山の辺の道の小さななかまたち

大和は 國のまほろば たたなづく 青垣 山ごもれる 大和し うるはし、「まほろば」とは「素晴らしい場所」という意味だそうですが、山の辺の道、なぜ今まで行ったことがなかったのか、と悔やまれるまさに「まほろば」でした。

天理からか、桜井からか、どちらからアプローチするか迷って、桜井から北へ向かってみることにしました。大阪線の5200系に乗りたい、というのがその理由。

初瀬川と名を変えた大和川の土手にはヒガンバナ、川の中ではダイサギがコツコツとやってます。

遠景は三輪山、田んぼは収穫間近です。

三輪の町の街道っぽい道とコダチベゴニア。

大神(おおみわ)神社裏手の石段を上がって行くと、一瞬タイムスリップしたような光景が目の前をよぎりました。

狭井(さい)神社を過ぎると山の辺の小径になりました。今日の小さななかま第1号はヒメウラナミジャノメ。

小径に咲くあでやかなムクゲ。

そのちょっと先、狭井川の手前の整備された公園からしきりに鳥の気配がします。山の辺の道からちょっと逸れたところにあって、訪ねる人は少ないようです。公園には遺跡のようなものもあって、曰くありげですが、帰ってから調べても公園の名前もわかりませんでした。

この木の中に5羽くらいいそうですが、飛び回っていてなかなか撮らせてくれず、これが精一杯、エナガです。

松の木にはメジロ(色補正済)、鳥さんたちが上手く撮らせてくれないので、ツマグロヒョウモン♀をじっくり撮影。

公園でちょっと長居をしすぎました。先へ進みます。ヒメジャノメです。ヒメウラナミジャノメとよく似ていますが、表裏とも蛇の目の数や大きさ、レイアウトが違ってます。

もう刈り入れの終わった田んぼも。

九十九折の道、石段、林の中の道、短い区間でさまざまに変化する道も山の辺の道の楽しさのひとつ。

足を踏み入れていいのかとまどってしまう玉砂利が掃き清められた桧原神社、その西側にトンボのいそうな二つの池が並んでいるのを地図で見つけ行ってみることにしました。ふたつまとめて井寺池と呼ばれているようです。

ハイキングコースというよりただの農道みたいな池の廻りの道を歩いていたら、いました、いました、大阪城ですっかりお馴染みになったアオモンイトトンボです。

こちらは初めてお目にかかるアオモンイトトンボ♀。

ヒメジャノメに似ていますが、翅の後ろがギザギザのヒカゲチョウです。目の前の葉っぱの切れ込みはこの子が食べた跡ではないでしょうか?

こんどはウスバカゲロウ、胴体より長い翅、小さな頭、長い触覚、トンボではなくアミメカゲロウ目という全く別の昆虫です。

形はシオカラトンボですが、目もお腹も緑です。ムギワラトンボではないシオカラトンボ♀のようです。

アオモンイトトンボはもうそこら中にいて、珍しくなくなってきました。

冒頭に掲げた「大和は國のまほろば」の碑が草むらのなかにありました。古事記の倭建命の歌ですが、川端康成の筆によるものだそうです。

西側の池の向こうに大和盆地が広がっています。「青垣 山ごもれる」なかで、遠く二上山も望める絶景ポイントです。

碑文の前にアオモンイトトンボがやってきました。「どうだい、ここ、まほろばだろう」と自慢しているみたいです。

アオモンイトトンボ♀、その向こうの草むらにはトノサマバッタ(たぶん)が隠れていました。

ヒラヒラとミスジチョウコミスジがやってきました。倭建命も川端康成も、そして今この時も変わらない、ここはまほろばです。


桜井駅を出てから既に3時間経っています。4km程度の道のり、1時間もあれば済むところ、寄り道をしすぎたようです。まだ午前中だというのにカメラのバッテリーもやばくなってきました。

桧原神社門前のお茶屋さんで一休み、携帯充電器でカメラを充電、自分は当地今西酒造の三諸杉の冷酒で充電です。汗がつーっと引いて行きます。

充電しながら茶店前の柿の木をボーッと見ていたら、キレイな鳥が木の上に、たぶんヤマガラだったのではと思うのですが、充電器を外して撮ろうとしたら飛んで行ってしまいました。

次に出てきたのはこれ、

爬虫類の苦手な方にはごめんなさい、シマヘビとカナヘビです。

で、まだ腰を上げられず引き続きボーッとしてたら現れたのがこれ、

純正のオニヤンマ!これまで度々見かけてはいるものの、止まってくれたのは初めて、独特のぶら下がって止まる姿、日本最大のトンボです。

もっと撮りたくてつい近づきすぎ、あっという間に行ってしまいました。

先へ進みます、道自体が色っぽい山の辺の道です。

イソヒヨドリ♀、これも初めてお目にかかります。

土蔵のある家、すれ違う人たちとのあいさつ、広がる大和盆地の風景、心地よすぎ。

古い家だけでなく新しい家も交じるところ、アンテナにモズ!かなりいい感じで撮れました。

小さな水の流れをのぞき込むとハグロトンボの♀と♂

倭建命のお父さん景行天皇陵、その先に見事なヒガンバナの群生。

順にメドウセージ、トレニア、キクイモです。調べるの苦労しました。

ハナトラノオの蜜を吸うハチ、ハチの種類はわかりません。

訂正:この投稿を読んでいただいた方からスズメガの仲間ではないかとご指摘いただきました。スズメガの一種ホシホウジャクと思われます。

倭建命のお祖父さん崇神天皇陵までやってきました。まだ山の辺の道南コースの半分くらいですが、カメラのバッテリー残量もほぼ限界、続きは先の楽しみにとっておくことにします。

上の方からピーヒョロロと聞こえてきます。古墳の高い木のてっぺんにトンビ。

光学ズーム+デジタルズームでバッチリ撮れました。

柳本駅から桜井線の105系電車で帰ります。JRでそのまま帰ると高くつくので、天理で近鉄に乗り換えます。2両編成の後ろは昔ずいぶんお世話になった、元常磐緩行線-千代田線の103形1000番代改造車。

母が山の辺の道を愛し、いくつもの歌を詠んだワケがよくわかりました。短歌のネタが無限にある山の辺の道です。自分は短歌ではなく、ブログと写真で詠むことにします。これから何度も通うことになりそうです。