ゼロの焦点

 

セロの焦点、はっきり言って駄作でした。清張は結構読んでいて原作を読んでいるはずですが、記憶がありません。なので、原作と映画がどこまで違っているのか、わからないのですが、清張に期待するトリックや謎解きといった要素は全然なくて、時代様相を描いたサスペンス物ですね。

あれだけ悪役で登場した鹿賀丈史が最後では突然いい人に変わっていて、なぜそうなったのかとか全然描かれていないし、物語のプロットとして一番重要なはずの中谷美紀が西島秀俊を殺さなければならなかった理由の説明も希薄です。

それと時代考証がサイアクです。特に清張作品なので期待通り鉄道が何度も登場、上野駅で傷痍軍人がアコーディオン弾いていたりするシーンはいいのですが、改札を入ると急行北陸を毎度おなじみのC11227が牽引してます。

昭和32年当時、東北本線や高崎線はずっと前から電化していたはずです。ローカル専用のC11に上野駅発の夜行急行を牽かせるなんて、時代を描こうとする映画作品として失格、SLを出せばOKという発想は浅はかさです。

いきなり近鉄特急が出てきた時には思わず笑ってしまいました。大井川でロケするにしても程があるでしょう。金沢市内線の路面電車のデザインもひど過ぎ、北陸の主要駅金沢駅も田舎の小駅になっていました。

ただ、中谷美紀さんの悪女ぶり、迫力ある美しさはすばらしかったです。