和歌の浦潮引き去りて潟広く
梅雨入り前の快晴、大潮で干潮は午後1時、和歌山観光きっぷ往復座席指定券付きで和歌浦へ。
運よく12000系サザンプレミアム、かぶりつき席が空いているので、通りがかったパッセンジャーアテンダントさんに断って移動も、ほどなくパッセンジャーアテンダントさんが戻ってきて、今しがた天下茶屋でこの席売れたようです、とのこと。やむなく元の席付近に戻りました。
サザンプレミアムはリクライニング角度が深いのでいつもとちょっと違う景色が楽しめます。青空に車内照明が映り込んできれいです。鳥取ノ荘を過ぎると広がる海、南海本線車窓のハイライト。
紀の川を渡り、和歌山市に到着。
コロナで開業が延期されていたキーノ和歌山が一昨日オープン、まだ11時過ぎなのにどのレストランも長い行列なので、1階のスーパーでカツサンドを買って出発。
駅前にあった観光案内所はなくなっていて、3番のりばの西浜経由新和歌浦行バスの運転手さんに、不老橋か権現前へ行きますか、と訊いたら、わざわざ降りてきて2番のりばに案内され、時刻表を指さし本町二丁目経由新和歌浦行に乗ってください、と教えてくれたものの30分ほど先。ところが西浜経由新和歌浦行の運転手さんがまた降りてきて、権現前だったら雑賀崎行もありますと教えてくれました。こちらは約10分後。案内掲示の不備を補って余りある和歌山バスの親切さです。
不老橋の運河
権現前から不老橋を繋ぐ運河です。浅い流れを泳いでいるのはキビレ(キチヌ)のようです。
黒いのはチヌだと思います。一列になって泳ぐキビレたちと一緒に河口へ歩きます。
運河両岸の泥の干潟にはカニがいっぱい。ヤマトオサガニと丸っこい甲羅で短い目はカクベンケイガニだと思います。
トビハゼ君も。まだちょっと早いかなと思っていたのに会えて嬉しい。早速ゴロリンしてくれました。
トビハゼの数は少なくなくて簡単に見つかります。不老橋に近づいてきました。
ゴロリンと正面から。
和歌の浦干潟
正面は紀三井寺、右手の砂州の向こう側が片男波。
エビがいました。たぶんユビナガスジエビかと。カニはゴマンと、イカも何度か撮ったことがあるもののエビを撮ったのは初めてです。
キーノ和歌山で買ってきたカツサンドです。ロックスターファームズという各部門自体がほとんどテナントで構成されたスーパー、その中のデリカ屋さんのカツサンド、パンより大きいどっしりしたカツにカレー味のコールスロー、デザートにぶどうが3粒、大変美味でした。
ここで一首
和歌の浦潮引き去りて潟広くサンド食みつつ蟹とたわむる 上町のオッサン
お粗末。
干潟に黒い蝶、じゃなくてアゲハモドキのようです。干潟には貝やカニたちがびっしり。
これだけ潮が引いているのにゴミがほとんど見当たらないことに気づきました。和歌の浦干潟が片男波の砂州に覆われて海からの間口が狭いこと、それに流れ込む川も限られていることと関係がありそうです。逆にこれだけ貝やカニがいるのに鳥が殆どいません。これまで何度も通ったものの一度もシギチに会ったことがなく不思議でなりません。
ヤドカリ同士が貝殻の奪い合いをしているようです。
ヤマトオサガニとカクベンケイガニ。
妹背山の周囲
三断橋はまだ一昨年の台風被害の復旧工事が終わっていないものの、並行して土嚢が積まれ妹背山(妹背島?)へ渡れるようになってます。
妹背山の裏側の観海閣もロープが張られ立入禁止になってました。この際、時間がかかっても徳川頼宜公が建てた時の姿に木造で復元してほしいものです。
ハクセンシオマネキもいます。それもかなりたくさん。
一生懸命ウェービングしているので手持ち動画。
江戸時代初期の文化財だけに三断橋の復旧工事は簡単ではなさそうです。
左ハサミと右ハサミ。
何気なく撮った一枚。よく見ると大きなカニ脚の剥き身のような何かにヤドカリや小さなカニたちが群れ集まっています。左上の透明感のある深緑色の綺麗なカニはイワガニかと。とめどない干潟の不思議です。
腰を曲げたり伸ばしたりして上手に匍匐前進するトビハゼ。有明海ではピョンピョン飛んでいるのに、和歌の浦でトビハゼがジャンプしているところを見たことがありません。同じトビハゼでも環境で生態が違っているような気がします。
和歌山バスのバス停の赤くて丸い標識がかつての南海バスのものを継承していることに気づきました。往時の歯車マークが今の南海グループロゴになっているだけです。
三断橋北側の干潟なかほどに白い点々、ハクセンシオマネキかと思ったら動きが殆どありません。ズームしてみるとヤマトオサガニの抜け殻がずらりと。
一見墓標が並んでいるようにも見えますが、エネルギッシュな命の営みです。
抜け殻はなぜか同じ方角、東の方を向いています。
不老橋の運河を権現前の方に戻ります。イソヒヨドリの♀と♂。
トビハゼ動画です。
キビレたちは100尾くらいがひとつの集団になっていました。
とびだせ!えほん
今日は和歌の浦でもう一つの目的があります。MBSの午後のワイドナショー、ちちんぷいぷいにとびだせ!えほんというコーナーがあります。藤井寺出身の絵本作家、長谷川義史さんが京阪神周辺を旅するコーナーで、飄々とした長谷川さんが出会った風景や人々を即興でスケッチ、さらにコーナーの最後では毎回、長谷川さんの見たまま感じたまま心に映った風景や人々が丹念に描きこまれた一枚の絵に仕上がります。
今はロケができないので、過去の放送からピックアップした回の再編集が放映されているのですが、少し前、2013年5月の和歌浦でのロケが放映され、自分の知っている和歌浦、自分の知らない和歌浦、長谷川さんの心に映った和歌浦が紹介されていました。
紀州東照宮です。関西の日光と称されますが、日光東照宮よりこちらの方が古いです。石段を見上げて足がすくみました。10段程上ったところで膝が止めておけと言ったので、脇にあるゆるい坂道を上りました。
石段の上にある楼門から振り返ると和歌浦の青い海が見えます。このシーンを長谷川さんが紹介していたのを見てやってきた次第です。
紀州東照宮麓の御手洗池公園、池にはキビレ、不動橋の運河と繋がっていて汽水の池と分かります。
とびだせえほん!で紹介されていた明光商店街、不老橋の運河の御手洗池公園側に入口があって、これまで何度も前を通っているのに気づきませんでした。
定休日毎週水曜日とあるものの今日は日曜日です。
お店が営業していないどころか人っ子一人歩いていません。コロナで臨時休業ということでもなさそうです。
長谷川さんも目敏く見つけたボンカレーのホーロー看板です。
両面ホーロー看板は珍しいかと。のどがからっからですが自動販売機も休業中。
長谷川さんが自著を探したものの置いてなかった松木本店。休業日のようですが、いつ営業しているのか気になります。
長谷川さんのイラストになっていた、いかにも和歌山のねえやんといった陽気な姉妹のやきとり屋さん。ここでやきとりを買ってビール、と思ってやって来たのですが、少しだけシャッターが開いているものの、どうやら営業時間外のようです。
おもちやさん。店構えからおもちゃじゃなくてお餅やさんのようです。行きかう人は全然いなくて、イソヒヨドリの鳴き声だけが響いています。
散髪屋さんが営業してました。明光通りは続くもののいつのまにか商店街を抜けてしまいまい国道42号線を和歌浦の方へ戻りセブンイレブンで水をゲット。
7年前の長谷川さんの旅は和歌浦から雑賀崎へ。自分が2年前に座った同じ石段に長谷川さんも腰かけていました。自分の時は地元のおばあちゃんたちの会話から、やぱり和歌山弁には敬語が無いんだと感心したのですが、長谷川さんの旅では、水色の上っ張りを着た幼稚園児兄弟が登場、腰かけていた石段の奥の急な石段を駆け上り、長谷川さんも後を追って、石段のてっぺんで3人が並んで仲良くお話していました。
もう一度あの石段に腰かけてみたいと思ったけど、のどの渇きが癒えないので、和歌浦バス停からJR和歌山駅へ。
JR和歌山駅前の多田屋さんでプファー。
長谷川さんが旅した頃はこんなだった和歌山市駅が完全に更地になって、漸く新装開店なった和歌山市駅です。駅とキーノ和歌山、ホテル、図書館の複合施設です。
昼時はどこも行列だったレストランフロアは落ち着きを見せていて蕎麦屋で仕上げ。
プレミアムじゃない方のサザン指定席から紀の川の夕日を見た後の記憶はなく、難波でパッセンジャーアテンダントさんに起こされました。