豪雪のあと - 福井鉄道編

去年の福井行きではキーボに乗れなかったことと、福井鉄道とえちぜん鉄道を含め、市役所前-田原町間の僅かな区間だけ乗り残していたことが気になってました。それに最新の情報は見つからないものの、えちぜん鉄道三国芦原線沿線の坂井平野にマガンやコハクチョウが来ることも少なくないらいしく、北帰行が終わらないウチならひょっとしてと、春の18きっぷ最初の土曜日に福井へ向かうことにしました。

琵琶湖の朝日がきれいです。ところが湖西線ドドメグリーン117系の車内放送がめちゃうるさくて、落ち着いて景色を眺めることも、眠ることもできません。アプリで測ってみたら90db、よほど車掌さんに文句を言いに行こうかと思ったのですが、先頭車に乗っていたので、がまんしました。

湖西線永原辺りからちらほら地面に雪が残っていたのですが、北陸トンネルを越えた南今庄では待合室の屋根に20cmくらい、湯尾付近では田んぼは真っ白。

越前武生

武生に到着。武生市というのは無くなって、越前市になっているとは知りませんでした。福井鉄道880形で出発、名鉄美濃町線で乗った記憶があるのですが、福井では初めて。連結部分は営団地下鉄6000系を彷彿とさせます。

運転台脇に竹箒、積雪時には何かと役立ちそうです。戸締め装置は此ノ戸と他ノ戸の2連式。

北府きたごの車庫に600形、200形、それにデキ3が留置されていました。デキ3は入換機として現役らしいのですが、600形、200形はずっと休車状態。

その先の800形は前面窓に休止中と張り紙。クロスシートの超低床車ですが、フクラムが4編成も導入されたので、出番が無くなったようです。名鉄美濃町線でモ600を置き換え冷房化バリアフリー化対応した複電圧車で国産初の超低床車、廃車するにはあまりにももったいない車両です。

三十八社

最初の目的地、三十八社駅に到着、田んぼは真っ白。駅西側でキーボを狙うも逆光で駅東側へ移動。F1000形のフクラムさくら色がやってきました。急行なので三十八社は通過、ポイントをカバーするトンネルを抜けていきます。

線路脇に自分と同じことを考えている人がもうひとりいました。気温は15℃くらいでも真っ白な不思議な空間、照り返しが眩しく厚手のジャケットが暑いです。昔、春スキーでTシャツで滑ったことを思い出しました。

越前武生行880形は三十八社に停車。

赤十字前

880形で次の目的地赤十字前へ向います。独特の名鉄フォントが渋い。

赤十字前に到着、駅の外れの留置線に保線車両と並んでいるはずのデキ11が見当たらず一瞬焦ったものの、880形が出ていくと目の前の駅舎前に留置されていてビックリ。2月の豪雪では大活躍、またいつでも出動できるようにスタンバイしているようで、じっくり観察できました。

大正12年11月生まれ、37年ぶりという豪雪で大活躍はメディアでもずいぶん取り上げられました。地元民でもない限りデキ11の除雪シーンにはめったにお目にかかれないですが、スタンバイしているところを撮れたので満足。

たぶん真鍮削り出しの福井鉄道社紋の銘板、レールの断面の周りにフク井、と読めます。デキ11の切り抜きは1のハネの部分だけ塗られていないのは何故でしょう。

小さな車体に不釣り合いな巨大ヘッドライトや旋回窓が何とも魅力的、一枚の鉄板を曲げた屋根は端っぽを細かく切ってビス止されていたり、極めて簡易な車体構造です。木造ボディに載っかったパンタグラフの銘板は風化して半分欠けています。この豪雪で大活躍も、脱線してしまったり非力さが明らかになり、予定より前倒しで除雪車両の置き換えが決まったそうです。次の冬にはもうこの場所にいないでしょうね。

自身で除雪したかもしれない雪とデキ11が撮れました。古めかしい台車とスノウプラウの裏側。

駅の外に出て急行田原町行を待っていたらいつまでたってもやってきません。改めて時刻表をチェックすると土日は運休、土日の日中の急行は鷲津針原行のみと分かりました。不均衡な1時間3本のダイヤはやはり不便です。追い抜きがあるわけでもなく、相互直通以前の普通だけ20分毎でいいのでは。

急行越前武生行のフクラムブルーがやってきました。

普通越前武生行はフクラムオレンジ。あともう1編成グリーンがあるはずですが見かけませんでした。

武生のスーパーで買ってきたお弁当を広げようと駅前の公園へ行ってみると排雪の山が融けてなくて入れません。駅のホームのベンチでデキ11を眺めらながら食べることにします。真正面の架線に停まったカラスが物欲しげに自分を見ています。食べ終わってベンチを立つと、カラスはベンチに下りてきて何か落ちていないかチェックしていました。

770形がやってきました。元名鉄岐阜市内線揖斐線用で880系より車歴は若く、竣工当時からクーラーを搭載していたので窓は固定で開かず、岐阜市内線の急カーブ対応でボディも細身、正面からは青い帯が細いので880形と見分けられます。なんとなく都電7000形に似てます。

キーボに乗る

キーボがやってきました。ポイントごとに立っている緑の円筒は凍結防止の何かと推測。

キーボ車内からデキ11を見送ります。キーボ運転台脇にも竹箒。

初乗車のキーボの車内、清潔感たっぷり。車体の車番表記や車内にも製造銘板は見当たらず、検査表にL-02号と車番、形式L型の第2編成です。つまりキーボにはもう1編成あるものの常に予備車扱いのようです。Wikipediaによると2編成で6億円、国と福井県が半分ずつ負担とあります。国内随一といっていい可愛い電車ですが、税金の無駄遣いではないかという懸念が拭えません。

通常のキーボ運用は鷲津針原-越前武生間1日3往復1運用だけです:

鷲塚針原 09:49 12:09 12:49 15:09 15:49 18:09
越前武生 10:47 11:14 13:47 14:14 16:47 17:14

2連接で収容力がなく、設計当初からラッシュ時を外しての運用が前提だそうです。それだけじゃなくて鷲塚針原では40分、越前武生でも27分の折り返し時間があり、どう考えても非効率で、相互乗り入れのシンボルとしても予備車無しの1編成だけで十分かと。検査や故障の時は、フクラムを借り入れるか、あるいは田原町まで三国芦原線の大型車、田原町から880形でも全然問題無いでしょう。ちょっと乗っただけでは分からない事情があるのかも知れませんが、地方での鉄道相互乗り入れという偉業を成し遂げただけに、他都市のモデルケースになるような運用が求められます。キーボ撮り鉄乗り鉄が目的でやってきた福井ですが、どうにも気になります。予備編成は3連接に改造して福井鉄道に貸出すか、あるいは他社へ売却が適切かと。

併用軌道の後部車窓、足羽川を渡る880形です。

市役所前で上下線から福井駅前への支線分岐の他、上下線の渡り線があります。越前武生から福井駅経由田原町行の場合、ここで運転手さんは運転台を移動してスイッチバックしなければならず運用の大きなネックになっています。越前武生発福井駅経由田原町行は福井駅までの500mの区間を往復するだけで、経由しない場合より17分も余計にかかります。

高知駅-はりまや橋のように1kmくらいあれば電車に乗る意味がでてくるのですが500mはあまりにハンパです。それでも2007年から田原町-福井駅間のシャトル便が運行されていたそうですが2010年に廃止されています。色々工夫は重ねられているものの抜本的な対策は至っていないでいるようです。ちなみに今月23日から市役所前停留所は福井城址大名町停留所に改名されるそうですが、福井城へは福井駅からの方が近いです。

去年は楽しいだけだったのが2回目の訪問で、これがベストなのか、と色々気になることが出てきます。

初乗りの市役所前-田原町を行く880形です。ほどなく田原町、正面にはえちぜん鉄道三国芦原線の踏切、このまま直進する路線であれば鉄道の平面交差になっていたはずですが、電車は90°カーブして田原町駅に到着。

この項続く