金のカエル、銀の列車

梅雨時なので、カエルを見に行きたくなりました。行ったことのない場所で、駅から遠くない棚田をGoogle Mapを探していると河内長野市の流谷という集落に惹かれました。だいぶ前に長居の自然史博物館の売店で買った大阪自然観察地図Vol4南大阪編に天見の自然観察マップがあり、道に沿って、水田周辺にはカエルを食べるヘビ、とか詳しいメモがびっしり。高野線天見駅から往復4kmほどの里山歩きです。

小雨の中をビニール傘を差しながら歩くイメージをしていたのですが、晴れてしまいました。

難波から橋本行急行6000系8連、昭和38年東急車輛製の6003編成(6000系の第2編成)のモハ6004です。以前はこの製造銘板と並んで米国Badd社の英文ライセンスプレートが掲げられていたのですが、もう50年以上経っていてライセンス期間はとっくに完了、取り外されたものと推測します。

三日市町手前で6007編成とすれ違い、ここから30.3‰です。千早口からは完全に自分貸し切り、片開きドア、2段窓、南海伝統のふかふかシートです。床に台車点検蓋がある電車も希少価値がでてきたかと、蓋から快調な抵抗制御音を響かせています。

天見、流谷

山に囲まれた天見に到着、後ろ4両は6025編成。

天見駅には一度下りたことがあるような気がするのですが、記録は見当たらず、駅の様子にも記憶がなく、やはり初めてのかも。南海っぽい木造駅舎、駅名板の上には電灯、夜はどんな感じか見てみたいものです。

駅から300mほど歩いた国道371号の交差点名は出合ノ辻、何かロマンチックな伝説でもあるのか、と調べてみたらさにあらず。南北朝時代に楠木正成の南軍と足利幕府の北軍が「出合った」のがこの場所で、「安満見合戦」が繰り広げられたそうです。

谷の道へ入ると棚田が広がります。岩湧山へと続く道です。

一区画だけネットが張られた田んぼ、撮りそびれたものの稲の陰にちらっと子ガモ(コガモじゃなくて、アイガモの雛)たちが見えました。合鴨農法の田んぼで間違いないかと。放鳥が禁止されているのでネットで囲っているもとの思われます。合鴨農法について農家さんを見学させていただいたことがあり、その大変さも垣間見ているので、決して批判するつもりはありませんが、短い命で飛ぶことも許されないアイガモの雛たちが哀れではあります。

電柱のホオジロと電線のキセキレイ。

谷の対岸の流谷八幡神社、境内で地元の人達のイベントが行われているようなので橋を渡らなかったのですが、大きな丸い大樹は樹齢700年のイチョウ、大阪府の天然記念物だそうです。

棚田の奥には野生のアジサイが見事です。

オレンジ色の翅のトンボ、ミヤマカワトンボ♂です。初見かと思ったら以前♀に会ってました。天見川の水が綺麗です。

アサヒナカワトンボ♀です。こちらは♂に以前会ったことがあります。ホタルブクロの花の中奥深くへ小さな蜂が入って行きました。

田んぼの水面が自分の視点に近くなるとオタマジャクシがいっぱいるのが見えてきました。でっかいのちっちゃいの色々います。ニホントカゲも登場。

ひらひらっと舞って地面に下りた蝶、ぱっと見イチモンジチョウかなと思ったら、翅の外側に赤い模様、初見のサカハチチョウです。

もう1頭、外側もイチモンジチョウに似ているものの、ベージュのラインが血管のように浮き上がっています。サカハチチョウには春型と夏型があってこれは夏型、まだら模様の春型とは別種のように模様が違う不思議な蝶です。

翅を閉じたり開いたりしながらぐるっと回転してじっくりと楽しませてくれます。まるでファッションショー、ワタシ、キレイ?

流谷集落の中心部辺りまでやってきました。ヒメジョオンにヒメウラナミジャノメ。

ねむの木がきれいです。道は岩湧山まで続いているものの、この辺りで引き返すことにして来た方を振り返ります。現在地をチェックすべくスマホを取り出すと圏外でした。

川の上に張り出した木はビワ、手の届く場所ではありません。ヒメジョオンにモンシロチョウ。

道からちょっと逸れて高台に上がってみました。美しい集落です。美しい棚田を眺めながら坂道をゆっくり下ります。

これだけオタマジャクシがいるのに親はどこにいるのか、田んぼの隅にようやっとトノサマガエル発見、まぶたは金ピカ、まさに殿様の風格です。これで今日のファーストターゲットコンプリート。

トノサマガエルとダルマガエルの判別は難しいのですが、鼓膜の後ろの黒い部分がくっきりしているのでトノサマガエルで間違いないかと。個体差の大きいトノサマガエルで、黄緑の背中に黒い斑点が少なく、肩のラインもくっきりゴールド、かなり美形です。

何箇所か林道が分岐していて、岩湧山へ続いているようです。林道砥石谷線の分岐点、来る時この辺で尾羽を立てた小鳥がちらっと見えたのは何だったのかなぁ。

オオシオカラトンボが間近に止まってくれました。マツバキクにはスジグロシロチョウ。

イソヒヨドリ♀、年々人間に親しくなってきているように思います。

来る時にいたホオジロとキセキレイがまだ同じ場所で鳴いてます。天見駅に戻って来ました。今日もう一つのターゲット、紀見峠へひと駅移動します。

紀見峠

紀見峠駅で出迎えてくれたのはイソヒヨ君、やはり和歌山県です。今日2つ目のターゲットは、棚田を探している間にマップで見つけた、紀見峠駅から天見駅へ複線の上下線が離れて単線ぽくなっている区間で6000系を撮り鉄すること、6000系は橋本以南の単線区間には入れないので、単線もどき区間で撮り鉄というシャレです。

ヒメジョオンにベニシジミ、どこにでも咲いている雑草のヒメジョオンですが、蝶たちには欠かせない花です。

線路を挟んで谷の道と山の道が分かれ、山の道を行くと茅葺きの古い建物、養叟庵と紹介されています。室町時代の高僧で一休宗純の兄弟子、養叟の庵だそうです。中へ入れるのかどうかは不明。ここでもオオシオカラトンボ、シオカラトンボより多いです。

目的地に到着、山の道が180°回転して谷の道につながり、岩湧山への南側からの登山道が分岐している地点です。上り線の紀見トンネルと下り線の新紀見トンネルに分かれる場所、紀見トンネルが少し短いので僅かな区間ながら上り線が単線ぽく見える訳です。

300m先の踏切が鳴り出し下り急行が通過6000系トップナンバーです。

30000系こうや号がやってきました。続いて6300系、手前の架線柱がちょっと気になるものの上り線が写らないように8連がバッチリ収まりました。複線区間しか走らない6300系の単線もどき走行シーンです。

さっきの6000系トップナンバーが橋本から引き返して来るのを30分ほど待ちます。

付近を歩いていると小さな赤い鉄橋の下で鳥が水浴びしていました。ずっと会いたかったカワガラスです。カラスの仲間じゃなくて、英語名はBrown Dipper、茶色い潜る鳥です。

水浴びじゃなくて、水の中深く頭を突っ込んで水生昆虫とかを探しているようです。これまでに見たことの無い生態の鳥です。

と、踏切が鳴り出しました。カワガラスをもっと撮りたいところですが、電車が鉄橋を渡る轟音で逃げ出すのは必至、とっさの判断でレンズを鉄橋の上に向けました。

6000系が小さな赤い鉄橋を渡ります。登山口のポイントへ戻ります。30000系こうや号が通過。

6000系トップナンバーが戻って来ました。さっきの6300系と同じ構図を狙ったのですが、う〜ん、0.01秒シャッターを押すのが遅れました。連写することを思いつかなかったのが悔しいですが、いちおうセカンドターゲットコンプリートです。

駅へ戻ります。今日はオオシオカラトンボとイソヒヨドリが大当たり。

カワガラスを驚かせた6000系6007編成+6027編成が戻ってきました。惚れ惚れするようなコルゲート板の造形美と輝き、南海本線沿線で育った自分には今も憧れの銀の列車です。

単線もどき区間を上って紀見トンネルへ。登山口の分岐点はトンネルの真上です。

紀見峠駅近くにせせらぎの公園、また来ようと思います。

紀見峠駅は間違いなく初めて下りた駅です。無人駅とはいえ、トイレもきれい、登山靴の汚れを落として下さい、とバケツと水まで用意されていて、行き届いています。

今朝乗ってきた6003編成+6025編成が6300系と顔を並べます。側面は片開きドアと2段窓ですぐ分かる6000系と6300系ですが、正面からは6100系から6300系に改造された時に取り付けられたスカートで簡単に見分けられると気付きました。

高野線撮り鉄、乗り鉄、鳥鉄というと橋本から南の山岳区間が思いついてしまいますが、天見、紀見峠もかなり楽しいです。