世界の考古美術
承前、布留遺跡にある天理参考館を訪ねています。
順に岩手県軽米町、秋田県北秋田市、岩手県二戸市から出土の縄文時代晩期の土偶。スノーゴーグルをかけた遮光器土偶自体東北地方発祥だそうです。雪の多い東北地方なので、北極圏に暮らすエスキモーの人たち同様にスノーゴーグルを掛けていたのではなく、目の誇張表現らしい。
北秋田市の土偶は世界遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」のひとつ伊勢堂岱遺跡から出土したものと思われます。北秋田市公式チャンネルの動画で伊勢堂岱遺跡には環状列石(ストーンサークル)が4つも残されている知りぜひ訪ねてみたいところですが、大館能代空港のすぐ近くではあるものの、羽田からANAの1日3便だけ、大阪からだと海外旅行より高くつきそうです。
紀元前4000年頃の幾何学文鉢と幾何学文深鉢(イラン)、クッキーみたいな紀元前2000年頃の楔形文字粘土板(イラク)。楔形文字は表音文字らしくUnicodeが振られていると分かりました。
かな・古代ペルシャ楔形文字変換というサイトを発見、「たすく」(自分の名前)→「𐎫𐎠𐎿𐎢𐎤」、と変換してくれました。ひらがな3文字がなぜか5文字、「た」が「𐎫𐎠」、「す」が「𐎿𐎢」、「く」がなぜか1文字で「𐎤」です。この文字には母音の「え」と「お」が無いとのことで自分の名前を変換してみた次第。
イラン出土の紀元前1500年頃の鳥文壺、古代オリエントの人たちも自分同様に鳥が大好きだったようです。
展示品は多くないもののエジプトのコーナーも。第18王朝(前1550~前1295年頃)のファラオ、トトメス4世(たぶん)の供養碑。その象形文字を拡大してみました。
象形文字(ヒエログリフ)の変換サイトもみつけました。こちらはアルファベットで「TASUKU」は「𓏏𓄿𓋴𓅱𓎡𓅱」。こちらのPDFによると「T」はロールパン、「A」はエジプトハゲワシ、「S」は折りたたんだ布、「U」はウズラのヒナ、「K」は把手付のかご、だそうです。頻繁に使うはずの母音が複雑な形状なのが不思議です。
墳墓のインテリアデザイン
世界の考古美術は一通り見終えたはずで外へ出ると、監視係のおねえさんにありがとうございましたと挨拶されてしまったので、まだあっち(企画展示「墳墓のインテリアデザイン」)を見てません、と返事して、企画展示室へ。
漢〜唐時代の死後のすみかとなる墳墓内の装飾や副葬品の展示です。
中国
墳墓のインテリアデザイン鑑賞し終えて、さっき椅子に腰掛けたオリエントのコーナーのところで正面に展示されていた仁王像のような二体の像を見逃していたことに気づき、さっきの監視係のおねえさんと目を合わせないように戻ります。
中国先史時代の彩陶と黒陶、特に後列中央の壺の描かれた壺の美しさはとても5千年も前のものとは思えません。紀元前3000年から紀元前2000年の新石器時代馬家窯文化(ばかようぶんか、甘粛省/青海省)のものらしい。
亀の甲羅や獣の骨に刻まれた甲骨文字(紀元前13世紀〜紀元前11世紀)、最古の漢字です。甲骨文字を表示できる白川フォントというのが配布されていたものの甲骨文字のunicodeは見つからず。
後漢時代(1世紀〜3世紀)の陶製明器の灰陶楽人芸人。死後も娯楽を楽しめるように納められた副葬品です。落語家のような噺家らしき姿も。
前漢後漢の銅鏡が並べられています。黒塚古墳に1枚だけ大切に埋葬されていた画文帯神獣鏡も。逆に黒塚古墳から33枚も出土した三角縁神獣鏡はここに含まれていないことがミソです。
唐代の白陶加彩胡人、長安の都にはシルクロードを越えてやってきた西方人が多く集まっていたそうな。以前読み始めて途中で挫折した永井路子氷輪に再チャレンジしています。鑑真と共にやってきた如宝が西方の人、ブハラ(ウズベキスタン)の生まれらしい。天平の奈良でも少なからず似た容貌の人たちが闊歩していたはず。
最後に夏目雅子さんの三蔵法師を彷彿とさせる黄白釉加彩騎馬女子。
一通り見終えたようです。監視係のおねえさんと目が合わないよう展示室を出ようとするも結局目が合ってしまい、中国のコーナーを見逃していたので…と要らない言い訳をしてしまいました。多くない見学者の中でずいぶん熱心に見学していた自分はやはり目立っていたようです。おねえさんにはエレベーターに案内してもらいました。
世界の考古美術をひととおり概観できた満足感があります。何が一番気に入ったかと振り返ってみるとやはり日本の土偶かな。
天理参考館をあとにして布留川です。布留川で娘が洗濯していたところ、岩や木を切りながら流れてきた剣が、洗濯していた白い布の中に留とどまっていた、という伝説に由来するそうです。向こうの山並みのどれかが布留山266m、白い龍が布留山の上に落とした剣が石上神宮の七支刀になったいう伝説もあるようです。石上神宮もすぐ近くですが、もう4時なので機会を改めます。
長〜い天理本通商店街のアーケードに天理大学雅楽部定期演奏会の旗。ウチの近所などの街角で黒い法被を着て歌を歌っている天理教の人たちを見るとどうしても敬遠したくなるのですが、見てきたばかりの天理参考館の素晴らしいコレクションや研究活動はもちろん、天理大学や天理高校の野球やラグビー、それに雅楽、天理教団の日本文化への貢献は小さくないと思います。