祇園祭後祭曳き初め

今更ながら京都の魅力にすっかりハマってしまった自分、関西人なのに祇園祭は一度も見たことがありません。山鉾巡行は3年ぶり、前祭の山鉾巡行は日曜日と重なってとんでもない人出になるのは想像に難くなく、色々調べてみたところ後祭の山鉾4基の曳き初めが20日水曜日に行われると分かりました。文政9年以来196年ぶりに復活する鷹山も曳き初めに参加するようです。

前祭の山鉾巡行をテレビ録画してじっくり見たので、祇園祭はもう満腹したような気もしたのですが、やはり実物を見てみたい。コロナ第7波が気になりますが、後祭の曳き初めがさほどの人出になるとは考えにくく、午後から臨時休業として、それでも一応念の為バッグにパソコンを放り込んで阪急9300系の人に。

新町通に南観音山、初めて見る山鉾の実物、かっこいいです。黒く塗られた車輪には南観音山と刻まれています。

工芸品や和装小物のお店の店頭に山鉾のミニチュアが並んでいます。下駄の値札の前が南観音山。

町家の格子窓が外され屏風や絨毯で飾られた座敷が開放されています。屏風祭と呼ばれる祇園祭中のイベントのひとつだそうです。

そのすぐ先に北観音山。南観音山同様、会所になっている町家の2階とボーディングブリッジで繋がっています。

新町通から三条通に入ったすぐのところに鷹山、黒光りする南観音山や北観音山と違って白木、「ようざん」ではなく「たかやま」です。ボーディングブリッジではなくタラップが取り付けられています。

櫓の上に立つ真松に止まっているキジ、これが見たかった。

麒麟の描かれた懸装品は西陣織で新調されたものですが、下2段の懸装品はかなり古いものに見えます。鷹山の歴史と復活の経緯については2年前に書かれたオマツリジャパンの記事が詳しいです。記事に紹介されているイスタンブールから贈られたトルコ絨毯がこれのようです。同じページに組み込まれた2年前の動画では鷹山は大船鉾から借りた唐櫃で194年ぶりに巡行に復活しているのが確認できます。囃子方は歩きながら唐櫃の後に続いています。

鷹山の車輪には「船鉾」と刻まれています。元々200年ぶりの復活を目指していたものが他の山鉾から中古部材の提供を受けられるようになって復活が4年前倒しになったそうです。

パイロンは木製。

鷹山の脇を抜け三条通の東側に出ると西側よりずっと人が多く、こちらが正面のようですが逆光。

キジをアップで撮ってみるとどうやら塗りが剥げてしまっているようです。昨日の大雨の影響かもしれません。

関西のメディアがほぼ全員集合してました。

囃子方が乗り込みました。まだ曳き初めなので屋根方はヘルメットに作業姿のまま、電柱の変圧器にはネットが掛けられています。鷹山の巡行のため半年かけて電線を移設したそうです。

祇園囃子が始まりました。浴衣だけじゃなくてマスクもお揃いの鷹の柄。

音頭取が前に立ち金地に日の丸の扇を高く掲げるとゆっくり動き出しました。扇の裏は銀地に紺色で鷹山のロゴ。

ちょっと斜めの角度で撮ると見目の好さが際立ちます。三条室町の交差点手前で止まって大拍手。この後どっちへ向かうのかと思いきや、引綱を反対側に付け替えて戻ってきました。山鉾には前後がなくどちらにも進めるとはビックリです。

三条通沿いの医健専門学校の学生さんたちが出てきて山鉾見物、窓の外がこれでは気になって授業は続けられず先生の粋な計らいかと。曳手は多くが登録した一般の人たちのようです。会社の制服を着たままのOLさんたちや、墨染の袈裟のお坊さんも。

三条新町に戻り再び引綱を付け替えてもう一往復、狭い三条通りに挟まれた東山をバックに鷹山。

新町通を覗くと北観音山と南観音山が並んで曳き初め。さらに四条通の南側にいるはずの大船鉾の曳き初めにはもう間に合わないかと。

北観音山の囃子方が下りる準備を始める一方、二往復した鷹山からは、何ともう一回という声。長年の準備の成果が実った鷹山保存会理事長さんの思いが込められた「もう一回」です。

囃子方の下に紐が上下するのが無いと思っていたら、片側だけにありました。3回目の曳き初めで196年ぶりの巡行は無事終了、三条新町に戻ると大拍手が巻き上がりました。

祇園囃子が聞こえないと空気が伝わらないので三往復をまとめた動画です。前半は医健専門学校の門柱に肘を立てて撮ることができたので手ブレが殆どないです。

岸和田のだんじりのようなものかと想像していたのですが、全く似て非なるものと分かりました。前にしか進めないか前後に進めるか、やり回しと辻回し、等々細かなところだけでも全然違っているのですが、基本的には「勇壮」なだんじりに対し、祇園祭は徹底して「雅」です。高く上に伸びる山鉾のかたち、美術品そのものの懸装品、鉦と太鼓と笛が奏でるちょっと悲しげな旋律、音頭取さんのかけ声と扇のしぐさ、全てが調和して雅、わずかな時間の曳き初めでも1200年の歴史を堪能させてもらいました。