ってみようかと調べてみたら、ちょうど行ってしまったばかり、とりあえずランチにします。自転車を返す前に見つけた鰻屋さんが気になりました。表に掲げられた値段はリーズナブル、店の構えからすると老舗っぽくまず外れることはないでしょう。
持ち帰りがメインのようですが、もう2時前で他に客はなくて調理場のある土間の奥にある座敷に上げてくれました。壁には遠藤や琴奨菊、琴欧州とかの手形の色紙、他にも相撲グッズがいっぱい飾られています。テレビはCBCテレビ、やはりここはもう名古屋文化圏です。
しばし焼きあがるのを待ちます。うな丼(松)にお銚子を一本つけました。ずいぶん久しぶりにお目にかかる国産(たぶん)の泥臭さの無い鰻、松にしたので、ごはんの中にもうひと切れ隠れています。蒸しの入っていない香ばしい関西風に辛めのタレがよく合ってます。ちなみに鰻は蒸しの入った関東風が好みではあります。歯が痛いのはすっかり治っていました。
しまかぜ
お腹がくちくなって松阪駅周辺をぶらぶらしていたらヒラメキました。駅の特急券自動販売機をチェックしてみると大阪行しまかぜにわずかな空席、5号車に4席だけ残っていてひとり席をゲットできました。しまかぜは松阪に止まらないので宇治山田からのチケットです。
松阪から伊勢市までは近鉄よりJRの方が100円も安いです。伊勢市から宇治山田までは歩いて10分くらいです。団塊グループがなぜか名古屋行の南紀に乗り込みます。所要時間は変わらないものの500円以上近鉄特急の方が安く本数は圧倒的です。
鳥羽行の快速みえは10分強の遅れ、やはり強風の影響です。単線なので遅れはずっと尾を引きます。車内は外国人旅行者が多いです。どうやらJAPAN RAILPASSがあるのでお伊勢さんへも近鉄よりJRのようです。
宇治山田駅折り返しホームの1番線にかぎろひ、今日は大活躍です。4番線の隅っこの喫煙スペースから伊勢志摩ライナー。
12200系の賢島行、そしてしまかぜ。前回は撮っただけですが、今日は乗れます。運行開始5年目だそうですが初乗りです。
柔らかすぎず硬すぎず座り心地最高の本革シート、電源コンセントはもちろんマッサージのボタンまで付いてます。前の席のおばさんが、カーテンが閉められないと四苦八苦、カーテンのボタンを教えて上げたらえらく喜んでくれました。
3号車のカフェに行ってみました。何年かぶりの食堂車です。列車自体は満席なのにあまりはやっていなかったのが気になります。やはりあまりコスパがよろしくないのが原因かと。スイスの食堂車がマクドナルドと組んでるように、どこか専門業者とタイアップがした方がいいと思われるものの、1日1往復4時間程度の営業時間ではタイアップ先を見つけるのは難しいかと。週末だけでも2往復する需要はありそうに思うのですが。
あっという間に上本町駅到着。ここからウチまで5分。しまかぜの本革シートと自分ちの汚部屋のギャップにちょっと唖然。