大正生まれの元神戸市電

今週も広島へ。

新大阪11時5分発のぞみに乗車、新元号の発表をスマホで待っていました。Rで始まる元号、カッコいいです。隣の席の親子はタブレットの中の菅官房長官と一緒に記念撮影、この子たちがおとなになった時まで語り継がれそうです。

ミーティングを終え、広島駅じゃなくて横川駅で下りてみました。信越線は「よこかわ」ですが、山陽線は「よこがわ」です。

駅前停留所には元京都市電の1900形、これに乗って行ったことのない江波まで行ってみましょう。と思ったら前方に銀色屋根の電車、元神戸市電です。

元京都市電より一回り車体が大きい元神戸市電、側面には花電車みたいな装飾、すわっ、サヨナラ運転か?

と思ったら選挙の広告でした。左側カブリツキをゲット。570形582号、昭和46年広電移籍。京都市電や大阪市電には京都や大阪で乗ったことがあり、阪神国道線にも乗ったことがある自分ですが、神戸で神戸市電に乗った記憶はなく広島でも初乗りです。

以前元神戸市電1150形を見たことがあります。元神戸市電は1156号だけしかないものと思い込んでいたのですが、もっと古いのが1両現役バリバリ、それも神戸市電カラーのままで残っていたとは。

元神戸市電557号で何と大正13年製、昭和30年代に車体更新され592号に改番、神戸市電廃止まで活躍後、広電に移籍、それから48年経ってます(参考)。阪堺電車モ161形より年上の95歳、改造を重ねているので現役最古かどうかは微妙ですが、現役最古の冷房化鉄道車両であることは間違いないようです。

横川駅を出て十日市町で左折、原爆ドーム前を越え、紙屋町を右折、本通までのツギハギ動画です。運転手さんは思いっきり腕を伸ばしてマスコンを操作、ダイナミックなカッコいい運転です。

時々画面のブレが激しくなるのはiPhoneをICカードリーダーの上に置いて撮ってみた部分で、振動をモロに拾ってしまい、手持ちの方がまだ安定すると分かりました。

車内が空いたので車内各部を撮影、運転席に速度計はなく圧力計だけです。泰平電機のマスコンは元京都市電の1900形や元大阪市電の900形と同じです。

窓桟のあるドアと真鍮の手すり。ロールカーテンのロールはむき出し。

つり革の棒を固定する飾り金具も素敵ですが、一番の特徴は床の中央部が凹んでいることです。車体の骨格に関わるような改造をしたとは考えにくく大正時代の設計かと。つまり大正時代から低床式路面電車の発想があったということのようです。

終点広電本社前に到着、既に6時を廻っているものの春分の日も過ぎてまだ明るいです。入庫ではなく折返しのため少し先へ進みます。

渡り線の先で停車、大型路面電車ではあるものの、5100形と比べるとかなり小さく見えます。行き先幕を横川駅に変えて渡り線を折り返してきました。

千田車庫を覗くと、ラッシュ時で殆どが出払っていました。千田車庫からの入出庫線と合流し、582号は横川駅へ向け発車、大正、昭和、平成、そして令和へと時代を駆け抜ける582号です。

千田車庫の奥、元神戸市電1156号のピンクの屋根が見えます。その奥に赤レンガ造りの建物、左側の白っぽい建物もレンガ造りのようです。

左側の建物が元発電所で、右側の赤レンガの建物は発電用の元ボイラー棟だったそうで大正元年築、昭和9年には発電所は変電所に、ボイラー棟は資材倉庫になって、昭和20年に被爆、爆心地からわずか2kmです。多くの職員が亡くなられたものの、変電所設備の被害は大きくなかったらしく、3日後の8月9日には電車の運行を再開、広島市民を大いに元気づけた、そのパワーを供給したのがこの2棟の建物と分かりました。(参考

千田車庫の南側に広電本社、その隣のマダムジョイ(旧広電ストア)はマックスバリュに変わってました。店頭に展示されていた元ドルトムント市電の70形はどこに?、と調べてみると、THE OUTLET HIROSHIMAという五日市の方に新しくできたアウトレットモールで展示されているもよう。

5100形Green Mover Maxで戻ります。カープ電車同様にサンフレッチェの選手たちが停留所毎にアナウンスしているサンフレッチェ電車でした。阪堺電車もセレッソ電車を走らせてくれないかな。「セレッソ大阪の柿谷曜一朗です。次は帝塚山四丁目」とか。夏場走らないといけないし、ツリカケがいいので、モ351形がいいな。大好きな3000形とすれ違います。

いくつ目かの停留所、窓から首を出していた若い女性車掌さんが、しばらくお待ちくださいと案内して外へ出ていきます。ほどなく白い杖の視覚障害の女性を両手で誘導して戻ってきました。その一連の気負わない当たり前っぽい仕草にちょっと感動、低床LRTの大量導入や古い車両を大切に走らせるといったハード面だけじゃなくて、接客や案内といったソフト面も完成の域にある広電です。

それとラッピング広告電車でもそのデザインセンスが秀逸なのも広電の大きな特徴です。

本通で下車、立町の善吉さんへ。純米酒とアテのセットで650円!お酒はおまかせでと頼んだら生酛玉栄という鳥取のお酒、2杯目は香川県の凱陣、3杯目は丹後の玉川。ひとりちびちびやっていたら、わいわいやってるおじさんに声をかけられました。壁に向かって飲んでないで盛り上がりましょう、と。お仲間にいれてもらってこの店の楽しさが倍増、大阪から出張と知ったマスターからなぜかタイガースの割り箸をお土産にいただきました。

ええ塩梅になって立町停留所から5000形Green Mover、色んなGreen Moverがありますが、これが初代でドイツ・シーメンス製、国内唯一の中古車じゃない輸入電車のはずです。