能勢で草臥れる
たぶん4年ぶりに能勢です。
能勢妙見・里山ぐるっとパスを購入、阪急全線と能勢電、ケーブルカーやリフトに能勢エリアの阪急バスにも乗れるとくとくきっぷです。梅田駅のインフォメーションカウンターで、きっぷの名前など覚えていないので、能勢電のフリーきっぷ、阪急にも乗れるのくださいといっても通じませんでした。女性駅員さんはあたふた、上司の男性駅員も要領を得ない感じです。京阪天満橋駅でフリーきっぷを買うと「いってらっしゃいませ」と笑顔を見送ってくれるのと比較すると、阪急には元からレベルの高い接客が期待値としてあるだけに、残念感が強いです。
最近カブリツキとは別にお気に入りなのが、車両後部隅っこのロングシートで体を傾け外を眺めるアングルです。
能勢電5100系、ロールカーテンに里山風景が描かれていて、日が差すときれいです。阪急の5100系だと部位によって色が違っていたり退色してしまっているデコラ版も取り替えられていて新車同然です。
山下駅で乗り換えた5100系ツートンカラー2連のロールカーテンは絵柄が違ってます。住宅地に囲まれたときわ台駅から短いトンネルを越えただけで、いきなり里山風景に囲まれた妙見口駅に到着です。
妙見口駅から妙見の森ケーブル黒川駅まで徒歩20分、駅の見た目がほぼ同じです。
妙見山に上る
妙見山まで歩いて上るか、ケーブルカーに乗るか、ずっと考えていたのですが、せっかくフリーきっぷがあるのでケーブルカーに乗ってみます。初乗りです。
ケーブルカーは超満員、能勢電じゃなくて麓の黒川駅まで車の人が大半のようです。5分ほどで山上駅に到着、その先の200mほどの真っ直ぐな急坂に息が切れます。
妙見の森リフトに乗ります。リフトに乗るなんてたぶん30年ぶりくらいです。両側がずっとアジサイと桜に囲まれていて、シーズオフに来たのが悔やまれます。
リフトで足に板が付いていないのが変な感じです。傾斜はほとんどなくゲレンデなら滑ってもあまり楽しくない斜面ですが、乗車時間は何と12分、かなり乗りごたえがあります。
リフトを下りてすぐのところにブナ林への案内板、急な石段を上ってから後悔しました。下りる時はかなりビビることになりそうです。
石段を上りきって回り込んだところでヤマガラ発見、キツツキのドラミングも聞こえるものの姿は見えません。
ブナ林です。急斜面で入ることはできません。その上に星嶺という能勢妙見山信徒会館の凝った建物があり道が続いています。さっきの急な石段を下りなくて済むと思ったら道は立入禁止になっていました。
大阪湾を俯瞰、かなり靄っていて海は見えません。右側のぽっこり膨らんだ山は甲山。
結局おっかない石段を何とか下りて山道を10分ほど歩き、門前の石段を上ってさっき見た星嶺に到着、そのテラスからの眺めです。伊丹空港を離陸した飛行機が西宮浜辺りの上空を視線と同じくらいの高さで旋回しています。
その右側は六甲山、手前には宝塚の住宅地がかなり山の上の方まで広がっています。こういう住宅地の広がり方は北摂ならではです。
目を左に転じると咲洲庁舎、ということは手前のコスモスクエアからも妙見山が見えるはずです。
舞洲にはガントリークレーンに囲まれてスラッジセンターの2本の塔が生えています。ハルカスは靄って見えなかったのか、箕面の山並みに隠れてしまうのか不明です。
本堂前です。その先に妙見山簡易郵便局、平日は営業しているようですが、平日休んで土日営業すべきでは。
本堂から少し下りた所に「戻り馬」の祠、太平洋戦争の金属供出で供出されたものの、金属製ではなく石製と分かり戻され、その後出征兵士の無事を祈る人が跡を絶たなくなったそうです。金属か石かは搬出する時に分かりそうなものですが、ちゃんと戻すとは戦時体制の意外な側面です。
黒川の里山を歩くエネルギーを残しておくべく、帰りもリフトに乗りました。下りのリフトに乗るなんてゲレンデだと怪我した時か急斜面にビビった時で自分は初めて。下りの方が眺めはいいです。
リフト乗り場近くを周回するシグナス森林鉄道、能勢電が経営する381mm軌間(15フィートゲージ)の遊覧鉄道です。機関車は能勢電平野工場製のバッテーリーロコ、途中には138‰をリッゲンバッハ式のラックレールで上る区間もあるそうです。
ケーブルカーで424.25‰(約23°)を下ります。
狭軌のケーブルカーは全国的にも珍しいそうです。麓からケーブルカー山上駅を見上げます。
黒川の里山歩き
ケーブルカー黒川駅から北西方向の谷に広がる日本一の里山と言われる黒川地区、何が日本一なのかイマイチ不明ですが、アキアカネがいっぱい舞ってます。
畑の一角で栽培されていてるダリアの花が見事です。この先にあるダリア園を目指してみます。
秋にテングチョウを見たのは初めて、調べてみるとテングチョウは年2回発生するそうです。ヒカゲチョウは日差しを浴びて翅が透けて見えます。でも見かける生き物は少なく、前回のようなカエルもサワガニもヤギも見かけません。
手前のコスモスを撮ったつもりが山の森の方が美しいと気づきました。杉でも松でもない常緑樹に、ブナでしょうか、白っぽい幹の落葉樹が混じってます。木のことを知れば里山歩きはもっと楽しくなるはずですが、鳥、虫、草花、と勉強すべきことが多すぎてぜんぜん追いつきません。タモリさんのように石や地形のこと、あるいは古民家や農法についても少しでもかじるとまた違ったものが見えてくるはずです。もちろん訪ねた村の歴史も少しは抑えておきたいところです。
ダリア園に着くと、そこそこ賑わっていて駐車場の誘導をしている警備員さんまでいます。そこに着くまでとは全然別の世界を感じてダリア園には入らず引き返しました。
日本一の里山と標榜し、能勢電のロールカーテンにも情緒ある里山風景が描かれているものの、実際に黒川の里山を歩いている人は殆どいません。黒川駅までの帰り道で出会ったのは写真の老夫婦と写生しているおじさん、自転車に乗った母子一組、農家の奥さんひとり、それと電線のモズとトンビが1羽で全部でした。
5.5km、2時間近く歩きクタクタになって妙見口駅にたどり着きました。能勢電の駅名板には各駅毎に素敵なイラスト、妙見口駅は妙見山ではなく里山風景です。帰りもツートンカラーの5100系2連。
考えてみたら能勢電の里山をテーマとしたキャンペーンはいささか無理があると気づきました。対象エリアは明確ではないものの、おそらく今歩いてきた妙見口駅周辺の大阪府豊能郡豊能町吉川地区と「日本一の里山」の兵庫県川西市黒川地区だと思われます。妙見口駅前に数軒の土産物店兼食堂があるものの、その先にはコンビニどころか自動販売機も稀です。ケーブル黒川駅にも売店はありません。つまりお金を使ってもらうところが何もありません。山の辺の道とかでよく見かける野菜や果物の無人販売すらありません。ダリア園の隣にキャンプ場がありますが、そっちは100%車の人たちです。
能勢電が沿線地元の魅力をアピールすることは理解でき、また必要なことでもあるのですが、里山へいらっしゃい、だけでは自分のようなへんくつが僅かにやってくる程度で、地元の活性化や収益にはつながらないです。山の辺の道だと、ほぼ中間点にトレールセンターというハイキングの道の駅のような施設があります。地元の人にも受け入れられる、ハイカーの目的となる何かが必要かも知れません。何もないのが魅力で、そこで何かを見つける楽しさや喜びは大きいのですが、それを求めるのは少数派かと。
阿み彦閉店
せっかく阪急全線に乗れるフリーきっぷを持っているので京都か神戸へ、とも考えていたものの草臥れ果てたので帰ります。
梅田に辿り着き、しゅうまいで一杯と、お初天神の阿み彦に行ってみたらお店が見当たりません。ググってみると1年ほど前に閉店していました。祖父に何度も連れてきてもらったお店で、その頃は初天神の境内にありました。戦後間もない昭和21年に開店、平成5年に境内の外に移転しています。焼きしゅうまいとミルク色のとんこつスープがもう食べられないのかと思うと寂しいです。最後の1枚は平成21年10月10日撮影です。
祖父によく連れて行ってもらったお店は、難波の丸十が消え、阿み彦が消え、残るは千日前の珉珉だけになりました。珉珉は経営規模が大きいので大丈夫かと。