吉備のみち(前編)

一昨年、城崎・鎧を訪ねた時のサイコロきっぷ、去年からサイコロを振ること自体事前抽選になって、去年は事前抽選の申し込みもしなかったかハズれたかは忘れたものの、今秋もサイコロきっぷ発売という情報を得て、とりあえず事前抽選の申し込みをしたら当たってしまいました。行先と確率は、富山(1/3)、津山(1/3)、白浜(2/9)、博多(1/9)。富山や白浜、博多であれば行ってみたいことろはいくらでもあるものの、一番行きたいと思わない津山が当たりそうな気がして、津山が当たったらどこへ行くか調べはじめていたのですが、サイコロを振ったらやっぱり津山でした。

津山では「森の芸術祭晴れの国・岡山」が開催されており、どうやらそれに合わせてサイコロきっぷの行先に選ばれているようですが、どうもピンときません。津山から超ローカル線の因美線に乗って3つ目、男はつらいよのロケが行われたという趣ある木造駅舎が残されている美作滝尾駅が魅力的ですが、駅以外に何も無さそうなところで2時間過ごすことになりそうで悩みます。それに大阪から津山へは高速バスがデフォルト、わざわざ岡山経由で津山線のキハが城崎から鎧の時のように大混雑で1時間半も立ちん坊だったらどうしようという不安も頭をよぎります。

岡山で途中下車可能なので、鞆の浦や尾道まで足を伸ばしてみるか、はたまた四国へ渡るか、などと考えているウチ、最近になって俄然古代史探訪にどハマリした自分、大和、筑紫、出雲と並ぶ古代四大王国の吉備を訪ねたくなり、漸く行先決定。

司馬先生の街道をゆくを真似て吉備のみちと洒落てみます。

新大阪→岡山→備前一宮

サイコロきっぷは金土日祝だと8,000円、月火水木は5,000円なので、今日火曜日を臨時休業とし、7:50の山陽新幹線みずほ号のチケットをゲット。

余裕でウチを出てきたはずが、地下鉄のホームで乗り換えアプリをチェックすると新大阪着は7:47と出てきて焦りました。アプリの画面をよーくみると東梅田から梅田の乗り換えに10分もかかっていて、急げば1本前の御堂筋線に乗れそうです。

東梅田から梅田へダッシュ、やはり1本前に間に合い予約したリッチな指定席に座れました。サイコロきっぷの条件を調べ直してみると予約した列車に乗り遅れた場合、同日の自由席には乗れるようです。

Welcome to the Shinkansen. This is the Mizuho Super Express bound for Kagoshima-chuo... 実に久しぶりの新幹線にテンション上ります。今も自分のお取引先の多くが中国四国なのですが、コロナ以降ばったりお呼びが掛からなくなり、コロナ後もオンラインミーティングばかりになってしまいました。

岡山に到着。新幹線改札内のトイレがかなり混んでいたので西口へ。岡山のお取引先へ頻繁に訪問していた頃、この西口のロータリーに毎回迎えにきていただていたのが懐かしい。トイレの手前にあったはずと記憶していた喫煙所は見つからず。

次の吉備線(桃太郎線)まで30分以上あります。東口へ出てみると球形の噴水も桃太郎像もなくなっていました。ビックカメラへ渡る横断歩道手前にあった喫煙所がなくなり、バス乗り場前に大きな喫煙所が設置されていました。

ちなみに岡山駅は新幹線のある側がメイン、広島や名古屋とは反対なので勘違いしがちです。

改札内のドトールでモーニングしてもまだ時間が余っているのでちょっと撮り鉄。1番線には導入が始まった227系500番台「Urara」、車内は広島と同じクロスシート。山陽本線だけじゃなくて伯備線にも運用されていました。

ドドメ黄色の113系もいよいよ最後の活躍です。

10番線に移動して桃太郎線こと吉備線のキハ。さっき見つからなかった西口の喫煙所はトイレの向こう側にまだ残されていました。も〜もたろせん、ももたろせん♪

両運転台片開きドアのキハ40と片運転台両開きドアのキハ47の2連は乗れないのではと思われるほど超満員でビックリ。車内は殆どが大学生らしき若い人たちばかり、全員もれなくスマホをいじっていて超満員でもシーンとしてます。後から調べたところ服部駅最寄りの岡山県立大学の学生さんたちだったようです。

岡山駅から3つ目の備前一宮駅に到着、まだ岡山市内ですが山に囲まれた小駅です。

昨日電話で予約しておいたレンタサイクル屋さんが駅に隣接しています。直前までレンタカーを借りるつもりだったのですが、この周辺はサイクリングロードがよく整備されていると分かり急遽レンタサイクルに変更した次第。途中坂道も殆どないらしく電動アシスト付きじゃなくて、3段変速のママチャリにしました。

キハを撮って一番最後に出たので、自分の前に10人くらいのアメリカ人(たぶん)の貸出手続きが終わるの待ちます。英語だけのアメリカ人グループのリーダーさんにレンタサイクル屋のおばあちゃんが日本語でルートを説明、リーダーさんはナットクしていたようです。すごい世界になったものだと思います。

吉備津彦神社と吉備津神社

踏切を越えて駅の反対側にでると吉備津彦神社、備前国の一宮です。水の抜かれた池に囲まれた参道を進むと随神門、その先に拝殿、祭文殿、渡殿、本殿と4棟が一直線に並んでいます。

元禄10年に池田輝政が再建した檜皮葺の本殿。祭文殿と渡殿は屋根がひとつに繋がっています。

境内は平日なのに七五三の時期でもありそこそこの賑わい。

水の抜かれた池に浮かぶ亀島。池には点々と何かの足跡。

神社の背後は吉備の中山の北端部。

泥を背負ったなかなかカッコいいミシシッピアカミミガメです。

主祭神は桃太郎のモデルとされる吉備津彦命(大吉備津彦命)、推古天皇の頃の創建とされ、吉備津彦命の屋敷跡に社殿が建てられたと伝わります。

吉備路自転車道の赤いラインに沿って吉備津彦神社とは別の吉備津神社、そして全国で4番目に大きい造山(つくりやま)古墳へ向かいます。

気持ちのいい広大な空間、自動車進入禁止のサイクリングロードを進みます。さっきまで曇りがちだった空は晴れ上がり、まさに晴れの国岡山。

田園からいきなり山がせり上がっていて、古墳時代頃までこの辺りは吉備の穴海と呼ばれる海だったことを感じさせる景色です。

サイクリングロードに沿って桃太郎線が走ってます。電線でモズが高鳴き。

田んぼの中の道から山裾の道へちょっとした坂道、電動じゃないので、自転車を押して登ると吉備の中山の案内板。大和の国に対抗しうる大きな力を持った吉備の国は、備前、備中、備後、美作に分国され、備前国と備中国は吉備の中山を二つに分ける形で国境を定め、備前国の一宮が訪ねたばかりの吉備津彦神社、備中国の一宮がこれから訪ねる吉備津神社、とひとつの山に二つの一宮がある吉備の中山と分かりました。

もう11月も半ばなのに、まだ稲刈りが終わっていない田んぼが広がっています。

ほどなく吉備津神社に到着。こちらも主祭神は吉備津彦命。

吉備津彦命がここから西北8kmの新山に棲む鬼神、温羅(うら)と戦った時の矢を置いたと伝わる矢置岩だそうです。

国宝の本殿、今は備中一宮ですが、分国される前は吉備全体の一宮だったそうです。ちなみに備後の吉備津神社が福山にあります。境内は平日なのにかなりの賑わい、特に観光バスでやってきた中国、韓国からの団体が多いです。

本殿西側に総延長398mの回廊、この写真を撮りたくて、先客の七五三ファミリーが去るまでしばしスタンバイ、やっと空いたとカメラを構えると回廊から外に体を乗り出して写真を撮ってる女性グループが全然去ってくれません。ようやく行ってくれたと思ったらまだ白い服の背中だけが残っていました。

回廊からはいくつも枝道が伸びていてそのひとつは摂社の岩山宮への長い石段。高齢男性が登って行ったものの、自分はこの後古墳に登る元気を残しておく必要があるのでパス。

回廊の先端まで行ってUターン、外から見た回廊です。

弓道の的が並んでいるのはJ2ファジアーノ岡山が運営している弓道場と分かりました、矢置岩に置かれた吉備津彦の矢にちなむものと思われます。

その隣に水車、京都府立植物園の水車と違ってちゃんと水で回っているようです。

回廊の西側には枝回廊、その先は御竈殿、吉備津彦に退治された温羅の首がその下に埋められた釜で吉凶を占う鳴釜神事が行われる場所です。どんな神事かは若一調査隊がレポートしています。 

吉備津神社の西側には宇賀神社、池に張り出した松が美しい。

駐車場に置いた自転車を取りに戻り出発。毛並みはいいのに、目を病んでいるネコ。

造山古墳へ

目的地の造山古墳へ向かって再び田園のサイクリングロード。トラクターの側で作業を見守っているダイサギは、トラクターが掘り返したあとのミミズ狙いです。

川の土手に出ると遠くの山の上にお堂が並んでいるのが見えます。最上(さいじょう)稲荷と分かりました。山頂に向かって森に切り込みのような筋が見えます。戦前までケーブルカーが通じていたそうで、その跡のようです。

川の対岸の台地にも社、天満神社です。

川にはヒドリガモたち。川は二級河川の足守川、川上に緒方洪庵の出身地、足守の陣屋町があり、レンタカーだと訪ねるつもりだったのですが、ママチャリでは体力的にも今日はパス。秀吉が水攻めで滅ばした備中高松城も2kmほどですが、これも今回はパス。

さらに右手のぽっこりした山の上に堂宇が。庚申山と分かりました。秀吉の高松城水攻めの際、吉川元春が陣を構えた山で、磨崖仏が並んでいるそうです。周囲のちょっとした小山それぞれに寺社が立っていて大和でも見られない景色です。

吉備路サイクリングロードは総社へ向かって真っ直ぐ伸びているのですが、自分はここで左折。

コウテイダリア、久しぶりに見ました。

造山古墳に到着。まだまだ長くなりそうなので、続きは後編に分けます。