名鉄モ600形

2ヶ月程前、日本橋のホビーショップ、ボークスのショーウィンドウで見かけた名鉄モ600形のNゲージモデル、まだあるかなと行ってみたら、まだありました。何やら商品がボクを買ってという声がしたような気がして、ゲットしてしまいました。

鉄道模型を買うなんて、たぶん10年以上ぶり、Nゲージに至ってはたぶん20年以上ぶりだと思います。10数年前はスイスのナローゲージ山岳鉄道の模型にハマっていました。HOmという1/87のHOスケールではあるものの線路が12mm幅(HOゲージは16.5mm幅)という特殊なもので、Nゲージにはない、ずっしりした存在感と標準サイズのHOにはない可愛さにすっかり惹かれてしまいました。


当時足繁く通っていたのが武蔵小杉の模型屋さん、共立工芸。東横線の線路際のバラック建てのような建物ですが、中に入ると、ドイツ製モデルが所狭しとディスプレイされています。HO専門です。パーツやストラクチャキットの品揃えもハンパじゃないです。ドイツでもこれだけの品揃えのお店は少ないと思います。

土日の限られた時間帯しか営業しておらず、確か本業に建設会社を営む巨漢の店長さんが、タバコをくゆらせ、モーツアルトを聞きながら、時にはワインを飲みながら、客の相手をしてくれています。なんとも羨ましい生き方です。模型誌の線画だけの広告もとても魅力的です。ググってみると今も変わらないようです。

ここで、架線集電のシステムなんかにも手を出してしまいました。通常、鉄道模型は線路から集電するのですが、架線から+極の電流をパンタグラフで集電、線路を-極にして走らせるとスパークしながら走ります。これがなんともいえずカッコいいんですよね。精巧な架線柱や架線、架線を引っ張る錘とかまでがシステマチックに製品化されたもので、おそらく国内で扱っているのはこの武蔵小杉のお店しかなかったと思います。

この他にもスイスの駅建物のキットを買い集めたり、ホームセンターで合板や角材を買ってきて、レイアウト(ジオラマ)作成にもチャレンジしていたのですが、早晩お金も時間も底をつき、そのままになってしまいました。

ちなみにこの後にハマった対象がいい年してレゴだったんですが、これはまたいずれ書きます。


1992年、スイスのレーティッシュバーン・ベルニナ線まで出かけたときの写真です。

ABe4/4形、1・2等合造両運電動車、日本風に呼ぶとクモロハです。1911年製の古豪ですが、モ600に似てますよね。HOmにハマった原因を作ってくれた車輌です。

HOmは今考えても自分にとっては分不相応なホビーでしたが、Nゲージであれば、もっと小さなスペースで楽しめるだけでなく、線路をはじめさまざまなパーツが量産化されており、ずっと気軽に手軽に楽しめる訳です。

以前、鉄道模型の仕入れに携わっていたことがあり、若干業界事情とかも見聞していたのですが、鉄道模型は、他のホビー商品と違って極めて小さな生産ロットで、それも再生産されることは稀なので、店頭で欲しい商品を見かけたら、お財布の許す限りゲットしておく必要があります。

ということで半ばもう売り切れているだろうな、売り切れていてくれれば、とも思いつつお店に入ってみたら、まだあった訳で、モ600形君の声をもう無視することはできない、と自分に言い訳している自分がいました。


実車は1975年の製造で、当時の鉄道雑誌の写真を飽きずに眺めていた記憶があります。

600Vの美濃町線から1500Vの各務原線経由で新岐阜まで直通運転をするために開発された車輌で、屋根にあるのはクーラーではなく、電圧を下げるための抵抗器です。腰高な感じのボディは併用軌道の交差点の急曲線を曲がるために両端がぐっと絞られいて、それによる極端に面長なフロントマスクは貫通扉の3枚窓と相まってとてもキュートです。

デザイン先にありきではなく、技術先にありきの結果として生み出されたデザインというところに惹かれます。この自分の好みはSLだと後進運転のためにテンダーにカーブをつけたC56が大好き、ということとも共通しています。

パノラマカーと同じスカーレット・レッドに白い帯のカラーリングもこの車輌にはこれ以外ない程マッチング、社内はなんと2+1のクロスシートです。ずっと憧れてはいたものの、結局一度も乗らず仕舞いでした。1輌だけ解体されずに保存されており、いずれ復活しないかな、と期待しているところです。

こちらの動画でその現役時の魅力がすごくよく伝わってきます。

ガッタン、ギーヤー、という発車音が聞こえます。とてもスタイリッシュで複電圧車という複雑なシステムを搭載しているくせに、1975年製としてはかなり時代遅れのツリカケ駆動なんですよね。


模型の方は、ハセガワModemoの製品、ハセガワ、元長谷川模型は、静岡ではタミヤに次ぐ有力プラモメーカーで、特に「飛行機のハセガワ」として知られていますが、10数年前に鉄道模型に参入、名鉄の軌道線の他、江ノ電、箱根登山鉄道、嵐電など路面電車や小型車両のモデリングが得意のようです。このモ600形も適度なディテール、プロポーションの良さ、塗装に丁寧さ、いずれも満足の行くレベルです。

さて、鉄道模型再開ですが、まだまだちゃんとしたレイアウトを手がけるなどとは、時間的にも資金的にも無理がありすぎ、簡単な駅とか車輌庫のモジュールづくりとか手軽に楽しめる方法を模索中ですが、こうやって眺めているだけでも夢は広がります。