男里川、台風の爪痕

台風21号で南海男里川橋梁の橋脚が陥没、無事だった上り線を使って11月1日から単線運行が開始されました。かけがえのない鳥見定点観察ポイントの男里川河口干潟がどうなっているか、気が気でなかったのですが、先週も台風22号接近で行くことは叶わなわず、漸く今日行くことができました。

難波駅の案内表示、本来なら9:45と10:15に特急サザンがあるはずですが運休、10:03の羽倉崎行も本来は和歌山市行。つまり泉佐野-和歌山市間は通常毎時サザン×2、普通×4のところ普通が2本だけの運行です。

空港急行のかぶりつき席をゲット、南海の運転手さんには珍しくバッグを貫通ドア前の床に置いてくれました。泉佐野で先行の和歌山市普通車に乗り換え。

南海単線運転区間

岡田浦駅から運転手さんの頭の後ろの窓にiPhoneをピタリと押し付けて動画を撮ってみました。

樽井駅は難波方面へ折り返し用の3番線に入線、樽井からは複線を徐行しながら上り線を逆行、歪んだ下り線を横目に男里川橋梁を渡り、尾崎駅手前で下り線へ渡ります。よくぞ男里川の両側の駅に渡り線があったものだと思います。

尾崎駅改札口正面の「中華 上海」がしっかり営業していました。この他にコンビニ化されていないキオスクが営業しているだけで、駅ビル全体がほぼシャッター街、前回来た時にはここもシャッターが下りていてついに全滅かと心配していたのですが、良かったです。

お世辞にも綺麗なお店とはいいがたいものの、何を頼んでもハズレがないです。オムライスもグッドです。改札の外真正面にあり正確には駅ナカとは言えないかもしれませんが、南海沿線で貴重な存在の駅ナカ飲食店です。

単線運行が始まったにも関わらず、平日朝のみ代行バスが箱作から泉佐野まで継続して運行されている旨の掲示があります。日中は普通車が2本だけ、平日ラッシュ時も3本だけでは通勤通学客をさばききれないためです。

男里川河口左岸

尾崎駅から10分ほど歩くと尾崎漁港、水平線付近が靄ってますが快晴。

漁港へ帰ってきた漁船、すっくと立ってる漁師さんがカッコいいです。表情から大漁と思わせます。

関空に着陸する飛行機も靄っているものの、かろうじて尾翼の中華航空マークを確認、台北からのA330-300。

ノラネコが5匹、最後に出てきたこの子が可愛かった。イソヒヨドリ♀が岸壁に下りてきました。

いつもの場所で、いつものシロチドリ。フラフラじゃなくて、まっすぐ歩いているのですが、こうやって見ると足の運びがやはり千鳥足。

ヒドリガモたちが帰ってきています。

男里川河口左岸に着いてびっくり、河口の景色が全然変わってしまっていました。

川幅がやたら広くなっていて対岸まで50mくらい、水深も深そうで、見たことない場所に新たな中洲のようなものもできています。この時点の潮位は65cmくらい、4月に右岸まで歩いて渡った時と見比べ、とても同じ川に見えません。4月の写真は潮位が10cmくらいだったのですが、潮位だけでここまで川幅が変わるはずはないです。河原の地形も見覚えがない形に変わっています。明らかに台風21号の仕業です。

ウミネコとユリカモメが一緒になって飛んでます。

ヒドリガモ。

クロベンケイガニです。なんかヌルヌルしていると思ったら、すぐ上の方にあったのはたぶん抜け殻。

川の景色もすっかり変わってしまっていました。どこがどう変わったか正確には言えないものの、中洲の雑草が流されたりなぎ倒されていて、やたらと見晴らしがよくなっています。

コチドリ(たぶん)とイソシギ。

とても美形なイソシギです。

菟砥うど橋を潜って南海男里川橋梁へ向かってみます。橋の向う側がいつもお世話になっているファミマ。セグロセキレイが川面を覗き込んでいます。

南海男里川橋梁復旧工事

下り電車が複線を逆行中です。川にはかなりの数のマガモやカルガモたちが群れています。

コガモもいます。

セグロセキレイとカワラヒワたち。2週間前ここを濁流が押し流した訳ですが、色んな鳥たちが暮らす環境は維持されたようです。

問題の橋脚、50cmほど陥没しているのがはっきり分かります。

線路は上下だけでなく横方向にも大きく歪んでいます。10月22日夕方和歌山市行普通車がここを通過、大きくバウンドして停止したそうです。よくぞ無事に渡りきれたものだと思います。奇跡です。

実はこの鉄橋で昭和42年に11001系(後の旧1000系)5両編成の和歌山市行急行が脱線転覆事故を起こし5人の方が亡くなられています。小さい時父親を鉄道事故で亡くした自分は鉄道事故にはかなり敏感で、そのため、この男里川橋梁を渡る電車を撮るのは避けていました。

でもちょうど50年前に亡くなられた人たちが、まだあんたらこっちへ来るの早いで、と守ってくれたような気がしてなりません。

ショベルカー4台で急ピッチの復旧工事が行われています。川底に陥没した橋脚をどんな工法で持ち上げるのか分かりませんが、まずは問題の橋脚への川の流れを堰き止める工事を行っているようです。

下り電車が現場を通過。尾崎まで乗車してきた電車もそうだったのですが、この区間だけ、運転手さんの他、安全確認のための乗務員さんが必ず添乗することになっているようです。

できたばかりのまだ地盤の弱そうな、ぎりぎりの幅の土手の上をショベルカーが何度も往復して土嚢を運んでいます

見惚れてしまう運転技術です。

ショベルカーがショベルで杭を打ち込んでいます。ブルドーザーのようなブレードも付いていて、1台何役もこなせるようです。

上りの2000系電車がゆっくり通過。この袂にお地蔵さんの小さな祠がありました。特に何も書かれていないのですが50年前の事故の犠牲者を弔うものかと。

男里川河口右岸

ファミマのイートインで缶チューハイ、一息ついて右岸河口へ向います。

右岸の河川敷は左岸以上に荒れています。10cm以上はありそうなでっかいヤツがバンザイポーズのままじっとしています。アシハラガニで間違いないかと。

カワラヒワとイソシギ。

一番心配していたハクセンシオマネキ、無事でした。

ハクセンシオマネキの巣穴を踏みたくないので、ハシゴを上って一旦堤防の外へ出ます。

いつもの堤防の上からの1枚、景色の様変わりにしばし唖然としました。浜辺には山のような藁のようなものや木くず、そこにペットボトルとかのゴミが大量に混じっています。水辺に行くには気持ち悪いもののゴミの山を踏み越えるしかありません。左岸はこんな状態じゃなかったので、海流のいたずらかと。清掃ボランティアの人たちがここの浜辺を掃除されているのを見かけたことがありますが、とてもその規模のゴミじゃなく、かといって大阪湾唯一の天然干潟に重機を持ち込む訳にも行かないはずで、考え込んでしまいます。

河口右岸先端部分は砂嘴のようになっていて、その内側に浅瀬と入江ができています。

砂嘴の先端の方へ行ってみるとシロチドリ。振り返って河口側を見ると、見慣れた男里川河口とは全く違う光景、清掃工場の煙突だけが男里川であることを思い出させてくれます。

いつも水辺にいっぱい打ち上げられている緑の海藻が全然ないことに気づきました。付近の海底も激しく台風にかき回されたに違いありません。

清掃工場下へ回ってみるとハクセンシオマネキが砂団子をびっしり敷き詰め、元気にしていました。

ヤマトオサガニも無事です。

イソシギの手前にいるのは、何とキアシシギです。

ここでよく会える鳥ですが、基本的に旅鳥で、もう南の国へ向かっていないとおかしいです。

でも、台風でぐちょぐちょにされた男里川河口に残ってくれているのは嬉しい。キアシ君の手前もアシハラガニのようです。

地形が大きく変わり、たぶん生態系も大きく変わってしまっていると思われるものの、今日見た限りでは、シギチやカモ、カモメたち、それにカニたちもこれまで通り暮らしてくれていることが確認できてホッとしたのですが、この変化がポジティブなものかネガティブなものか、はっきりするまで時間がかかるはずで予断は許されないです。

日が陰ってきて潮位も上がってきました。浅瀬に浮かんでいるのはウミネコとユリカモメ。

日が沈むまでしばらく待ってみます。露出をいっぱいに上げてジョウビタキ♀とわかりました。

水平線付近はやはり雲が厚く、海には沈んでくれません。

関空連絡橋を行く金色の電車、よくみるとラピートです。