へんちきの花見

京都府綴喜郡井手町がどこにあるか、関西人でもご存知の向きは多くはないかと。京田辺市と木津川を挟んだ対岸で、町の中心はJR奈良線の玉水駅周辺です。井手町の玉川の桜が花見の穴場らしく、ストリートマップでチェックしてみたら小さな流れの両側にいい感じの土手の道が続いています。満開になる前に先取りしてみたいと思いつきました。人と同じことをしたくないという天神山に登場する源助同様、へんちきの発想です。

鳥見の定点観測ポイント草内から歩くことを考えてみたものの、自分の歩行限界7kmを越えてしまいそうなので玉水へ直行することにして近鉄奈良からJR奈良へ移動、JR奈良駅前の松乃家で朝定食のロースカツ定食(400円也)でエネルギー充填100%完了。

103系方向幕回転ショー

ホームに上るとちょうど103系が方向幕を回しながら入線するところ、方向幕回転ショーに鼻血がでそうになりました。区間快速大阪環状線は一昨年の秋まで走っていました。

関西線からもこの1月に103系はいなくなり、JR難波の幕ももう過去のものです。和歌山線や桜井線も出てきます。三輪行なんてあったんですね。たぶん初詣臨かと。途中の遷移がないLEDじゃなくて旅情をかきたててくれる方向幕です。

103系を運転してン十年と思われるベテラン運転士さん、まだ春なのに扇風機はホコリもなくきれいに掃除されています。

棚倉駅北側のレンガのトンネル、潜るのは山じゃなくて天井川です。玉水で下車。

井手の玉川

玉水駅南側にも天井川、上を流れるのが井手の玉川、調布の玉川と並ぶ六玉川むたまがわのひとつです。

川が鉄道を橋で渡っています。

玉川の土手の歌碑、新古今集の俊成、拾遺愚草の定家、鎌倉時代も京都奈良間の通行は多かったと分かります。

金槐集の源実朝と古今集のよみひとしらずの歌、いずれも桜ではなく山吹が歌われています。桜より山吹が見たくなりますが、山吹は桜の後です。

ソメイヨシノは開花したばかりという感じです。土手を散策する人も殆どいません。

一般公募と思われる短冊が楽しめます。

こんな気持ちいい土手道が2kmくらい続いています。穴場とは言え来週末はかなりの人出になっているの間違いなく、へんちきとしては今日の花見は大正解です。

松の枝にアオジ。土手道が終わり坂道を上ります。振り返るとメタセコイアの向こうに生駒山。

ツクシの林。

地蔵禅院の枝垂れ桜

さらに坂道を上って地蔵禅院に到着。本堂裏のハクモクレンとシダレザクラが満開。

鐘楼の脇に京都府指定天然記念物、樹齢三百年のシダレザクラ、殆ど咲いていないシダレザクラもある中、主役のこの木は五分咲きくらい。

シダレザクラだけじゃなくて色んな木の花が綺麗です。斑入りのツバキと鮮やかなボケの花。

坂を下りて樹齢三百年を下から見上げてみます。樹齢三百年のてっぺんにヒヨドリが止まりました。

このシダレザクラが生まれたのは亨保の頃、吉宗の時代です。支柱で支えられているものの手を広げたような見事な枝振りになんとも艶やかな花を咲かせています。大奥の御年寄といった風格です。

花桃とレンギョウ。後ろ髪を引かれる思いで寺を後にします。

小野小町の歌碑「色も香も なつかしきかな 蛙鳴く 井手のわたりの 山吹の花」、小野小町も井手の山吹を詠んでいます。

地蔵禅院から下りてきた石段に続く小径の右側にこの歌碑のある小町塚があります。小野小町の墓だそうです。全国各地に小野小町の墓がありどれが本物かは特定できないものの、京に近く「なつかしきかな」と詠まれたこの地の信憑性は高そうに思います。

井手の鳥たち

里山の宅急便、やはりこういう場所に似合うのはS急便ではなくヤマト、道が狭いので脇に避けたら丁寧に会釈してくれました。

立てられたばかりと思われる観光案内板、ホーホケキョがメジロなのはやはり拙い(看板右上)。

どこの里山でもお馴染みのモズとホオジロ。

セグロセキレイとアオジ。

川辺に腰を下ろし紙パック酒をストローで吸っていたらセグロセキレイ。瞬膜が撮れてました。キビタキコゲラに続いて3回目。

短冊の川柳、自分もかくありたいと思います。和泉式部も井手の山吹を詠んでます。

駅近くまで戻ってくると、土手の外のツバキにイカルが5羽くらい。暫く様子を見ていると木の陰から出てきてくれました。

葉っぱの陰に残ってるのもいます。チョコボールのキョロちゃんに似ています。

すごくいい毛並み、瞳は赤いです。

ツバキがこんなに綺麗な花だと初めて知りました。

玉川を「潜る」221系。帰り道も103系、玉水という駅名も風雅です。山吹の頃に再訪したいと思います。駅前の商店にポスターが貼ってあったのですが、井手町を舞台にロードバイクをテーマにした映画、神様の轍が公開中です。

103系撮り鉄

玉川を潜ります。棚倉手前の踏切に撮り鉄さんが数人、あそこに行ってみようと思います。

棚倉駅の木造駅舎、玉水の隣ですが井手町じゃなくてもう木津川市です。またまた103系がやってきました。

レンガのトンネルを潜る103系、その上は不動川。広々として玉川のような色気はありません。

先客の撮り鉄さんたちは踏切から線路に角度のない位置で構えているのでへんきちの自分はちょっと離れて狙ってみます。下り普通がまた103系、阪和線から移籍してきたはずの205系を今日は一度も見かけませんでした。

気持ちのいい挨拶を残し撮り鉄さんたちが帰った後、今度は自分も踏切近くから狙ってみます。さっき1駅だけ乗った103系の折り返しです。やはり皆んなと同じポジションの方がずっといい写真が撮れると分かりました。