道頓堀のミニミニテーマパーク

「おちょやん」の篠原涼子ごりょんさんの熱演に感動、道頓堀編はひとまず終了だそうです。朝ドラ史上最強のクソ親を演じるトータス松本はもう顔も見たくなくなるほど、いかにも婿養子の旦さんなネプチューン名倉、吉本のカンバンなのに松竹のカンバンを演じるほっしゃん、女中頭の「ほんにほんに」かめさん、皆々好演、物語の展開や時代設定が数年前の「わろてんか」に重なるものの十二分にハマれます。

「おちょやん」を感じられる何かが見つかるかも、と人通りの少ない道を選びながら道頓堀へ、徒歩20分ほどです。

日本橋から相合橋側の道頓堀、殆ど誰もいません。道頓堀川が鏡のようにのっぺり、ドンキの観覧車がきれいに映り込んでいます。

道頓堀に釣堀ができてました。中を覗くと大きな水槽が見えます。チョウザメが釣れるそうです。

とんぼりリバークルーズは運休中、川を清掃する船が静々とユルイ波を立てるばかり。こんなのっぺりした道頓堀は見たことが無いような気がします。

グリコが川面に映り込むところを狙ってみたら戎橋より西側は水面が揺らいでいました。

松竹座の新春公演は坂東玉三郎、麒麟がくるの正親町天皇を見て、気品とはこういう事を言うんだと感じます。能、狂言は見たことがあるものの、歌舞伎は一度も無いので、いずれはと思いつつまだ実行できていません。

オダサクの夫婦善哉にも登場する法善寺横丁の正弁丹吾亭は営業休止中。

その先のかつどんの「喝鈍」、この前見つけた時には満席だったので諦めたのですが、今日はガラガラだったので迷わず入店。

いわゆる「分かれ」かつどんです。お吸い物が食べたことのない味、かつどんのスープの二番だしで、アゴとか色々入っていると教えてもらいました。法善寺横丁で1000円ほどでおいしいものが食べられるのは嬉しい。

満腹してちょっと歩くと狭い路地の奥に提灯が並んでいて、浮世小路とあります。近所に住んで10年以上なのに、全く存在に気づきませんでした。

料亭らしきお店があって反対側には何か飾られているのですが、後ろから人がやってきて、立ち止まっていられないので、通りを抜けるとうどんの道頓堀今井の脇に出てきました。

浮世小路を紹介する「ごあいさつ」、壁には昔の道頓堀の様子を描いた絵が何枚も貼られています。

戎橋南側と分かる写真、かに道楽の場所に森永キャンデーストア。昭和10年頃のようです。

「今井」の提灯となぜか「楽器」の提灯。宵待柳というサイトや株式会社今井の沿革で詳しい情報が見つかりました。道頓堀今井は「稲竹」という芝居茶屋として江戸時代中頃に創業しています。上で「料亭らしき」と書きましたが、料亭じゃなくておちょやんが奉公していたような芝居茶屋です。ちなみに写真の格子戸の裏はうどんの今井の店内のはず、つまり格子戸はダミーとやっと気づきました。

大正末期に芝居一辺倒から映画や新しいエンタテイメントビジネスへの変化を見越して何と楽器店に事業転換、それが今井楽器店で時代の最先端を行くジャズの町ニューオリンズのような町づくりを担っていたようです。そういえば赤い灯青い灯の道頓堀行進曲ってジャズっぽいと思って探してみたら、もろビッグバンドジャズですね。今井楽器店がなければ道頓堀行進曲は生まれなかったということのようです。

大阪大空襲で今井楽器店は焼失、戦後すぐ、さらに事業転換して「お蕎麦処今井」になって現在に至るようです。大胆な事業転換を重ねて200年以上事業継続されているだけでなく、ご先祖様の業績をこの浮世小路のようなかたちで再現している今井家に敬意を感じます。

路地の両側が切り絵のようなレリーフのイラストで囲まれています。片側は昔の道頓堀の様子、片側は川上貞奴や長谷川一夫の紹介、さらに地下鉄の開通とか。

横山エンタツの招木看板。それと、わらわし隊の似顔絵とサインの額、エンタツ、アチャコ、それに「ジェスチャー」の金語楼は本物を白黒テレビで見た記憶があります。ミスワカナは「わろてんか」の広瀬アリスがとてもチャーミングでした。

往時の出番表、吉本興業は大阪市内に8つも劇場を経営していて、人気芸人さんたちは1日に何箇所も掛け持ちしていたことが分かります。エンタツアチャコじゃなくて「今男・アチャコ」になってます。吉本興業ヒストリーを見ると花菱アチャコは大正15年に千歳屋今男とコンビを組んでいて、エンタツ・アチャコが結成されるのは昭和5年です。上の写真の額縁に千歳屋今男ののっぺらぼうの似顔絵がありますが、それ以上にはどんな芸人さんだったかは不明です。

一方、横山エンタツの相方は杉浦エノスケ、浅田飴のお雛様のようなロゴが可愛い。

道頓堀周辺はミナミじゃなくて「なんち」が一般的な呼称だったようです。ヒガシマル醤油は当時からうすくちだったことも分かります。

明治3年の相合橋の写真、道頓堀川ってこんなに広かったんですね。おちょやんが道頓堀を去っていく時のような舟がゆっくり下って行きます。

法善寺は今とレイアウトや広さが全然違っていたようでです。

浮世小路を出たところにある掲示板の浦沢直樹の2021大阪国際女子マラソンやEXPO2025のポスター、全然違和感がないのが不思議です。サンシャインシティのナンジャタウンをちょっと彷彿とさせる、長さ25mほど、幅1.2mの浮世小路、往年の道頓堀が体感できるミニミニテーマパークの趣です。

空襲だけでなく、平成14年、15年と続けての火災で大きく様変わりしたものの風情が再現された法善寺横丁付近、ドラッグストアや全国チェーンのお店が殆ど見当たらないミナミでも貴重な一画です。

千日前の坂を上るのがしんどいのでLCカーで帰ります。