斑鳩・大和郡山

コスモスがまだ見頃のはず。手近なところで法隆寺にほど近い中宮寺跡へ行ってみます。8年前に法隆寺門前で奈良交通のレンタサイクルを借りて西大寺で返却したのですが、法隆寺門前の営業所は無くなってしまったうようです。検索してみると大和郡山市観光協会にレンタサイクルあると分かりました。中宮寺跡まで6kmほど、サイクリングにちょうどいいくらいの距離です。

近鉄郡山駅から歩いて5分ほど、道路の真ん中に紺屋川という縁石もない水路、この先にある箱本館紺屋という江戸時代の商家らしき観光協会の施設で電チャリのレンタサイクルをゲット。カゴに郡山市観光協会と大書されているのがちと恥ずかしい。色々と興味深い展示がされているのは戻ってきてから拝見することにして出発、

待った、その前に腹ごしらえ、検索して見つけた駅裏の路地を入ったところの喫茶店でモーニング。「カフェ」ではなく「喫茶店」で検索するのがミソです。ドアを開けるとカウベルがカランカランと鳴るお店、なんとテーブルテレビゲームがまだ置かれていました。ホットドッグのお皿はNIKKOボーンチャイナ、いいお皿でいただくと美味しさがグンとアップします。ママさんが外まで出て見送ってくれて改めて出発。

富雄川を渡ると河川敷に自転車道が整備されていて、橋のたもとにはコスモス畑、手前に色づいてきたコキア。

斑鳩の範囲は斑鳩町に限らず、法隆寺を中心とした矢田丘陵南部・富雄川右岸を指すらしく(Wikipedia)、まだ大和郡山市内ですがコスモスを合図に斑鳩に入ったといえそうです。

富雄川に合流する細い水路をのぞくとコイがうじゃうじゃ、水路の上流側にはオタマジャクシがうじゃうじゃ。

富雄川右岸を進みます。富雄駅周辺の景色と異なり川幅は広く水もきれいに見えます。

河川敷の自転車道が途切れたところ、「とみをかは」と碑が立っている橋は富雄橋。

法起寺周辺

法起寺(ほうきじ)に到着。国宝三重塔とコスモス畑、コスモスはピークを過ぎていたものの、まだ綺麗。遠景は大和葛城山と二上山雄岳。

日が雲に隠れるとちょっとひんやり。日が顔を出してくれるのを待って撮影再開。

三重塔をボカしてコスモスをアップ。熱帯アメリカ原産で明治12年にイタリア人により持ち込まれた外来種でありながら、1300年変わらない大和の秋景色に欠かせない花です。

法起寺南側にはまだ盛りのコスモス畑。写真の構図としては三重塔が画面真ん中じゃない方がバランス良く見えます。

中宮寺跡

法起寺から5分ほど走ると今日の目的地の中宮寺跡、こちらのコスモスはまだ全面的に見頃です。

セイヨウミツバチが全身花粉まみれになってました。

藤原京と較べるとキバナコスモスやチョコレートコスモスはなく黄色やオレンジ色が無いのでちょっと華やかさやファンシーさに欠けるものの、こちらの方がオトナ向けという印象です。

コスモス畑の東側に中宮寺跡の遺跡、心礎の跡や心柱を立てるための足場の柱穴の跡が確認できます。現在の中宮寺は法隆寺夢殿の東隣に位置していて、国宝菩薩半跏像が安置されていますが、飛鳥時代に創建されたのがこの場所です。発掘調査は完了したらしく、平成30年に史跡公園となりコスモス畑が整備されたようです。

法隆寺周辺

ここまで来たらせっかくなので法隆寺。中門前の石段の下、黄色い服の人が早く移動してくれないかと待っていたら、どかどかっと就学旅行の中学生たちがやってきて、クラス毎石段に並び記念撮影、その後も中学生だけじゃなくて小学生たちも途切れることなく続いてきました。今も変わらず修学旅行や遠足の定番スポットですが、鹿がいっぱいいて巨大な大仏が鎮座する記憶に残りやすい東大寺と較べて子どもたちにはインパクトに欠けると思われる法隆寺です。

拝観料はいつの間にか何と1,500円、8年前に1,000円で中へ入った時には百済観音像や玉虫厨子も見ているのですが、自分も記憶は残っていません。今日は遠くから五重塔を眺めてOKとします。

法隆寺の西側にある藤ノ木古墳、6世紀後半の築造で法隆寺より前からここにあり、現代に至るまで盗掘されなかた大型円墳です。赤い自転車は今日の相棒。

横穴式石室の入口(羨門 - えんもん - というそうです)に発掘調査時に取り付けられたドアがあり、その脇に張り紙。てっきり立入禁止の案内かと思いきや、「扉の人感センサーが反応しますと、石室内の照明が一定時間点灯して石室内部をのぞくことができます」との案内。近づくと案内通り古墳の内部がぼーっと明るくなってちょっと感動しました。

円墳をぐるっと回ってみると垣根の下からヒバリちゃん登場。

柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺

明治28年、日清戦争の従軍記者だった正岡子規は喀血して故郷松山に戻り、友人夏目漱石の下宿に滞在、病状が良くなって東京へ戻る途中、奈良へ立ち寄った時に詠んだ句だそうです。法隆寺には国宝の鐘楼が2つあり、西院伽藍の鐘が撞かれるのは柿の季節ではない5月16日から8月15日の毎朝一度だそううです(参考)。もうひとつの東院伽藍の鐘も撞かれるのは法要がある時だけで、子規がたまたまその法要の日に出くわしたのかというと、どうやら実際は東大寺の鐘の音を詠んだものだったようです。東大寺の大鐘が撞かれるのは毎日夜8時、こういう青空じゃなくて夜空に浮かぶ月を愛でながら柿を食べ、うかんだ句なのかも知れません。

法隆寺近くにもコスモス畑、向こうの小さな塔は斑鳩町消防二分団屯所の火の見櫓です。

吊るし柿のお店がありました。もし「柿くへば」が東大寺だと鹿や大仏が強すぎて柿が霞んでしまいます。やはりここは法隆寺がぴったり、さすが子規です。

夢殿も今日は外から眺めるだけ。

ランチのスプーンとモーニングのトーストとチーズケーキと鍼の針を手にした三面千手観音。

郡山へ戻ります。富雄川沿いの自転車道左手の山並みは生駒じゃなくて矢田丘陵。

川に頭を突っ込んでるのはコガモたち。堰堤の角が好きな鳥は多いです。

ハクセキレイは水浴び。中洲になにかシギチ。

イソシギです。

気付かれないようにそーっと近づいて間近にコガモ。

大和郡山

富雄川を渡るとアピタ大和郡山店。関西では馴染みのないモールですが、愛知県を中心に店舗展開するユニーの最主力ブランドです。現在はドン・キホーテと同じ持株会社傘下ですが、自分も輸入商社に務めていた時には、ほぼ毎週東京から名古屋駅近くにあった本部に通いさんざんお世話になったお店です。ひょっとして寿がきやが入っているかもと期待したものの見当たらず和食のお店で遅いランチ。

アピタから近鉄橿原線の間に広がる金魚畑(金魚の養殖池)。

池に赤い点々の大群、全部金魚です。金魚畑を行く近鉄電車。

金魚畑ではない大きめのため池にカイツブリ。箱本館紺屋に戻りレンタサイクルを返却。手前の溝が紺屋川、酔っ払って落ちた人は少なくないかと。

元は藍染商のお屋敷で座敷や土間が見学でき、中庭の離れでは藍染教室が開催されていました。箱本とは当地の領主だった豊臣秀長が作った郡山城下の自治組織だそうです。

駅への途中に見つけた中谷酒造柳町醸造所、フロアに胡蝶蘭がいっぱい並べられていて10月12日にオープンしたばかりだそうです。素敵なディスプレイの金魚たちの向こうで杜氏さんらしきがお仕事中です。

店内の4人用テーブルに腰を下ろしてほどなく来店した3人にテーブルを譲り、自分はお庭のガーデンテーブルに移動。ガーデンテーブルの真ん中の穴にグラスがすっぽり収まりました。たしか純米吟醸でグラス1杯が300円。驚くほどフレッシュ感のあるさわやかなお酒、しぼりたてのオレンジジュースがお米でできている感じです。それもそのはず小型の醸造設備なので毎日新酒、これもしぼりたての一杯のようです。アテは何もおいていないのですが、持ち込み可だそうな。

となりのお店に金魚の水槽がのった自動改札機、今日はシャッターが下りてましたがさくら倶楽部という野菜直売所だそうです。

そのお向かいの魚屋さん、生簀に金魚? と一瞬目を疑ったもののふつうに飾っているだけのようです。写真左手の冷蔵ケースには「中谷酒造さんの酒のアテあります」、ここでお刺身とか買ってさっきのガーデンテーブルでいただくと最高でしょうね。商店街の持ちつ持たれつ、よく出来てます。

その先の駐車場の隣のトタン板の壁にどれも見覚えのある感じのホーロー看板がずらり、じゃなくて壁画です。金鳥じゃなくて金魚、リュウキンや江戸錦、東錦、コメットは金魚の品種です。めちゃくちゃセンスよすぎて感動。

居酒屋さん店頭にも金魚の水槽と金魚の灰皿、駅前のコロッケやさんには行列。アーケードは架かっていないけどとても魅力的な商店街、大和郡山にしかできない金魚しばりの街づくりはお見事です。

鉄道模型のレイアウトに並べたいような駅前のタクシーのりばです。その隣の喫茶店でひと休み。今朝の喫茶店同様に喫煙可。

伊勢海老ライナーが通過。8年前に郡山城を訪ねた時には気づかなかったけど、大和郡山の魅力にすっかりハマってしまいました。自分も金魚を飼ってみようかな。

今日の大阪平野は綺麗な夕焼け。