嵐山で花見して島原の花街へ

近所の公園も桜が満開、足が悪くて普段殆ど外に出ないようなおじいちゃんおばあちゃんたちもシルバーカーを押しながらお花見していました。桜には日本人を元気にする効果があるのは間違いなさそうです。

人と同じことをするのが嫌いで花見は桜より梅に限るなどとうそぶいている自分も人並みに桜の花見をしたくなりました。北へ賀茂川か、東へ佐保川か、南へ吉野か、西へ夙川か、さんざん迷い、人混みが大嫌いなのに、よりによって嵐山へ行ってみることにしました。

阪急梅田1号線には8300系の特急、ロングシートの車内は満員状態なので次の特急を待つことにします。8300系が発車すると1号線には既に次の特急を待つ人の長い行列。それでも前方へ進むと行列は短くなり、9300系の向かい合わせじゃないクロスシート窓側をゲット。

3線同時発車は神戸線が一歩リード、続いて宝塚線が先行も淀川を渡るまでにこちらがリード、おっ珍しく京都線の勝ちかと思いきや、十三到着直前にグンとスピードが落ちて結局神戸線の勝ち、宝塚線より僅かに先着。

嵐山を歩く

桂で下りられないかもと心配するくらい混み合った車内、なんとか外に出て6300系に乗り換え嵐山駅に到着、駅の桜も満開。改札へ向かう人波が切れるのを待って下車。

阪急嵐山駅前のソメイヨシノ、かなりの人出の駅前広場にウグイスの声が響いていました。

渡月橋は懸念したほどの渋滞ではなさそうです。

渡月橋川上と川下の眺め、比叡山の北側には尖った山が2つ、右側はこの前八瀬からも見えた横高山767m、左側は水井山794mmです。

信号のある渡月橋の北側は(車じゃなくて人の)大渋滞。桂川左岸の道は嵐電の駅方向より人が少なく歩きやすくなります。

川辺に置かれていたのはラジコンの屋形船、船頭はリカちゃん。一言断って撮らせてもらいました。

対岸に戸無瀬の滝。2年前にあの道を歩いてます。

ホーホチョケチョホイ、聞き覚えのないウグイスのフレーズ。かなり近いのですが姿は見えません。

嵐山公園亀山地区です。

濃いピンクはコバノミツバツツジ。

ソメイヨシノはまさに満開。ところどころに百人一首の歌碑。

ひさかたの 光のどけき 春の日に しづこころなく 花の散るらむ

まさに今日この日の歌。

息を切らせて急な石段を上り切ると展望台、保津峡の雄大な景色が広がりました。

対岸には「京都で屈指の貧乏寺」の大悲閣千光寺。近くにいた女性にトロッコ列車の通過時刻を訊かれスマホでトロッコ嵐山駅の時刻をチェックしてご案内しました。

保津川の河原にダイサギが下り立ちました。展望台の外の木立にウラギンシジミ。

大悲閣千光寺からこちらを撮った写真です。この写真の左手に見える案内板の表面はトロッコ列車の時刻表で、現在地はトロッコ嵐山駅すぐ近くなのに、上り列車の案内はトロッコ保津峡駅の発車時刻が掲示されていました。スマホで上り列車のトロッコ嵐山駅の時刻をチェックした自分の方が正確なはず。

ドローンが飛んでます。 展望台外の崖の木にエナガたち。撮った時はいい感じにシャッターが押せた感触があったけど、枝被りばかりでした。

上りトロッコ列車が定刻にやってきました。並木に隠れ撮り鉄ポイントとしてはイマイチ。

もうひとつの展望台へ向かうと緑色に発光しているようなハイゴケ。

メジロです。

北側の展望台です。こっちの方がずっと広く南側の展望台から数十メートルしか離れていないのに、ここまでやってくる人は僅か。川辺に並ぶ建物は星野リゾート。

上流から下りてきた舟に寄り添う青い屋根の舟はおでんやお酒を販売する売店です。

Google Earthで標高を調べると現在地は80.49m、対岸の大悲閣千光寺は97.7m。

下り列車がやってきました。南側の展望台以上に列車は木立に隠れてしまうものの、周りが静かなのでジョイント音がよく聞こえてきます。展望台の手すりにカメラを置いて撮ったのですがそれでも揺れているのはご容赦。

乗船客を守り、ふたりの船頭さんが命を落とされた保津川下りの事故から1年、復活できてほんと良かったです。

コバノミツバツツジとソメイヨシノの艶やかなコントラスト。さっき展望台で会った女性から今年はソメイヨシノが遅いのでこのコントラストが楽しめると教えてくれました。

坂道を下りると広場にケルンのような石積がいくつも並んでいました。調べてみたものの何なのかは不明。

ツバキにメジロ。

川辺に戻るとさっきのラジコン屋形船が本物の屋形船を追いかけてました。船頭リカちゃん、とてもカッコいい。

できるだけ人の少ない道を選んで嵐電嵐山駅へ。ものすごい人人人人人人。

桜のトンネル

嵐電北野線の桜のトンネルを訪ねてみることにしました。2両に増結された北野線の後部展望です。期待したほどの桜並木じゃないです。

宇多野駅で下りて、桜のトンネル付近まで歩いてみました。ひょろりと伸びた光沢のある黄色い花はウマノアシガタ。

桜のトンネル下の踏切には撮り鉄さんがビッシリ。一眼レフじゃなくてスマホの人が殆ど。撮り鉄さんたちの背中越しで全然撮れないので、桜のトンネルから踏切を通り過ぎて振り返った片側桜並木と嵐電621形です。

鳴滝駅近くの住宅街に囲まれたこじんまりとした陵墓、ちゃんと宮内庁の案内板があって鳥羽天皇皇女暲子内親王墓と分かりました。女院号宣下を受け八条院、新・平家物語にも登場しています。

オバQ顔のモボ101+モボ104で四条大宮に到着、ドドドドっと人が出ていったあとの静寂です。

レゴでできた嵐山駅が展示されていました。キモノフォレストもしっかり再現されています。

せっかく四条大宮に来たので「庶民」で休憩。まだ3時というのに満員、なんとかスペースを作ってもらいました。

島原を歩く

実は今日一番の目的地は嵐山じゃなくて島原。花と火の帝で猿飛佐助と霧隠才蔵が六条三筋町で代書屋を営んでいる場面まで読み進み、秀吉の時に二条柳馬場に公許されていた花街が関ヶ原後に六条三筋町に移され、さらに寛永18年に京市街西に位置する朱雀野に移され、島原の乱の直後だったため島原と呼ばれるようになったそうです。輪違屋や角屋といった揚屋が今も残されていると分かり訪ねてみたくなった次第です。

だだっ広い大宮通はつまらないので壬生川通を南へ南へ、全く歩いたことの無いエリアです。五条通を渡るとポツポツと島原の名前が現れ、花屋町通を西へ。

太夫の描かれた暖簾の掛けられた仕出し屋さん。

島原大門です。「だいもん」じゃなくて「おおもん」だそうです。

消火井戸と「出口の柳」、遊女たちとの別れを惜しむ場所だったようです。

大政奉還のあった慶応3年築の登録有形文化財です。京の町は荒れに荒れていた頃なのに、島原はしっかり稼いでいたようです。「嶌厡」と旧字体の提灯が掲げられた門をくぐった付近のお店は客を待たせて揚屋へ送って行く「出口の茶屋」だったらしい。

輪違屋です。現在も営業を続けている日本で唯一太夫を抱える置屋だそうですが、人気は感じられません。

10年以上前、浅田次郎の輪違屋糸里を読んだことがあります。近藤勇ら天然理心流派と芹沢鴨ら水戸派の新選組内部抗争を背景にした輪違屋の天神の糸里と土方歳三の恋ものがたりです。天神とは太夫に次ぐナンバー2の遊女で揚代が25匁(55,000円くらいと思われます)だったことから北野天神の縁日の25日に引っ掛けて天神と呼ばれていたそうな。

台東区の吉原のように風俗店は残っていませんが、スーパー銭湯や日帰り入浴できる宿が並んでいます。帰ってから調べてみると誠の湯などなかなか風情のある設備でかつリーズナブル。お風呂が苦手な自分も入ってみたくなりました。

ガラス障子の並ぶ木造2階建てを背景にヤエザクラと新緑のコントラストが美しい。

角屋(すみや)です。「久坂玄瑞 密議の角屋」の石碑が立ってます。遊女を呼んでの遊興だけでなく、志士の密議の場であり俳人らの文芸活動の場でもあった揚屋です。

今日の目的地、角屋もてなしの文化美術館に到着。あじゃ〜「本日は閉館しました」。座敷に上がって襖絵やお庭を眺め京情緒を堪能し新選組の刀傷も確認できるはずだったのですが残念。桜のトンネルで撮り鉄とか、庶民で休憩せずに嵐山からまっすぐ来るべきでした。

延々と続く格子窓、ねぇおにいさんよってらっしゃいな〜、といった安いお店ではなかったはず。

マップでみつけたうどん屋さんへ向います。仁丹じゃなくてフジイダイマルの広告付き住居表示、錆び方がグッドです。

花屋町通を西へ戻ります。太夫最中のお店、太夫最中よりいちご大福やクリームチーズ大福の方が売れていそうです。

みやこ食堂、大阪市内でよく見かける力餅食堂みたいな感じです。「こ」は「古」を崩した「こ」の異体字。

壁に掛かったお店の絵が素敵。この絵と並んで、禿に率いられた太夫道中の写真も飾られていました。

肉鍋定食にしました。鍋の蓋が素敵、砂糖の入っていないだしで、すき焼きではなく肉鍋。おはぎや桜餅を買い求めにやってくる近所の人が多いです。

花屋町通をさらに西へ行くと、なんと木造3階建て、木造2階建ての長屋と一棟になってます。向こうは大宮通りで木立は西本願寺の境内。

長屋部分は赤レンガ風のタイル張り、そこに仁丹広告付き「區京下」のホーロー看板。

おおっ、アグネス・ラムさん、何の広告かは全く読み取れません。

築100年は経っていると思われる長屋ですが、屋根にも全く歪みがなく、京都の大工さんの腕の確かさが伝わってきます。

大宮花屋町交差点角のお宅のツバキが見事。交差点の向こう側は元・京都市立淳風小学校、平成29年3月、147年の歴史を閉じたそうです。迎える新入生がいなくなったのに桜が満開。

角屋を見学できなかったのはかえすがえすも残念ですが、梅小路の鉄道博物館や水族館と絡めていずれ再チャレンジ、帰り道で「誠の湯」というルートが良さげです。

島原口バス停から207系統のバスで四条河原町へ。四条大宮辺りからもどどっと乗って来ます。207系統は四条通から東大路通を南へ、清水さんの方へ向かうと分かりナルホドです。下りることができるか不安になったものの、何とか四条高倉で下りることができました。