スティーブ・ジョブズ神の交渉術

アップル製品にはずっと憧れてきたものの、一度も買ったことがありません。

自分が最初に買ったパソコンはNECのPC-8801ですが、この頃に初代マックが発売されていました。しかし価格は8801の3倍以上、20代のサラリーマンが趣味で手を出す価格じゃなかったです。でも結局大枚はたいたフロッピードライブもない8801は殆ど使いこなせず、あの時マックを買っていたら、あるいはマックがもう少し安かったら、自分の人生変わっていたと思います。

2台目のパソコンは、10年近く時間が経って、IBMのPS/V Visionでした。同じ頃、初代パワーマックが発売されていましたがPS/V Visionの倍の価格、カラークラシックもまだ販売されていたはずですが、機能的に圧倒的にPS/V Visionの勝ちでした。Perfoma588がもう少し早く発売されていたら、やはり自分の人生変わっていたと思います。

その後はDOS/V→Windows3.1と流れてきたので、マックユーザーにはなれませんでしたが、Windows95発売の頃、Performa588の販売に携わったことがあります。当時第1次パソコンブームといった状況で、高倉健が「おれにも出来るじゃん」とさんざんテレビCMやっていたのですが、健さんがパソコンで何をやっていたのかも分らない状態で、買ったパソコンは単なる置物になることが大半だったようです。しかし、マックは初心者でも間違いなく、ちゃんと使える(役に立つ)パソコンで、それなりに売れました。

この当時、アップルの業績は最悪だったのですが、超一流大学出のアップル社員さんたちのマック販売に対する熱意の高さが強く印象に残っています。この時の自分のパソコン販売は結局失敗だったのですが、iMacの発売があと1年早かったら、自分の人生が変わっていたと思います。つまりスティーブ・ジョブズがもう少し早くアップルに復帰してくれていたら、としきりに残念がったことがあります。

それほど憧れていたスティーブ・ジョブズですが、この本を読み始め、そんな憧れはすっとんでしまいました。確かに人並み外れた才能の持ち主で、人並み外れたセンスの持ち主なのですが、人並み外れてわがまま身勝手で、人並み外れた独裁者で利己主義者です。仲間や部下を使うだけ使って功績は全て独り占め、すぐに人を怒鳴りつける、重箱の隅をつっつくようなことへのこだわり・・・

こんな奴と絶対一緒に仕事したくないと思ってしまいます。まぁ、自分など端から相手にされないでしょうが・・・

しかし、この本をさらに読み進めると、もう一度見方が変わります。欲の塊のようであっても、給料無しで働いていたのは事実ですし、マネーのためのマネーゲームをこの人はやっていません。巨額の利益や資金は新しい革命的な事業を行うために使われています。それが実際にiPodやiTMS、iPhone、トイストーリーやMr.インクレディブルを生み出しています。

永遠のアメリカンドリーマーと表現すればいいのでしょうか・・・読み終わって、もう一度憧れの対象に戻っていました。

「交渉術」の本としては、とてもジョブズの真似を出来るとは思えず参考にならない気がします。しかし、知っている固有名詞がいっぱいでてくる生々しさを背景にした、ひとりの天才の生き方には、学ぶこと、感じることが少なくないはずです。

スティーブ・ジョブズ神の交渉術