利休にたずねよ
2010/12/04(土)
さすが直木賞受賞作品です。こんな小説読んだことはない、という構成になっています。利休の死から、どんどん話が遡って行きます。最初は少し違和感を感じたものの、人の一生を振り返るには、この方法の方が自然なはず、と受け入れることができます。
利休の命をかけた美への追求心、自分の価値観への信頼、それを裏付ける審美眼が分かりやすく伝わってきます。
その価値観が利休だけのものではなく、周りの人々を心地良くする普遍性があり、いかなる他者も美については利休を超えることが分かっていただけに、武力や政治で圧倒的な権力を得た秀吉から高く尊敬されつつも、強い嫉妬を受けた訳です。
家康、三成、ヴァリニャーノ神父、妻の宗恩、信長等が利休について語るのですが、やはり秀吉との心の格闘が最も強烈です。
かの黄金の茶室も利休によるものですが、なぜそんな下品ともいえるものを利休が創ったのかずっと疑問に思っていたのですが、その理由についても触れられており、納得できる説明を得られました。
話が遡り、まだまだ青い利休が登場するのですが、この辺になると話がいささか浅薄な感じがします。筆者の描写というより、たとえ利休であっても人生そのものが本来そうなんでしょうね。
間違いなく二回目は逆に後ろから読み返してみたくなる極めて秀逸な作品です。
何ら成功していないものの、自分の価値観をそれなりに追求してきた者としては、利休に強い憧れを感じます。