ガガブタ

ずっと見たかった花が見頃との情報を見つけ交野市私市の大阪公立大学附属植物園へ。天満橋3番線に下りるとやってきたのは準急、枚方市まで次の特急より早いかどうか分からないけどとりあえず乗り込みました。

運転室後ろの席です。狭い運転席で運転士さんが座ると殆ど前方の視界が効きません。1969年製の2400系、南海7100系と同い年の53歳ですが、7100系より年を感じさせる車内や運転室です。車内アナウンスで出町柳行じゃなくて何と三条行と分かりました。調べてみると三条行準急は土日祝日中2本と深夜に1本、平日深夜1本だけと分かり、テンションが上がります。

準急は枚方市まで逃げ切りました。「準急・三条」の種別行先表示、鴨川べりにあって簡単に京津線に乗り換えられた三条駅の様子が目に浮かびます。京阪2400系は南海7100系同様に通勤電車冷房化の先駆、屋根上に分散型クーラーが8台は登場時のまま、昔の家庭用クーラーのように電気代はハンパないかと。向こうに並んだ1977年登場の1000系は同じ分散型クーラーも大型のが4台載ってます。

行き止まりの私市駅、元々生駒枚方電気鉄道により昭和4年に開業した路線で、この先、現在の近鉄生駒駅まで線路を伸ばし、王寺駅までつながる計画だったようです。

枚方と王寺を結ぶことにどれだけの需要予測があったのか甚だ疑問、生駒山地北端を山越えするだけの技術や資金力自体持ち合わせていなかったようですが、私市駅前の広い敷地で生駒へ向かう意思はあったことを感じさせます。

私市駅から東へ向かうとくろんど園地、南へ向かうとほしだ園地、いずれも歩いたことがあるものの結構キツイ道のりだったので一度っきりしか行ってません。駅から西側へ坂道を下ると水辺プラザという気持ちのいい公園、川はおりひめひこぼし伝説発祥の天野川です。

大阪公立大学付属植物園水生植物エリア

天野川の橋を渡ると目的地の大阪公立大学付属植物園、入口の土手に咲いた黄色い花はオミナエシと調べなくても分かりました。

大阪府在住の65歳以上は150円。入口右手にスイレンの咲いた水生植物エリア。

目の前にショウジョウトンボ。こっちを向いているスイレン。

花びらの多い純白のスイレンはスノーボール。土手にはキキョウ。

食虫植物と分かる毒々しい花はアミメヘイシソウとヒメヘイシソウ、いずれもフロリダ辺りメキシコ湾沿いに分布する食虫植物です。

鮮やかなハゲイトウです。交尾中の青いシオカラトンボどうし、青いメスっているのか調べてみたものの情報は見つからず。ひょっとして…?

コハクチョウも自分も大好物のマコモです。コハクチョウが食べるのは地下茎、自分が食べるのは肥大化した新芽の天ぷらです。

小さな黄色い花はミズキンバイ、千葉県、神奈川県、高知県、宮崎県でしか確認されていない絶滅危惧種です。

ずっと会いたかった花、ガガブタです。漢字では鏡蓋、英語ではWater Snowflake。

花びらの周辺に生えた毛のようなものは、毛じゃなくて花びらが裂けたものだそうです。期待通りの美しさ清楚さですが、コンクリートの水槽で栽培された花なので、偶然山道で見つけたマルバマンネングサと比べると感動は1/3くらい。

交尾中のキイトトンボ、初見のはずです。

今まで見たイトトンボと比べてずっと大きな出目金です。

さっきとは別の場所にもガガブタ。横からの姿もチャーミング。

北海道に咲くコウホネ、ネムロコウホネ。赤紫の密集花はミソハギ。

ベニイトトンボです。

さっきのカップルとは別のぼっちのキイトトンボ。シオヤアブが登場。

展示実習室周辺

展示実習室では牧野富太郎博士の展示。「友だちをよく知ってみんなに伝える」、知識は全く及ぶべくもないものの、自分の場合友だちとは、草花、鳥、昆虫、それに電車のことになりそうです。

園内マップのポイントCにいます。長い並木道の日本産樹木見本園が伸びていて、木陰の道の両側には1本ずつ同じ種類の樹木が植えられていています。

枝ぶりが面白いスダジイ(シイ)の木、樹木にも興味はあるもののいつまでたってもなかなか覚えられません。道から外れた樹木にも1本ずつ名前が掲げられていて、テーマパーク的な長居植物園よりずっとアカデミックです。植物の世話をしているのも庭師さんや園芸会社じゃなくて学生さんたちのようです。

赤紫のトラノオのような花はウラジロフジウツギ。

見覚えのある白い花はハナゾノツクバネウツギ、街中のどこでも見かけるアベリアの和名です。

ひらひら舞い続けていたホシミスジが漸く止まってくれました。ロープに止まったオオムギワラトンボ(オオシオカラトンボ♀)。

大きなユリノキ、樹皮の模様が特徴的、今日はこれだけでも覚えておきたいと思います。2本並んだユリノキ、英語ではTulip tree、花がユリにもチューリップにも似ているそうですが、花期は終わったばかり。

緑がかったヒメコガネと青みがかったヒメコガネ。

植物園の山道

おすすめコースの道標を頼りに歩いていたのですが、おすすめコースは園内マップのポイントM辺りで終了になってました。まだ園内の僅かな部分しか回っていません。

ポイントMから奥に入ると急に山深くなってきました。

お久しぶりのヒメウラナミジャノメ。真っ白な小さな蛾はウスアオエダシャクです。

カサの縁がひび割れしている白いきのこはヒビワレシロハツと思われます。

どんどん山深くなってきました。もうとても植物園じゃなくて普通に山の中。水生植物エリアや展示実習室辺りにちらほらいた人たちもいなくなって、だれもいません。

ポイントTまでやってきました。まだ山道は上の方へ続いているのですが、今日はここで引き返すことにします。

笹の葉にヒカゲチョウ。

開翅したベニシジミとヒメウラナミジャノメ。

メタセコイアに囲まれた小さな池、ここにも秋篠宮殿下の足跡。殿下と自分は趣味が合うようです。

池の畔にオニユリ。足元にハグロトンボが下りてきました。

スイレンプールのスイレンを見て、全体の1/4くらいしか回っていないものの、今日の植物園はここまでとします。

前から訪ねてみたいと思っていた大阪公立大学附属植物園、足繁く通うことになりそうです。植物園だからと半袖で来てしまったのですが、多少暑くても長袖、ネッククーラーとそれに虫よけスプレーも必携といえそうです。

私市

水辺プラザの向こう、天野川の滝壺に飛び込む鳥たちが見えました。慌てて水辺プラザを横切り滝壺に駆けつけた時はもういなかったもののツバメだったようです。

滝壺の石壁に止まったのは未成熟のショウジョウトンボ。

ハグロトンボとシオカラトンボです。

滝壺に流れ込むのは滝じゃなくて天野川砂防堰堤、明治32年築の登録有形文化財です。

天野川沿いを少し歩いてローソンで一服、駐車場の向こうに交野山の巨岩が見えました。9年も前に登ったことがあります。

天野川沿いを交野市駅辺りまで歩いてみようかと思っていたのですが鬱蒼とした道なので止めておきました。私市駅へ向かうと、なかなか趣きのある私市の町並み。物部守屋が敏達天皇の皇后、豊御食炊屋姫尊(とよみけかしきやひめのみこと、後の推古天皇)にこの地を献上、私市は后(きさい)に由来するそうです。極めつけに古い歴史のある地です。

と書いていて生駒枚方電気鉄道の人たちの考えに思い至りました。皇后に献上されたほど古代に肥沃な地として知られた交野と、法隆寺にも間近い王寺を結び、古代の繁栄の復活を目論んだのかも知れません。私市から生駒を結ぶ国道168号、磐船街道は明日香や藤原宮などの古代の首都と淀川を結ぶ重要な道でもあったはず、さらに国道168号は十津川、熊野、新宮へと繋がっています。ひょっとしたら生駒枚方電気鉄道は紀伊半島銃縦断鉄道を夢見ていたのかも、と想像を膨らませてみました。でも、私市からの磐船街道はいまも片側1車線のワインディングロード、バスも通っていない訳で、人流は限られています。たとえ開通していたとしても、戦時中の不要不急路線としてレールは剥がされていただろう、とまで思いを巡らせてみました。

訂正追記(2023/7/21): 交野市駅から私市、星のブランコ、磐船神社を経て、田原台一丁目(四條畷市)行の京阪バスが土日祝日のみ2往復が運行されていて、田原台一丁目から生駒駅へは奈良交通のバスが結構頻繁に運行されていると分かりました。いずれ試してみたいと思います。

さらに追記(2023/8/28):いずれ試してみたいと思っていた交野市駅と田原第一丁目結ぶ土日祝日のも2往復のバスは9月3日で廃止だそうです(参考)。生駒枚方電気鉄道の夢はさらに遥かに。

私市駅西側の踏切でちょっと撮り鉄、王寺発枚方市行、じゃなくて私市発枚方市行です。

金網に何故か時計。止まってると思いきや、正確に動いていてびっくり。まだ2時頃とばかり思っていました。それほど植物園が楽しかったということのようです。